ダムの緊急放流や避難の呼びかけが適切だったのか。8年前の西日本豪雨で肱川が氾濫し、住民8人が亡くなった水害をめぐり司法の判断が示されました。
遺族らが国などを相手取り損害賠償を求めた裁判で、松山地裁はきょう、原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
2018年7月の西日本豪雨では、肱川にある野村ダムと鹿野川ダムが緊急放流を行った後、下流の地域で氾濫が発生し、愛媛県西予市と大洲市であわせて8人が死亡するなど甚大な被害が出ました。
これまでの裁判で遺族ら原告31人は、ダムの緊急放流が、大規模洪水に対応できない操作規則に基づいて行われた危険なものだったと主張。
さらに、西予市と大洲市の避難指示が遅れるなどしたことで被害が拡大したとして、国と西予市、大洲市にあわせておよそ5億4000万円の損害賠償を求めていました。
一方、ダムの操作について国は「規則にのっとっていて操作に過失はなかった」と反論。
西予市と大洲市も、避難指示や情報伝達は国のガイドラインに基づいていて、過失は無かったと主張していました。
18日の判決で、松山地裁の古市文孝裁判長は、当時、予想を超える規模の豪雨となることは予見できなかったとした上で、緊急放流を行った2つのダムの操作について違法性は無かったと認定。
その後の自治体による住民への避難誘導について、西予市の対応は、「事後的に見れば改善の余地や不十分さがあったとしても、著しく不合理であったということはできない」と指摘。
大洲市の対応についても、「情報提供については、事後的に見れば、住民に対する通知が望ましかったといえる」とした上で、同様に「不合理ではなかった」と判断。
原告側の主張を全面的に退けました。
(原告側の弁護団長・奥島直道弁護士)
「非常に行政の言うなりの事実をそのまま鵜呑みにしている判決と思う」
裁判のあと、原告の住民が会見を開きました。
(原告側の弁護団長・奥島直道弁護士)
「人の生命というのが、こんなにも軽視されるような判決というのは許されるんだろうかと思う」
(原告側・山中眞人弁護士)
「事後的に見れば改善の予知や不十分さがあるとか、事後的に見れば情報提供について住民に対する通知が望ましいとか、事後的に見ればやや遅いとの批判を免れないとか、遅きに失するとの批判もあり得るというのが5回も出てくる。で、裁判所というのは、起こったことについて事後的に判断するわけですね。我々は違法だと主張してきて「事後的に見れば遅かったかもしれない」って、それ違法じゃないですか」
また、会見には、洪水による被害で家族を失った遺族も同席し、悲痛な思いを述べました。
(夫を亡くした入江須美さん)
「国と市だけでやりとりして、大事なことが住民には伝わっていなかったということなので、これが通るのであれば、また同じことが起こると思う」
その上で、今後の災害で同様の事態が発生しないよう、行政の責任を明らかにするため、控訴する意向を示しました。
(原告側の弁護団長・奥島直道弁護士)
「避難指示というのは、行政は住民の命を守るためにこうすべきなんだという正しい判決を求める。やはり私たちは諦めてはいけないだろうと。ここで諦めたらまたほかの場所の水害で、行政はいい加減なことをしても、放流量を知らせなくても、どんなことをしても責任を負わないよといった先例を、この肱川でつくってはいけない」
今回の判決を受け、2つのダムを管理する国土交通省・四国地方整備局は「国の主張が認められたものと認識しております。引き続き、適正な河川の管理を行ってまいります」とコメント。
西予市の管家市長は、会見を開きました。
(西予市・管家一夫市長)
「避難指示の発令時期の判断、避難誘導および情報伝達のあり方について誤りがないことを主張してきました。本市の主張について、裁判所の理解が示されたものと受け止めております」
その上で、管家市長は「尊い人命が失われた悲しく重い事実に変わりはない」と述べ、防災・減災対策を強化する考えを示しました。
一方大洲市は、「本市の主張が認められたものと受け止めています。引き続き防災・減災対策に取り組み、市民の皆様が安全安心に暮らせるまちづくりを進めて参ります」とコメントしています。
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