「移民が増える」などの誤った情報が広がり、去年、撤回に追い込まれた「アフリカ・ホームタウン」構想。あれから1年、新たな交流事業が始まりました。日本を訪れるアフリカの若者たち。その出会いは、これからの日本に何をもたらすのでしょうか?

■福島で過ごす3日間…アフリカ10か国から高校生を招く新プログラム

慣れない環境の中で、互いに夢中で太鼓をたたきました。

福島県・広野町の学校に先週やってきたのは、アフリカの小国・ルワンダの高校生25人。

目的は、ホームステイです。

ルワンダ人のチェシさん(18)とジュリさん(18)。
2人とも日本は初めてです。
          
ホストファミリー 宮﨑美穂さん
「初めまして!緊張してる?」

ルワンダの高校生 チェシさん
「少しだけ…」

これから3日間、一緒に過ごすのは、中学生の息子2人がいる宮﨑さん家族です。

ルワンダの高校生 チェシさん
「念のため家のルールを教えてくれますか?」

ルワンダの高校生 ジュリさん
「ルワンダと日本は文化が違うので…」

ホストファミリー 宮﨑美穂さん
「その違いが面白いところなので、大丈夫ですよ!」

実はこれ、外務省による日本とアフリカの若者の相互理解を促進するためのプログラム。
2026年、初めて実施されます。

アフリカ10カ国の名門校から約250人の高校生を招く一方、日本からも大学生らをアフリカ各国に派遣します。

■2025年の「ホームタウン」撤回を経て…SNSには批判的な声も
     
ただ、アフリカとの交流をめぐっては2025年、TICAD=アフリカ開発会議にあわせて発表された国内4つの自治体とアフリカ4か国の交流を後押しする「ホームタウン」構想。

市役所職員
「多数のモザンビーク人が今治に押し寄せ、定住するというようなものではございません」

「移民が増える」などの誤情報が拡散し、自治体に苦情の電話が相次ぐ事態に。
事業は撤回に追い込まれました。

今回の交流事業についても外務省が発表すると…

外務省Xへのコメント
「人的交流は猛反対。結果移民となって日本人が苦しむ」
「税金を無駄遣いするな。外国人学生に使う税金があるなら日本人学生に使え」

SNSに多くの批判的な意見が書き込まれました。

様々な声があるなか、ホームステイ2日目。
奏輔さんの友達も集まり、腕相撲大会が始まりました。

昼には思い思いの具をのせ、みんなでピザづくり。
地元の名産、サンマにも挑戦します。

奏輔さん
「どう?ルワンダの魚とは違う?」

ジュリさん
「ルワンダの魚は湖にいるから」

チェシさん
「おいしい」

そして…

美穂さん
「二人にプレゼントがあります!」

ジュリさん
「ありがとう」

プレゼントの甚平を着て向かったのは、地元の夏祭りです。

ジュリさん
「みんなと友達になれました。ルワンダに帰っても、日本は僕たちにとって第二の故郷です」

■高まるアフリカの重要性 日本の外交を握る“知日派”の育成

なぜ今アフリカとの交流が重要なのでしょうか。
長年アフリカ外交に携わってきた岡村さんは…

立命館アジア太平洋大学 岡村善文副学長
「(アフリカは)エネルギー資源の供給先として、非常に重要な大陸になっていく。中国はそういった所にどんどん出ていって、鉱物資源についても支配力を高めている。やはり日本はだいぶ遅れてますね」

こうした中、“知日派”の育成は日本にとっても大きなプラスになると話します。 

立命館アジア太平洋大学 岡村善文副学長
「外交は数ですから、どれだけ国の中に、特に意思決定者の中に“知日派”がいるかに左右される。明日明後日に効果が出るものにだけ税金を使うっていうのでは決してない」

実際に、かつて日本で学び、いま日本とアフリカを繋いでいる人もいます。

約10年前に来日したアフリカのコンゴ民主共和国在住のオリヴィエさんは…

オリヴィエさん
「最初の日に一番印象に残ったのは、人々の規律と街の清潔さです。同じくらい印象に残ったのが、人々の温かい歓迎でした。今では日本にたくさんの友人がいます」

そして帰国後、日本企業のアフリカ進出を支援するコンサルティング会社を立ち上げました。
 
オリヴィエさん
「私が日本から学んだ考え方は、“カイゼン”、“相手へのリスペクト”、そして“ネマワシ”です。今も毎日仕事で使っています。彼らも日本のことを大好きになるでしょう。将来ビジネス面で日本の大使になれると思います」

ルワンダから来日した高校生たちも、日本のホストファミリーと別れのときが。

現地の伝統的なダンスを一緒に踊り、最後の思い出を作ります。

奏輔さん
「最初2人、すごい緊張してて、本当に笑顔すらなくて。でも、いろんなことやって、毎日喋るのがすごく楽しみになって、兄弟って呼ばれてるので、もういつでも友達かなって」 

ジュリさん
「日本での日々は忘れません。人生で最高の時間でした」

チェシさん
「いつか薬学を学ぶため日本に留学したいです。ルワンダと日本の外交の懸け橋になりたいです」

■2050年には4人に1人がアフリカ人に 政府がアフリカに注力するワケ 

小川彩佳キャスター:
交流の中で表情が和らいでいくのも感じました。

今回のこのアフリカ高校生の招へいプログラムも含めて、日本政府はどうしてアフリカとの関係性を大事にしようとしているのでしょうか。

TBS報道局 政治部 大﨑雅基記者:
一つ背景にあるのは、世界でアフリカが圧倒的に存在感を高めているということです。

【アフリカ人口の推移(予測)】※国連「世界人口推計2024年版」

▼現在:約15億人
(世界人口約82億人のうち約18.5%)
▼2050年(予測):約24億7000万人
(世界人口約96億6000万人のうち約25.5%)

2050年には、世界人口の4人に1人がアフリカ出身になると言われており、大陸全体では平均年齢も19歳と非常に若くなっています。

そうした中で、特に若い世代の知日派を育てることが、日本にとって重要だということで政府も力を入れています。

藤森祥平キャスター:
こうした中で、日本のアフリカへの向き合いはどのように感じますか。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
全然足りないと思います。

今アフリカへ行くと、みんな中国製のスマホを持ち、それを中国製のソーラーパネルで充電して使っています。

そういう意味で中国は、マーケットを開拓しながらインフラにも投資をし、現地に企業を作って資源を獲得しているわけです。コンゴだったらコバルトなどの資源も、今や中国企業がどんどん持っていってしまっています。

日本も知日派の人たちを現地で養成したり、逆に日本人が向こうに行ってビジネスをやったり、そうしたことも含めて支援していかないと取り残されていくのではないかと危惧しています。

■「予算10億円」めぐり ネット上ではデマも

小川キャスター:
新たな事業が始まったわけですが、今回もネット上には「アフリカの高校生に税金10億円がばらまかれる」といったような批判やデマなどもたくさん出てきました。

TBS報道局 政治部 大﨑雅基記者:
アフリカの高校生の招へいをめぐり、ネット上では「アフリカの学生に100万円ずつ配られる」といったデマなどが広がりました。

10億円は、1年間の事業全体の上限予算の話であり、例えばアフリカの学生が今回のように日本に来る時や、日本の学生がアフリカに行く時の渡航費や滞在費といった実費に当てられるだけであり、誤解が広がっていると感じます。

藤森キャスター:
海外交流が、何かと昔に比べて難しく感じる状況になっていますが、ドイツで生活されていた時はどうでしたか?

東京大学准教授 斎藤幸平さん: 
僕もドイツ政府から奨学金をもらって留学し、今こうして研究職に就いているので、いわば「知独派」ですし、ドイツに対する印象はすごくいいんですよね。

ところが、そんなドイツでも今、戦争に予算を使わなければいけなかったり、経済状況が良くない中で、学術交流や外国人向けの奨学金を減らしていこうという動きがすでに進んでしまっています。

最近は極右政党なども台頭する中で、「外国人優先よりも自国優先にしよう」という流れは、日本だけでなくドイツなどでも出てきてしまっています。

ですが、こういう戦争が起きる時代だからこそ、若い世代を巻き込んで文化や学問での交流をやっていくことが、将来への種を蒔くことにつながるんじゃないかと思いますね。

小川キャスター:
まさに一朝一夕とはいかない交流関係でもあるわけですから、国としても「この事業がなぜ行われるのか」「どのような効果があり、どう活かされるのか」ということを丁寧に説明する努力が必要だと感じます。

草の根の「顔と顔を合わせての交流」というのは、本当に土台を築いていきますよね。

TBS報道局 政治部 大﨑雅基記者:
今回、ルワンダ人学生を受け入れたホストファミリーの方にお話を伺ったのですが、「ホームタウン騒動があって、最初はアフリカの学生を受け入れることがとても不安だった」とおっしゃっていました。

ただ、子どもたちの交流を見ているうちに「『アフリカ』という広い主語で一括りにして捉えることがいかに危険か」にハッとさせられたといいます。

私たち自身も、目の前のデマに惑わされないよう、個人個人でしっかり向き合って付き合っていかなければいけないのではないかと、取材を通しても強く感じました。

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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授専門は経済・社会思想
ドイツで修士・博士号を取得 計7年在住

大﨑雅基
TBS政治部 外務省担当
元NGO職員でケニア駐在の経験も
「アフリカ・ホームタウン事業」撤回騒動など取材