「二つの垣根を越えた」合同練習

高校野球で珍しい試みが行われました。

名古屋市の同朋高校グラウンドで、知的障害球児の公式戦出場を目指す「甲子園夢プロジェクト」のメンバーが参加して、合同練習会が開かれました。

今年はさらに名古屋市の至学館高校女子野球部が参加。障害と男女差の「二つの垣根を越えた」合同練習です。


まずはランニング。総勢41人のうち女性が25人。
「せっかくだから混ざって走ろう」としてみると、歩幅を合わせるのに苦労して苦笑い。

キャッチボールも相手の能力を考えながら距離をとるなど、「相手を思いやる」ことから練習は始まりました。


いつもと違う練習で刺激

その後は守備練習に打撃練習。互いにボールを追うごとに距離を縮め、男女と知的障害球児が共にいることに違和感はなくなりました。

同朋高校の中谷斗紀主将は、初めて女子野球部と練習して「いつもと違う(女性の)声で指示とかあったので、いつもよりテキパキ動いていた」と刺激を受けていたようです。


至学館高校の野本あさひ主将は、男性とのスピードや力の差を実感しながらも「元気では負けていませんでした!」と明るく笑っていました。


配慮が必要かと思ったけれど…

一方、初めて知的障害球児と野球をした野本主将は「やる前は気を使わなきゃいけないのかと思っていましたが、やってみると普通の野球と同じでした」と、野球を通して障害の垣根を越えていけることを感じたそうです。


双子の姉弟での練習が実現

今回参加した至学館高校の安部真里杏さんと、同朋高校の安部隼平さんは双子の「姉弟」。子どもの頃は共に練習していたという二人が、高校生活で初めて合同練習。母親の幸代さんは「夢のようです」と喜んでいました。


男女の差、障害の差があると「危ないのではないか」と心配が先に立ちます。しかし、この会を主催した同朋高校の松尾良亮監督は「大きな差は感じなかった。どんな競技でも女子のレベルは上がっている。価値観の違う人たちから学ぶ機会を大事にしたい」と、野球を通じた交流の意義を教えてくれました。


「甲子園夢プロジェクト」を主宰する久保田浩司さんは「知的障害のある球児の中にも、健常者と同じように野球が出来る子がいることを、一人でも多くの人に知って欲しい」と訴えていました。