冬眠に入るクマは歩いた痕跡を消す
その高山市内で親子で猟師を生業としている脇谷雅彦さん(64)と息子の将斗さん(39)を取材した。父はこの道46年、若手の教習射撃指導員をしている大ベテラン。
息子は、父の猟をする背中を追いかけてきた若手猟師で、約10年のキャリアを積んでいた。2人とも地元の猟友会のメンバーであり、市街地でも引き金をひく可能性もあるため、経験と実績、そして何より的中率の高いウデが必要な緊急銃猟の中心的な猟師だ。

2人と共に真っ白な山に向かった。麓の積雪は20センチ程度だったが、山はその2倍近い積雪となっていて、太陽に照らされキラキラ輝いていた。父はライフルを、息子は散弾銃を背負って、標高1000メートル以上の山に入ると、ニホンカモシカが木々の間から顔を出していた。小動物の足跡もいくつかあったが、クマの足跡は見当たらなかった。

新たに雪が積もったからとも考えられるが、そもそも冬眠に入るクマは歩いた痕跡を消すという。理由は猟師から仕留められないためだ。野生の世界では無敵のクマの唯一の天敵は、クマの領域に入ってくる猟師なのだ。
もともと警戒心の強いクマを、より慎重にさせたのは猟師の存在かもしれない。足跡こそなかったものの、実は、まだ冬眠していないクマもいると聞き、リスクを考えて下山した。










