今年9月、札幌の地下歩行空間でアイヌ民族について、あるパネル展が開かれ、問題となっています。アイヌが先住民族であることを否定した、パネル展の内容をめぐり、研究者は差別的だと指摘しています。その内容と、札幌市役所がとった対応の是非を考えます。
◇《アイヌ民族が先住民族であることを否定するパネル展》
9月16日、札幌駅前通地下歩行空間で開かれた『アイヌの史実を学ぼう!』と題したパネル展。その内容をめぐって、展示に反対する研究者や市民との間で、騒動が起きました。

パネル展の主催者
「すみません、展示会やってますから」
抗議する市民
「見たいので。展示しているんですもんね。見させてもらっているので」
アイヌが先住民族であることを否定するほか、アイヌの同化政策を進め、その後、廃止された『北海道旧土人保護法』を称賛。和人がアイヌを文明化したという趣旨の内容が、展示されたパネルには、書かれていました。パネル展の主催者は…。
『アイヌの史実を学ぶ会』伊藤昌勝会長
「このかたが、アイヌなんだっていうことは、全然会ったことも見たこともないし、アイヌが先住民だって全然わからない。わからない今でも。先住民の定義がわからない」

◇《研究者は展示内容は「事実を歪曲している」と強く批判》
一方、アイヌの近現代思想史を研究するマーク・ウィンチェスター氏は、展示の内容について「事実を歪曲している」と強く批判します。
アイヌ近現代思想史の研究者 マーク・ウィンチェスター氏
「近代化の過程において、アイヌが優遇されていたかのような主張。こちらには“至れり尽くせりの北海道旧土人保護法”とあります」
「有効ないい土地が、すべて和人に渡された後に(北海道旧土人保護法の)法律がうたれたわけだが、水害地や斜堤など、農地に向いていないような土地もたくさんアイヌに付与されていました。見かけには平等だと言っているが、そのような歴史的事実は、まったく書かれていないわけです」
