北アルプス不帰嶮(かえらずのけん)付近で道に迷い遭難していた男性が、入山から10日後の20日、無事救助されました。
岸壁に囲まれた谷で命をつなぎ、奇跡の生還を果たした男性。捜索にあたった山岳警備隊員が当時の状況を語りました。
今月21日午後3時ごろ、男性の救助にあたった山岳警備隊員5人が、長野県から富山県警に帰ってきました。

富山県と長野県の県境にある、北アルプス不帰嶮(かえらずのけん)付近で行方がわからなくなっていたのは、埼玉県川越市の会社員・水野孝太さん(49)です。

水野さんは、今月10日から2泊3日の予定で、白馬乗鞍岳方面から1人で入山し唐松岳方面へ縦走していましたが、途中で道に迷い行方不明になりました。

下山予定から5日経過した17日、唐松岳から北側に伸びる稜線・不帰嶮付近にいた登山者が、富山県側から「助けて」という声を聞きます。
県警の山岳警備隊が付近を捜索したところ、自身の名前を呼び、助けを求める男性の声が聞こえました。

富山県警山岳警備隊・中村直弘警部補「こちらがおーいと声をかけますと、おーいと返ってきたり。確かに声は聞こえるんですけども。何か所か移動しながら声をかけてもいろんな方向から声が聞こえてしまって。ここだというのはなかなかピンポイントでは捉えにくかったですね」


不帰嶮は尾根が連なっているため、声が反響して
居場所を特定しづらく、捜索は難航していたといいます。
そして、入山してから10日が経過した、きのう午後3時40分ごろ。陸上で捜索していた隊員が、不帰嶮の西側1キロの標高2080メートルの谷で、岸壁に囲まれるなか立ち上がって手を振る水野さんを発見。無事、救助されました。当時、辺りは霧がかかり、雨も降り出していたといいます。


富山県警山岳警備隊・中村直弘警部補「体が震えていたりしまして低体温症のような症状がみられましたので一生懸命励ましたりしておりました。比較的はっきりとありがとうございますといったような声は聞けました」

水野さんは右足をけがしていましたが、命に別条はないということです。
隊員のうちの1人は、水野さんの見つかった場所の近くに沢があったため、水を確保できたのではないかと話しました。

富山県警山岳警備隊・中村直弘警部補「一言で言うと本当によく頑張ってくれたなと。あきらめずにここまで生きていてくれてよかったなと思いました」


これから本格化する秋山シーズン。富山県警は、登山届の提出や、自分の能力に合ったコースを選ぶこと、また、道に迷ったときは来た道を戻ることなど注意を呼びかけています。
