ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく1年。
この影響で様々なものが値上がりする中、乳製品も値上がりしています。
新型コロナによる消費低迷などもあり、厳しい経営が続いている酪農家。その現状を取材しました。
鳥取県米子市のスーパーをたずねると…。
丸合 営業統括本部商品部 八幡晃典さん
「売れ行き自体は、数量というところでは前年に対しては落ちているという状況」
スーパーの担当者がこう話すのは、牛乳の売れ行き。
牛乳をめぐっては、去年11月、大手メーカーが揃って値上げを発表。このスーパーでも、各商品10円から20円の値上げを行うと、今年に入り売れ行きが落ちたとのことです。
そして…。
記者 土江諒
「様々なものが値上がりしていますが、こちらのヨーグルトに関しては半年も経たずしてまた値上げということです」
各メーカーは、今年4月にチーズやバター、ヨーグルトなどを値上げすると発表しています。
買い物客
「ヨーグルトは結構値上がりしているなと思う」
買い物客
「高くなってますよ。だからね、私も買います、安い時に」
こうした中、取材班は、鳥取県大山町にある酪農家「ファーム山下」を
たずねました。
ここでは、約40頭の乳牛を飼育し、1日1トンほどの生乳を生産しています。
山下さんはこの1年をこう振り返ります。
ファーム山下 山下正太さん
「消費が落ち込んでくるのとエサが上がるのと一緒にやってきたので、ダブルパンチで大変な1年間だったと思います」
コロナ禍での乳製品の需要低迷、それに追い打ちをかけたのがウクライナ情勢による価格高騰です。
飼料の価格は1年前に比べ約1.5倍に。電気やガス、水道代も上がりました。
それでもなんとか持ちこたえているのは、行政の支援のおかげです。
ファーム山下 山下正太さん
「県や自治体から多額の支援をいただきまして何とか乗り切ってきた」
こうした中、山下さんがもう1つ頭を悩ませていることがあります。それは「生産抑制」です。
需要が低迷しているため、国を含めた生産団体から生産量を減らすことを求められ、例えば、乾乳期といわれる分娩に備えて搾乳を止める期間を通常の2か月から2か月半に延ばすなどしています。
そして、つらいのが牛の処分。
乳量が減ってきた牛などを処分することも生産抑制策の1つで、大山乳業農業協同組合によりますと、去年12月末時点で、43戸の農家が158頭を処分したということです。
3月からは1頭の処分につき15万円が国から支給されます。
ファーム山下 山下正太さん
「国の方がどういう風に考えているか分からないが、生き物なので蛇口をひねったらでてくるというわけではないので、出荷しなきゃいけないというときにかなり時間がかかるので農家としてはできないと思っています」
新しく子牛が生まれても、乳を出すまで2~3年はかかるため、今消費が落ち込んでいるからといって単純に減らせばいいというわけではないと、厳しい経営が続く中ですが、山下さんは処分はしない考えです。
そして、山下さんは取材中、何度もこの言葉を口にしました。
ファーム山下 山下正太さん
「継続して酪農を続けるにはやっぱり乳価の値上げしかないのかなと思いますので」
去年11月に乳価が10円上がりましたが、到底足りる訳はなくさらなる値上げが必要と訴えます。
悩ましい日々が続きますが、牛乳の消費回復のため、牛乳を使った料理の講習会や牧場見学などの活動は地道に続けています。
ファーム山下 山下正太さん
「牛乳を使っていただいて健康になっていただくということを目指していますし、牛乳の総合的な消費がのびることを期待しています」
いつかは明るい未来がやってくる。
おいしい牛乳を食卓に届け続けるため、日々牛と向き合う酪農家の姿がそこにはありました。