静岡県熱海市で28人が死亡した土石流の発生から、きょうで5年が経ちました。遺族らは「人災」だと指摘していますが、いまだに責任の所在は明らかになっていません。

発生から5年の朝は、あの日と同じく雨でした。土石流が発生した午前10時28分、被災者や遺族らが黙とうを捧げました。

熱海市 斉藤栄 市長
「私たちは、この災害の記憶と教訓を決して風化させてはなりません。尊い命が失われた事実を重く受け止め、教訓を次の世代へ確実に伝えていくことは、今を生きる私たちの責務です」

5年前のきょう、25メートルプール100杯以上に及ぶ土砂が熱海市伊豆山地区を流れ下り、28人の尊い命が奪われました。

小磯洋子さん
「生きていた。私が産んで生きていた」

小磯洋子さん(76)。熱海土石流で娘の友紀さん(享年44)を亡くしました。

民事裁判の法廷で小磯さんは、火葬場で友紀さんの「骨のかけらを拾って食べた」と、今年初めて明かしました。

小磯洋子さん
「この子と一つになれるには、どうしたらいいかと思った時に、私が産んだのだから、また私の体に戻した」

発生後、明らかになったのが、土石流の起点にあった違法な盛り土の存在です。遺族らは、違法な盛り土の造成や管理責任を怠ったとして、前と現在の土地所有者、そして熱海市長を刑事告訴しました。

崩落した土地の前所有者 天野二三男氏
「色々な思いが巡る、そのような5年間だった」

盛り土の造成は2007年、天野二三男氏(76)が代表を務める会社が別荘地を造成する目的で申請。盛り土は許可された高さを大幅に超え、およそ50メートルにまで達しました。

天野氏によりますと、警察はこれまでに33回の任意聴取を実施したそうです。何度も聞かれたのが「盛り土をしたのは誰なのか?」という点だったといいます。

崩落した土地の前所有者 天野二三男氏
「実際スコップ1杯入れてない。『(土を入れたのは)天野だ』って言いたい、みんながね。だけど盛ってない、貸したんだ。そこには責任者名が入ってる」

天野氏が名指しした盛り土の施工業者は今年、「役所とのやりとりは、すべて天野氏がやっていた」と責任を否定しました。

2011年に天野氏から盛り土のあった土地を購入した現在の所有者は今年、「責任がないとは思っていない」「反省しています」などと述べましたが…

現土地所有者の代理人 河合弘之 弁護士
「道義的に“かっこつき”の責任は感じていると思いますけど、法的に彼は自分が悪いことをしたから責任があるんだとは思っていない」

熱海市の斉藤栄市長は、法的責任については明言を避け、司法が判断するものと見解を示しています。

娘を亡くした小磯洋子さん
「未曾有の災害って言いますけれど、これ災害じゃなくて事件じゃないですか、だって人災なんですから。業者はもちろんのこと、行政の責任なので。自分の子どもや親が突然、殺されたら、あなたたちも平気でいられますか」

それぞれが責任を否定し、押し付け合う熱海土石流。遺族はずっと失望と怒りを抱え続けています。