最大の追い風は「稽古熱心な姿勢」 理事長自身の昇進劇と重なる影
追い風なのは、八角理事長(元横綱北勝海)以下、協会上層部が霧島には好印象を持っていることが挙げられる。なぜなら「誰よりも稽古をして、稽古で強くなっている」と見ているからだ。昭和の時代は毎日50番以上土俵に上がる力士がザラにいた。理事長もその一人。当時、所属した九重部屋には優勝31度の大横綱千代の富士がおり、横綱同士の稽古が延々と行われ、最後には幕下以下の力士同様にぶつかり稽古で泥まみれになったものだ。
だが、今は20番取ることはまれになった。下手をすると10番以下で切り上げる。ぶつかりも軽く1、2回転がる程度が多い。そんな関取衆の中で霧島の稽古量は群を抜く。しかも、一昨年夏場所で首のけがで大関から転落したが、その後、回復してからは更にその傾向が強くなった。年齢的にはもう若くはないが、支度部屋でも最近の好成績には「稽古のお陰」と自信をみせる。下半身の安定ぶりを喜ぶ理事長は「稽古をやっている証拠でしょう。それしかない」と目を細めている。
横綱は全力士の目標。それだけに「稽古熱心な姿勢」は角界の理想と言ってよい。実は理事長自身も横綱に昇進する際に12勝で優勝した次の綱とり場所は13勝だった。制したのは全勝の大乃国。優勝に次ぐ成績ではあったが、2差あった。いわゆる優勝次点ではなく、「昇進は難しい」と言われる中で横審を迎えた。結果は「稽古熱心さと人柄」を理由に満場一致で推薦の答申を得た経験がある。
最終盤の粘りと、巡ってきた絶好の好機
小錦以降、外国出身の大関は安青錦まで14人誕生しているが、うちモンゴル出身者では霧島以外の朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、豊昇龍はいずれも横綱に昇進した。本人にはこれも大きな発奮材料の一つだろう。
初の綱とりだった24年初場所は13日目まで2敗で優勝争いに加わった。だが、14日目琴ノ若(現琴桜)、千秋楽は2敗で優勝した照ノ富士に連敗した。3度目の優勝だった春場所も、14日目の安青錦、千秋楽の琴桜と連敗。勝負どころで、もろさも出る。最終盤で粘りを見せられるか、も「綱」への大きな関門となりそうだ。
ライバルの一人、先場所の覇者若隆景は場所前の稽古でけがをして休場になった。絶対的強者が不在の土俵で、霧島はこの好機を生かせるか。
(竹園隆浩/スポーツライター)














