トランスジェンダーの人たちが戸籍上の性別を変更するために、今の法律の規定では事実上、生殖機能をなくす手術を受けないといけません。最高裁はきょう、この規定を「違憲」とする初めての判断を示しました。
申立人の弁護士
「本人の言葉で『先延ばし』となっているが、先延ばしの結果、高等裁判所がどういう判断をするか。苦しい状態は続いてしまう」
申立人の望んだ決定が出ず、落胆する代理人たち。それでもきょう、歴史的な判断が出ました。
申立人は戸籍上は男性で、女性として社会生活を送っています。「手術の強制は重大な人権侵害だ」として、手術なしで女性への性別変更を求めていますが、一審・二審は訴えを退けられました。
性同一性障害の特例法では、戸籍の性別を変えるために5つの要件を定めています。この4番目では「生殖腺や生殖機能がないこと」、5番目では「性器の外観が変更後の性別のものに似ていること」と定めていて、事実上、手術を受けることが必須となっています。
木本奏太さん
「これ(手術要件)をクリアしなければ、僕は男性として生きていけないんだと、結構絶望してしまった」
トランスジェンダー男性の木本奏太さん(32)。幼い頃から「スカートやピンクが嫌い」など、性別への違和感がありました。大学を卒業するときに「男性として生きていこう」と決めましたが…。
木本奏太さん
「体にメスを入れて、自分の子どもを産めないような体にならなければ(性別を)変更できないというのは衝撃的すぎて」
2年間、派遣やアルバイトで手術費用200万円を必死に貯めて、24歳の時に子宮と卵巣を摘出する手術を受けました。
木本奏太さん
「本当に痛かったです。痛いという記憶しかなくて。これでやっと自分らしく生きられるとか、性別変更できるっていう感覚じゃなかった」
手術後に戸籍を変更し、今は当事者としての経験をYouTubeで発信しています。「手術なしで性別を変更できるのであれば、手術はしなかった」と語ります。
木本奏太さん
「手術をしなければ自分の望む性で生きられないことが当事者にとってどれだけ苦しいか、今一度考えていただきたい」
そして、きょう、最高裁大法廷は「医学的知見の進展に伴い、手術を受ける必要のない当事者に対しても、手術か性別変更断念かの過酷な二者択一を迫っている」と指摘。生殖能力について定めた4つ目の要件について、15人の判事全員一致で「違憲」と判断しました。
一方、5つ目の要件については憲法判断をせず、審理を高裁に差し戻したため、申立人の性別は変更されませんでした。
国会は今後、法律の見直しを迫られることになり、トランスジェンダーの人たちにとって新たな選択肢が生まれる可能性が高まっています。
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