福島市で半世紀にわたり地域の人々に愛され続ける大衆食堂があります。昔ながらの味を守りつつ、安くてボリューム満点のメニューで訪れる人々のお腹を満たしてきた「あさひや食堂」。そこには、世代を超えて受け継がれる温かい真心がありました。

50年以上変わらない、懐かしの味

福島市渡利地区に店を構える「あさひや食堂」。地元の人々を中心に50年以上にわたって親しまれているこの店は、2代目の瓶子孝治郎さん、妻の由美子さん、そして3代目として修行中の息子・雄一郎さんが営むアットホームな大衆食堂です。

店の看板メニューの一つが、どこか懐かしさを感じるシンプルなラーメン。豚ガラと鶏ガラ、そして煮干しで出汁を取るスープは、50年以上変わらない伝統の味です。物価の高騰によりやむなく値上げしたものの、その価格は600円。リーズナブルな価格設定は、長年通うお客さんのためです。

会社員から一念発起、父が始めた食堂

あさひや食堂の創業は昭和44年。孝治郎さんの父、善治郎さんが始めたお店です。当時、渡利地区には食堂が1軒しかなかったことから、将来を見据えて開業を決意したといいます。それまで会社員だった善次郎さんは、知り合いの店で3日間ほどラーメンやうどんの作り方を教わり、食堂をスタートさせました。

その頃、息子の孝治郎さんは東京で会社員をしながら夜は学校に通っていました。父からは「お母さんと2人で食堂始めたけど、お前は長男坊だから、そんなこと思わないで自分の道を進め」という手紙が届いたそうです。しかし、盆や正月に帰省するたび、店の様子を見るうちに「親父のあとを継いだほうがいいんじゃないかな」という思いが募っていきました。

そして創業から5年後、孝治郎さんは福島へ戻り、父のもとで修行を開始。その味は、年季の入った一冊のノートに記されていました。

「昔からのレシピなんです。うちの父親が書いたのを、もう1回うちの女房が書き直したんですね」と孝治郎さんは語ります。出汁の取り方などが事細かに書かれたこのノートを今でも時々確認しながら、父から受け継いだ味を忠実に守り続けています。

全品1,000円以下!サービス精神が生んだ人気メニュー

「何度訪れても飽きることがないように」という思いからメニューを増やし続け、今では50種類以上になりました。カツ丼や親子丼などの丼ものから、味噌ラーメン、タンメンといった麺類まで、多彩な料理が並びます。

中でも人気なのが、肉厚のハムが食べ応え十分の「ハムカツフライ定食」。サクサクの衣と、噛むたびに広がるハムのうまみでご飯が進むと評判です。昔はもっと薄いハムだったそうですが、時代の移り変わりで今の形になったといいます。

また、ラーメンとハーフの焼肉丼がセットになった「8番」も人気のセットメニュー。ご飯が見えないほど盛り付けられた豚肩ロースは、特製のタレに漬け込まれ、柔らかくジューシー。焼き目の付いた部分の香ばしさがアクセントになっています。

驚くべきは、これらのボリューム満点のメニューがすべて1,000円以下で提供されていること。「4桁にはしたくないなと思って。ギリギリ3桁で止めたいなと、一生懸命努力してるところで」と孝治郎さん。さらに、冷凍食品などは使わず、手間がかかっても全て手作りするというこだわりも創業当時から変わりません。

「真心持って」—3代目へ受け継がれる思い

店内はいつも常連客で賑わっています。週に3回は訪れるという89歳の男性は、「味がうまいのと、なんて言うのかな、庶民的で。雰囲気はもう最高だね」と笑顔で話します。

「とにかくお客さんに喜んでもらって、『あそこに行ったらうまかったよ』って言われるのが一番うれしいですね。昔のままの味を残したいなと思ってます」と語る孝治郎さん。その思いと味は、息子の雄一郎さんへと受け継がれていきます。

「真心持って接してもらいたいと。料理も一生懸命頑張ってもらいたい」。孝治郎さんの願いは、これからもあさひや食堂を訪れる人々の心とお腹を温め続けていくことでしょう。

【店舗情報】
あさひや食堂
住所:福島県福島市渡利
営業時間:午前11時~午後2時
     午後5時~午後7時
定休日:月曜日・第3火曜日