福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える「老舗物語」。今回は楢葉町で90年以上続く和菓子店です。先代たちに想いを馳せ、名物を守り続ける3代目に密着しました。
艶のある茶色の皮の中に、ずっしりと詰まったあんこ。口に含んだ瞬間、芳醇な黒糖の香りと優しい甘さに、心が和らぎます。この茶まんじゅうを提供しておよそ90年の和菓子店が、楢葉町にあります。
1935年創業の『玉屋菓子店』です。
店を切り盛りするのは、3代目の菅野伯恵さん。明るく優しいその人柄が、お客さんを引き寄せます。玉屋菓子店で販売しているのは、まんじゅうのみ。元々は和菓子全般を製造していましたが、2代目からは、まんじゅうに特化して製造・販売。以来楢葉名物「茶まんじゅう」として親しまれているんです。
--菅野伯恵さん(玉屋菓子店 3代目)「初代の創業した祖父と、引き継いでやった祖母です。2代目かな。私が小学4年生の時に祖父が亡くなって、祖母が、おまんじゅうだったらどうにか継げるかなと頑張ったから、玉屋さんのまんじゅうといわれるようになってきた。」

そんなお店を幼い頃から見てきた伯恵さん。
--伯恵さん「『食べたいな』はあったけどやりたいなは無かったかな。祖母がみんなに愛されるまんじゅうを作ったので、これを無くしちゃいけないかなと思い、継ぎますかねと。」
祖母の作った名物を守っていきたい”そんな想いから店を継ぐことを決心し、製菓学校へ進学。祖母・ナカイさんから本格的にまんじゅう作りを習い始めたのは、伯恵さんが23歳の頃でした。
--伯恵さん「『こんなんじゃだめだよ』と言われるが、こうすればいいというのはなく『見て覚える』みたいな。細かいところをチェックされました。」
ナカイさんがなによりも大切にし、伯恵さんに受け継いだこと。それは、毎日の作業を怠らず、一つ一つ丁寧に作り続けることです。
--伯恵さん「『小豆は北海道産をとるんだよ』とか、『(使う道具)きれいでも汚れているかもしれないから何回も洗いなさい』とか。ちょっとした細かいところを何気に毎日言ってもらえたことは頭に常に残っているから。祖母の声が聞こえてきますね。」
まんじゅうをふかすのに使用するのは、五右衛門釜。これまた、昔かたぎの作り方です。
--伯恵さん「鉄窯で水を張ってお湯を沸かして。火力が弱いとだめで、改装した時も同じ感じで作ってとお願いした。」
先代の教えから、手間暇を惜しまず、丁寧に作り続けている伯恵さん。さらに、この看板商品から新たな名物を誕生させました。それが・・・。
--伯恵さん「かわぱんです。」
--伯恵さん「パンではないんですけどね。茶まんじゅうから餡子を抜いただけなので皮だけです。」
なんと、茶まんじゅうの“皮のみ”
--伯恵さん「お客さんにリクエストされて。まんじゅうは好きじゃないけど、ここのまんじゅうの皮は食べたいと。皮だけの作ってくれたらいいのにといわれて出したら意外と好評というか。」
そんな、幅広いお客さんに愛されてきた玉屋菓子店ですが、9年間、営業停止を余儀なくされた歴史があります。2011年の東日本大震災、そして福島第一原発事故。お店のある楢葉町は全町避難を強いられました。さらに直面したのは、店舗修繕の課題です。
--伯恵さん「昔ながらの土壁とか屋根が崩れて。調査に入った人にリフォームはおすすめしないかなと言われていたので。壊してもらう書類を抱えながら悩みつつ。」
リフォームはおすすめしないといわれても「この建物」にこだわりたい。その理由は・・・
--伯恵さん「ここを残した先代たちの想いかな。続けなくちゃなという使命感みたいながあった。避難しているときも、同業者や材料屋さんが『ここでやったら?』『うちで手伝いなよ』と皆さんが声をかけてくれたけど、でもやるんだったら戻ってここでかな。祖父母が続けて守ってきたここでかなと思ったので。この建物でと言うのがあありました。」
創業時の面影を残しながらなんとか修復し2020年3月、ようやく再開にこぎつけました。変わらない店構えは、町に戻ってくる人にも懐かしさを感じさせています。

--伯恵さん「町を出て時々帰って来る人に『続けてくれてありがとうね』と言ってくれる方も多いので、やっててよかったなって思いますね。」
祖父、祖母が守ってきた「この場所」「この建物」で続けたい。そんな“家族への愛”が、結果として楢葉町の「故郷の風景や味」を守ることにも繋がったのです。

皆に愛されるまんじゅうを作った、憧れの祖母のように。先代たちに想いを馳せ、ひたむきに商品を守り続けることが長年、名物として愛されている理由かもしれません。
【店舗情報】
玉屋菓子店
住所:福島県楢葉町大字井出字八石2-2
電話:0240-25-2022
営業時間:午前10時~午後6時
定休日:不定休
『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2026年3月19日放送回より)














