去年3月、旭川市の公園で、当時、中学2年生だった廣瀬爽彩(ひろせ・さあや)さんが凍死した状態で見つかった問題をめぐり、背景にいじめがあったと認定した第三者委員会が15日午後、中間報告として詳細を公表しました。全文を掲載します(人権に配慮し、報告書の表現を一部修正しています)。
【中間報告における公表事項】
【1】 2019年4月~6月の事実経過(いじめ事実関連の概要)
事実経過<1>廣瀬さんと上級生A、B、Cとの係わり
① 廣瀬さんは、X中学に入学後まもなく、X中学の上級生A、Bと知り合い、LINEの登録を行い、メッセージの交換等をするようになった。その後、廣瀬さんはA、BとC(X中学の上級生)を含めたグループでオンラインバトルゲーム(以下、ゲームL)をするようになった。その前からA、B、Cは3人でゲームLをすることがあり、そのようなとき3人はゲームLをしながら、グループ通話で卑猥な「下ネタ」話をすることがあった。
② 廣瀬さんを入れて4人でゲームLをするときでも、A、B、Cは構わずにグループ通話の中で「下ネタ」話をしていた。あるとき、深夜3時ころまでゲームLをしたことがあって、そのときもA、B、Cは「下ネタ」話をした。
③ そのとき、ゲームLを終えた後、Aと廣瀬さんでLINEのやりとりが始まった。その中で廣瀬さんは、下着を着けている胸の画像をAに送った。また、廣瀬さんは、LINEのビデオ通話を使って性的行為の様子をAに見せた。
④ 4月中旬か下旬ころ、W公園で偶然A、Bと廣瀬さんが出会い、Bが一時その場を離れた間に、Aが廣瀬さんの身体を触ったことがあった。
⑤ 4月から5月にかけての連休中のある日、上記のメンバー4人で深夜3時ごろまでゲームLをしたことがあり、その中で、深夜を過ぎて補導されない時間になったから集まろうかというような話が出て、公園に集まる話になった。A、B、Cの3人は結局外出しなかったが、誰もそのことを廣瀬さんに伝えなかった。廣瀬さんは、先輩であるAらとの約束を守るため、早朝自宅を出て行き、それに気付いた廣瀬さんの母親らが追いかけて引き止め、家に連れ戻した。
事実経過<2>廣瀬さんと上級生Dとの日常的なW公園での係わり
① X中学の上級生女子Dと廣瀬さんは、A、B、Cと一緒にゲームLをしたことで知り合い、2人ともW公園をよく訪れていたことから、W公園で会うことが多くなった。Dと廣瀬さんは、多いときは週に5日くらい、W公園で会って話をしたりしていた。
② 廣瀬さんは、塾に行く日、母親から飲み物や軽食を摂るためのお金を渡されていた。W公園でDと一緒に居るとき、近くのコンビニ等へ2人で行って、菓子、飲み物、アイスクリーム等を買うことがあり、ほとんどの場合、廣瀬さんがDの分まで代金を払っていた。W公園に小学生やDの友人がいるときは、廣瀬さんがその子たちの分も買ってあげていた。回数、金額ははっきりしないが、5月中旬から6月中旬までの間、相当程度、頻繁にそのようなことがあったと考えられる。
事実経過<3>本人と上級生EとのLINEを通じての係わり
① Y中学の上級生男子Eは、Cと知り合いで、廣瀬さんとも面識があった。EはCから廣瀬さんがLINEのビデオ通話の中で性的行為の様子をAに見せたことがあるなどと聞いて、Cから教えてもらった廣瀬さんのLINEにメッセージを送ることにした。
② 6月3日(月)午後7時ころ、Eから廣瀬さんへLINE登録の許可を求めるメッセージが送られ、廣瀬さんが許諾してLINEでのやり取りが始まった。この日の廣瀬さんとEのLINEのやり取りは4時間半ほどに及んでいるが、やり取りの内容はEが主導する性的な話題に終始している。Eはほぼ一貫して性的行為の動画送信を求めるメッセージを廣瀬さんに送り続けていて、その中には、動画が送信されない場合には、性行為をすることをにおわすような表現や、動画の拡散はしないことを告げるようなものも含まれていた。廣瀬さんはEからの動画 送信の要求等を断り続けていたが、断り切れずに性的行為の様子を伝えたり、自分の下半身の画像を送信したりした。
③ 廣瀬さんからEに送られた画像は、その後、EからC、D、E、3人のLINEグループに送信されているが、この3人から更に拡散した事実は確認できない。ただし、Cは、6月23日(日)に、この画像をAとBに見せている。
事実経過<4>6月15日(土)の出来事
① E、F(上級生女子)、G(上級生女子)はY中学の同学年で、FとGの2人がEと遊ぶことはめったになかったが、この日は一緒に遊んでいた。同日、廣瀬さんが1人でW公園にいたところ、CとDが遊びに来て、そのすぐ後に、E、F、Gの3人が合流する形になった。FとC、Dは面識があり、GとDは少し前に知り合った間柄であった。F、Gと廣瀬さんは初対面で、Dが廣瀬さんを紹介した。
② そのとき、CとEが廣瀬さんが性的行為をしている、AやEに性的行為の画像を送っているなどと発言し、D、F、Gは廣瀬さんにその場でやってみせてと言った。廣瀬さんは、ここではできないと答えたが、3人はやってやってと言い、そのとき近くにいたZ小学校の児童数名も、事情をどの程度理解していたか定かではないが、同じように言い立てた。CとEは、それを止めようとしなかった。廣瀬さんは初めは嫌がっていたが、断り切れず、性的行為をすることを受け入れた。
③ D、F、G、C、Eと廣瀬さんの6人は、W公園奥のベンチへ移動し、小学生たちを遠ざけ、ベンチに座る廣瀬さんを囲むようにして立った。廣瀬さんは、腰に回していたパーカーを前に回して隠すようにして、性的行為を行った。
事実経過<5>6月22日(土)の出来事
① この日、廣瀬さんは、午前中からW公園にいた。午後4時ころには、DやE、Z小学校の児童5~6人もW公園に来て遊んでいた。
② そうしたところ、Eが廣瀬さんの仕草などを真似てからかった(6月15日の性的行為の様子を真似た可能性もある)。廣瀬さんは真似しないでくださいと言ったが、Eが面白がって挑発するように真似を続け、Eが知っている廣瀬さんの秘密を、その場で大声で言うかのような発言をしたところ、廣瀬さんは、泣きそうな表情になって怒り出し、Eを握り拳で叩いたり蹴ったりするような状況となった。廣瀬さんは、誰もわかってくれないとか、もう死にたいとか、いろいろなことを大声で怒るように言い続けた。
③ やがて、廣瀬さんは、もう死にますと言ってW公園西側を流れている川の方に向かって歩き出した。Dは、廣瀬さんの死ぬという趣旨の発言に対して、死ぬ気もないのに死ぬとか言ってんじゃないよなどと言った。廣瀬さんは川の方に走って行って川岸の柵を乗り越えて土手を降りたあと、川の流れ近くの草むらに立ってX中学へ電話をかけた。廣瀬さんは、電話に出た教員らに、死にたいと繰り返した。教員らは廣瀬さんを落ち着かせ、廣瀬さんがW公園にいることを聞きだした。そのころDは土手を降りて廣瀬さんのところへ行っていて、廣瀬さんと電話を代わって状況を説明した。すると、廣瀬さんは、雨で増水していた川の流れに入り、膝下まで水に浸かった。
④ その後、現場にやって来たX中学の教員2名が、膝下くらいまで川の流れに浸かっていた廣瀬さんを川岸の草むらに引き上げて座らせた。そのとき廣瀬さんは、死にたい、生きたくないと繰り返しパニックになっていた。廣瀬さんの傍らに付き添っていたDと後から到着した教員1名を加えた4名でいろいろと話していくうちに、廣瀬さんは次第に落ち着きを取り戻した。その後、廣瀬さんは、教員らとX中学に行って休息したりしてから、N病院を受診することになり、受診後そのまま入院することとなった。
【2】 第三者委員会が「いじめ」として取り上げる事実等
以下では、上記【1】の事実経過<1>~<5>の記載内容に沿って、当委員会が「いじめ」として取り上げる事実等を示す。
<Ⅰ>当委員会が「いじめ」として取り上げる事実は以下の通り
1.事実経過<1>②③④記載の事実に関して
上級生A、B、C(3名が揃っていない場面も含む)が、グループ通話等において年少女児である廣瀬さんがいる状況でも性的な話題を繰り返したこと、個別のLINE(Aとの関係)のやり取りにおいても性的なやり取りがなされたこと、Aが廣瀬さんと性的な意味での身体接触を持ったことは「いじめ」にあたる。
2.事実経過<1>⑤記載の事実に関して
上級生A、B、Cが、深夜(ないし未明)の時間帯に廣瀬さんを含めて公園に集ろうという趣旨の会話をグループ通話で行ったこと、それを実行していないにもかかわらず、それを廣瀬さんに伝えなかったことは「いじめ」にあたる。
3.事実経過<2>②記載の事実に関して
上級生Dが、廣瀬さんがDの分のお菓子等の代金を負担する行為(おごり行為)を繰り返し受けていたことは「いじめ」にあたる。
4.事実経過<3>②記載の事実に関して
上級生Eが、廣瀬さんとのLINEでのやり取りにおいて、性的な話題を長時間にわたって続けたこと、性的な動画の送信要求を長時間にわたって続けたことは「いじめ」にあたる。
5.事実経過<4>②③記載の事実に関して
上級生C、D、E、F、Gが、廣瀬さんに対して性的行為に関する会話を行ったこと、廣瀬さんに対して性的行為の実行を繰り返し求めたこと、性的行為の実行を求める発言に対して静観したこと、廣瀬さんが性的行為に及ぶ一連の状況を見ていたことは「いじめ」にあたる。
6.事実経過<5>②③記載の事実に関して
上級生Eが廣瀬さんをからかい、廣瀬さんが拒否的な反応を示した後もからかうような行動(廣瀬さんの秘密をその場で大声で言うかのような発言をしたことを含む)を続けたこと、パニックのような状態になった廣瀬さんに対して上級生Dが突き放すような不適切な発言をしたことは「いじめ」にあたる。
<Ⅱ>第三者委員会が「いじめ」と同様に考える事実は以下の通り
1.事実経過<3>③記載の事実に関して
EがC、D、EのLINEグループに廣瀬さんの性的画像を送信したこと、Cがこの画像をAとBに見せたことは「いじめ」と同様に考える必要がある(廣瀬さんに認識がある場合は「いじめ」にあたる)
※上記送信行為及び提示行為は、廣瀬さんが直接関与していない行為であるため、廣瀬さんがこれらを認識していなければ、法の定義における主観的要件を満たさないこととなり、形式的には「いじめ」に該当しないものと考えざるを得ない。ただし、法の趣旨を踏まえて「いじめ」と同様に考える必要がある。


