3月は侍ジャパンのWBC優勝、そして春のセンバツ甲子園と、野球に関する話題が盛りだくさんの月でした。こうした中、沖縄県の慶良間諸島、渡嘉敷島でもひっそりと野球で盛り上がっていました。

上江洲記者「ここ渡嘉敷島で明日、知る人ぞ知る野球大会が開催されるということですが、大会を前に皆さん盛り上がっています。かんぱーい!」

慶良間諸島の渡嘉敷・阿嘉・座間味が野球で戦う、その名も『ゆめしまリーグ』。渡嘉敷島2チーム、阿嘉島1チーム、座間味1チームの計4チームによって争われます。

今回密着取材したのは渡嘉敷島から出場する『オーシャンズ』。彼らは試合ももちろんですが、大会前夜の飲み会、この時間を何より大事にしています。

渡嘉敷島の男性「抱負はえ~、慶良間イチですね。目標は慶良間一を目指しています」
Q優勝ですか?
「もちろん!俺が出るからには」

渡嘉敷島で生まれ育った赤嶺孝夫さんは、飲みでも試合でもチームのムードメーカー。出場チームの中でも特に年齢層の高いオーシャンズ。長年の悲願があります。

オーシャンズ 安里和夫監督「とにかく打倒、座間味・阿嘉です。渡嘉敷に優勝旗を持ってきたいというのが望みです」

翌朝、地元の船をチャーターし応援団とともに座間味島と阿嘉島のチームが渡嘉敷島に上陸。中でも阿嘉島の青年会が主なメンバーのチーム『あかんちゅ』。若い力がおじさんたちの脅威となっています。また阿嘉島一丸となって優勝旗を取り戻そうと、応援メンバーも渡嘉敷島にやってくるなど、高い熱量で試合に臨みます。

選手宣誓「宣誓!すべての若者が希望を持ち、夢を追いかけられる平和な世の中になるように、と高校球児が言ってました。おじさんたちはケガに気を付けながら頑張ります(笑)」

緩めな選手宣誓に、始球式では渡嘉敷島で知らない人はいない、ジャーキーマスクがバッターボックスに入るなど、ひと盛り上がりした場内。いよいよ慶良間一をかけた試合が始まります!

「それではみなさん、がんばりましょー!」

渡嘉敷島『オーシャンズ』の初戦の相手は座間味島『ざまみじまーず』。

打倒阿嘉・座間味を誓ったオーシャンズでしたが…。前日の飲み会の影響なのか好守ともに精彩を欠くシーンが連続…、思うように体が動かず、初戦は8対1で敗れてしまいます。

彼らの調子が出始めたのは酒が抜けた午後でした。相手は同じ渡嘉敷の『Team Bond』。

「カキーン!!」

2塁線を破る痛烈なタイムリー2ベースヒットが飛び出すなど、ここにきてようやく湿り切っていたオーシャンズの打線がさく裂します。この勢いのまま優勢に試合を進めたいところですが、相手のTeam Bondも、返す刀でオーシャンズを攻め立て得点を積み上げていきます。

渡嘉敷島に優勝旗を…。頂点を目指したオーシャンズ、好プレーが出始めた時には時すでに遅し、3対6の敗戦で無念の最下位、4位となってしましました。

オーシャンズ 玉城大世さん「4年ぶりだったので久しぶりに島で野球ができるのを楽しもうと思ったんですけど、体がついてこないですね」

オーシャンズをよそに、決勝に進出したのは阿嘉島『あかんちゅ』VS座間味島『ざまみじまーず』。“若さは強さだ”と言わんばかりの余裕のピッチングを見せたチーム『あかんちゅ』が危なげない試合運びで4年ぶりの大会の頂点に立ちました。

あかんちゅのメンバー「わー、ばんざーい!」

大会終了後、各チームとも勝利の余韻や敗戦のくやしさに浸ると思いきや、おじさんはやはり疲れて果てていました。

オーシャンズ 大城徹さん「もうだめです。もう投球制限設けた方が良いですこれ。本当に久々に野球をやって、久々にマウンド上がれって言われて。もう多分明日から肩があがらない。もう正直なところ帰りたいです」

オーシャンズ 赤嶺孝夫さん「やっぱり慶良間っていうひとつの地域でこうやって交流ができているっていうのは良いことじゃないかなと。昔は島同士の運動会とかもあったようですが、今はもうなくなっているから。こういう交流があるっていうのは素晴らしいことだと思いますね」

コロナ禍で島のイベントの中止が続き、難しくなっていた島内や島同士の交流。大会の開催で島の繋がりも再確認されました

大会実行委員 中沢丈士さん「島の人たちと楽しくわいわいと飲んでコミュニケーションをとったりとか、野球を通じて楽しく大会を盛り上げることができたので。大会としてやる一番の原動力はみんなの温かい絆かなと思いますんで」

渡嘉敷島を訪ねると島を超えた男たちの熱き戦いと、それぞれの島を想う温かさがありました。

【記者MEMO】
3島対抗のゆめしまリーグですが、実は島の食堂や民宿など12のスポンサーがついていて、

大会記念Tシャツなどの制作を行うほか、島外からアルバイトとして参加する人も多いなど、島内外で一体感を持って大会を盛り上げています。

試合を口実に飲み会や普段の練習で集まることで、島外の人たちも含めて仲良くなれる、島の交流の場にもなっているということです。