能登半島地震による人口流出が進む中、地域コミュニティのつながりの希薄化が懸念されています。

こうした中、人が行きかう場を提供したいと奮闘する一人の住職を取材しました。


市堀さん「共に生きる心を被災者のみなさんには取り戻してほしい。強くそう思う」

輪島市門前町の興禅寺で住職を務める市堀玉宗さん70歳。

語るのは「共に生きる心」の大切さ。

震災以降、人口が減少するふるさとで、コミュニティのつながりを維持したいと活動を続けています。


3月12日。

興禅寺ではお釈迦さまが亡くなったことを偲ぶ法要・涅槃会を翌日に控え、檀家や住民ら10人以上が集まって涅槃団子(ねはんだんご)を作っていました。


涅槃団子はお釈迦さまの遺骨に見立てたもので、食べると1年の無病息災、身に着けると厄除けのお守りになるとされる縁起ものです。

輪島では、お釈迦さまが亡くなった時に駆けつけたといわれる犬や蛇などの動物の形で作られてきました。


参加者「かわいい。いつ見ても目が付いて色が付くでしょ、かわいいわ」
参加者「今年も作らしてもらってよかった。来年はもうわからん。去年もこんなこと言っていたが」

能登半島地震以降、連絡が取れなくなっている檀家もいるということですが、お寺の行事が地域に残る住民たちのコミュニケーションを生み出しています。


住民「本当に長いことねぇ」「2年ぶりか」「何も変わらんね」 

市堀さん「生きる力、元気をもらえる場として寺の行事を通して元気をもらえるなら、いいかな。そういうお寺の寄り添い方もあっても良いではないか。私自身も元気をもらうのでお互い様」

迎えた涅槃会の当日。

法要の前、市堀さんは一人で静かにこころを落ち着けます。


市堀さん「いろんなことがあったけども、これからもあるだろうけども、一歩ずつ、あきらめないで、被災者でもある信者さんにそういう心を取り戻してほしい、その一歩でもある、そういう出会いの場になってほしい」

集まったのは、約30人。

檀家ではない地域の住民も多く参加していました。


市堀さんは、人と自然が共に生きる能登で、今後どのように生きていくべきか集まった人たちに語りかけます。

市堀さん「能登は優しや土までもというが、優しい能登の自然が牙をむいて痛い目に合わせたが、その自然がまた癒してくれる。家族であり地域の仲間であり、人はなんだかんだ言っても人の中で気付くこともあるが、癒されるし生きる力も与えてもらう。人だけじゃない、自然もそう、能登の自然に癒されてほしい」


約800個の涅槃団子は3分ほどで撒き終わりました。

参加者「楽しいしご利益があるような気がする。仏さまに今からあげにお参りする」
参加者「これが一番楽しいかな。(来年も参加する?)毎年。命ある限り毎年ね」

市堀さん「みなさん思うことが合って、閉じこもりがちな中でこういう羽目を外す機会も少ないのだろうし、なおさらのこと心を開いて、わだかまりなくこうして、集える場があるということに感謝」


3月20日、彼岸の中日。

輪島市鳳至町の永福寺は数年前まで市堀さんが住職を務めていた寺です。


現在は、代替わりして市堀さんの息子が住職を務めています。

本堂は地震で中規模半壊の判定を受け、2025年に公費解体した跡地に市堀さんたちは樹木葬霊園を整備しました。


初めて迎える春の彼岸です。


市堀さん「日が当たるといいね」
参拝者「ちょっと風が強いですけどね」
市堀さん「春の彼岸らしい」


参拝者「無事に終わった、天気が良くて。雨が降ったらどうしようかと思った。うちもお墓が潰れてしまった、朝市の方だが入れない。ここに樹木葬霊園をやると聞いたのでこちらに移動してきた」


市堀さんはこの樹木葬霊園が「被災者に交流をもたらす場所であってほしい」「檀家じゃなくても誰でも来れる場所にしたい」と願います。


近くに住む人「家がすぐそこで、いつもの散歩コースになっている。いつもここをぐるぐる回るのがこの子の楽しみでよく来ている。近所にこういうスペースがあるのはありがたい」

市堀さん「共に被災者として人として、前を向いて時に天を仰いで、仏に手を合わせて、人と共に自然と共に生きていきませんか」


被災者に「共に生きる心」を。

春の日差しが色とりどりの花を照らしています。