この春に大学を卒業して青森市の中学校で教壇に立っている女性。美坂穂香(みさか・ほのか)さん、実はボクシングで国内トップクラスの実力を持つ選手です。教師とボクサー、「二足のわらじ」でリングに立つ思いを取材しました。

鋭い動きでミットを打つ音を響かせる青森市のアマチュアボクサー・美坂穂香選手23歳。北海道苫小牧市出身で、中学2年で競技を初めて以来、高校時代から全国大会で表彰台に上がり続けてきました。

※美坂穂香選手
「最初はフィットネスで始めたけど気づいたらマス(ボクシング)をしていて楽しいって。もっと強くなりたいって。気づいたら試合に出ていた」


高校卒業後、ボクシングの元・社会人王者で、青森市のボクシングジムで代表を務める五十嵐理一(いがらし・りいち)さんの指導を仰ぐため、地元を離れて青森大学に進学、着実に力を伸ばしてきました。

この春、大学を卒業した美坂選手は教師の道へと進みました。

※美坂穂香 選手「スパイク動作の中でタイミングを合わせてボールを打とうというのがきょうの目標です」


専門の体育の授業ではこれまでスポーツに打ち込んできたからこそ、運動が不得意な生徒への指導を大事にしています。

※美坂穂香 選手
「できることだけが体育じゃない。なんでできないのかを探したり考えたりすることもとても大事。できる子たちが楽しくやればいいというわけではないとお話している」

教師としては「新米」ですが、1年生の担任として授業や学校行事で慣れない学校生活を過ごす生徒たちに向き合っています。

※生徒は
「自分の好きなこととかを教えてくれて優しいなと思う」
「生徒と一緒に楽しんでくれるとても話しやすい先生。給食とかも減らして食べていてがんばっているので大会でもがんばってほしい」

大学卒業後、引退を考えたこともありました。しかし、もう1つの夢である国際審判員や指導者になるためにも選手として頂点に立ちたいという思いで教壇に立ちながらボクシングを続ける道を選びました。

11月の全日本選手権。フェザー級に出場した美坂選手。準決勝の相手は2年連続で入江聖奈選手、東京オリンピックの金メダリストです。頂点に立つには入江選手に勝つことが絶対条件です。

※美坂選手
「自分のやることをしっかりやろうと思って挑んだ。前回の試合は入江選手に触れることもできないぐらいパンチはほとんどあたっていない。1、2のジャブの時が当たったという感触があった。自分の中での距離のつかみ方はできたのかな」

しかし、結果は開始96秒、レフェリーストップで敗れ3位。二足のわらじで駆け抜けたこの1年。精神的、身体的につらい時期もありましたが、まわりの人たちに支えられながら、あらためて感じたことは…。

※美坂穂香選手
「先生だけどスポーツ選手。珍しさもあってみんな声をかけてくれる。何位だったのって応援してくれたり興味を持ってくれる。いろいろ人それぞれ楽しいことや好きなことがあるけど私は試合で勝つことが一番楽しい」

大好きなボクシングで日本一になるために、美坂先生はきょうもリングに立ちます。