今年8月の豪雨で道路が崩落し、一部区間で通行止めが続いたまま今シーズンの営業を終了した白山白川郷ホワイトロードについて、石川県は2023年春のゴールデンウイークまでの復旧を目指しています。一方、地元の温泉地は、コロナ禍で客足が回復しない中、最大の観光資源も失い、かつてない苦境に立たされています。

仮設道路復旧も一般車両は紅葉に間に合わず

豪雨で道路が崩落したホワイトロード=白山市尾添、8月5日

石川と岐阜の山岳地帯を結ぶ全長33キロの白山白川郷ホワイトロードは、今年8月の記録的大雨で石川県側の無料区間で道路が崩落しました。

仮設の道路が設けられた被災箇所=白山市尾添、29日(許可を得て撮影しています)

11月11日に仮設の道路が設けられ、通行止めの区間内にある中宮温泉の関係者や工事車両が行き来できるようになりましたが、紅葉シーズンの一般車両の通行再開はかないませんでした。

ホワイトロード、温泉、コロナ…温泉地はトリプルパンチ

ホワイトロードの玄関口にある白山一里野温泉では、源泉から湯を運ぶパイプが土砂崩れで崩落した影響が長引き、2年近くにわたって宿泊施設などに温泉が届かない状況が続いています。

以前は源泉が注いでいた大浴場 現在は屋外にあるサウナ向けの水風呂として利用している=一里野高原ホテルろあん、29日

一里野高原ホテル「ろあん」では、サウナやグランピングなど、新たなプランを提案し、県民旅行割もあって一定の人気を取り戻しましたが、現在稼働している客室はわずか1割ほど。

「全国旅行支援」以降、予約がめっきり減ったと話す山﨑社長

山﨑太一郎社長は「全国旅行割は日帰りプランには使えず、石川県内の皆さんも全国に旅行に行くというフェーズになった。僕らは県外、都市部からお客さんに来てもらうが、温泉もない、ホワイトロードもないでは、なかなか私どもを選んでもらえなくて、すごく苦戦している」と話します。

県「GW前復旧」も待ち構える冬の試練

ホワイトロードの復旧工事をめぐり、地元住民に向けた2度目の説明会が29日開かれ、石川県の担当者が、例年と同じ春のゴールデンウイーク前の開通を目指すと説明しました。

今年9月に続いて開かれた2度目の説明会 住民ら約20人が出席した=白山市尾添の北竜会館、29日午後

道路が崩落した区間は、開通後も当面は片側交互通行を続け、2車線での通行再開は来年の11月までに完了したいとしています。

青色は仮復旧された道路 下流側にまず1車線(赤)整備し、その後2車線に拡幅する(ピンク)

ただ、ホワイトロードはこれまでも融雪期に道路の崩落が確認されていて、石川県森林管理課の庄田武志課長も「今年はもしかすると雪も多いかなという話もある。明確にいつ再開するかということは言いにくいが、4月に入って除雪作業とか進み具合などを見極めて、判断がついた段階でとしか今は申し上げられない」と述べました。

白山一里野温泉の代替として通行止め区間内にある中宮温泉の利用も訴えた山﨑社長

説明会に出席した「ろあん」の山﨑社長は「なんとかちょっと希望を持てた」とした一方で「以前よりも被災しやすくなっている気がする。少しでも災害に強いような復旧の仕方をしてもらえたら」と、相次ぐ災害での通行止めに、抜本的な道路の改良も必要ではないかと話します。

書き入れ時のスキーシーズンを無事に終え、果たしてホワイトロードは来年春に開通を迎えることが出来るのか。関係者の不安と期待は入り混じったままです。