高校野球 企画「最後の夏。最高の夏。」第2回は春の 広島県大会 で初優勝を果たした 福山 の 英数学館 高校。チームを引っ張るエースに迫りました。

黒田元 監督
「みんなが散らばった場所にいるけどみんな声かけあってやってるやん。これが英数学館の本来の良さなんよ」

英数学館高校 野球部 は未だ 甲子園 出場がありません。しかし、今年の 春季県大会 の決勝戦で3度の甲子園優勝を誇る 広陵高校 に勝利し初優勝を果たしました。

黒田元 監督
「初めて優勝という経験をさせてもらってからまた出会うべき壁というか困難にも向き合いながら、自分も含めて初めての事なのでどれだけ楽しんでやれるかという所をやっている」

この快進撃の原動力となったのが3年生の藤本勇太。最速147kmの直球を誇りプロ12球団が注目している英数学館のエースです。藤本は春季県大会のすべての試合で完投。決勝戦では試合終盤に脚をつってしまいマウンドから動けなくなるアクシデントがありながらも最後までひとり投げ切りチームを初優勝へと導きました。

藤本勇太 投手
「自分たちが映像で観た所の高校と自分たちがやって勝ったというのはすごい自信になりますし素直にうれしかった。春の大会では自分が一人で投げてきて勝ったというのがあったのでこの夏でも自分が一人で投げて勝ちたいという思いはずっとある」

実はこの学校創立以来の快挙は3年前に運命づけられていました。現在のチームを引っ張る主力が中学生だった2022年。この年の夏の県大会3回戦でプロ注目のスラッガー 真鍋 を擁する広陵と対戦した英数学館は1点差の接戦を制しみごと勝利。この大金星をきっかけに「英数学館で甲子園を目指したい」と翌年には創部以来最多となる25人の選手が入部しました。

エースの藤本勇太も当時、進路を迷っていた中学生の一人。高卒でのプロ入りを目指し県外の強豪校への進学も考えていましたが広陵に勝つ英数学館の試合を見て選択肢に英数学館が浮上します。最後に決め手となったのは黒田監督から渡された2枚の手紙でした。

藤本勇太 選手
「”ぼくのプレーを中学校2年生の時に見てからそこから一緒に野球がやりたい”だったり、自分の下で夢を叶えてみないか”と書いてありました。自分が初めてプロ野球選手と言ったときは周りからも非難の声があったがここなら夢をちゃんと話して本音で語り合えるなと思った。」

英数学館に入学した当時128kmだった球速は筋トレに力を入れた結果147kmまで大きく伸ばした藤本。監督が課題と考えていた精神面はある言葉をきっかけに改善されます。

藤本勇太 選手
「自分が2年生の時に相手ベンチからやじが飛んできてそれに自分がカッとなってベンチをにらむことがあった。その後に監督と個別で お前がエースとしてマウンドに経っているのは歴代で英数学館でちゃんとやてきた人のおかげだからちゃんとやれ と言われた」

その日以降、グラウンドでも私生活でも人間としての成長を見せた藤本は安定したピッチングを身につけ、プロ野球のスカウトが一目を置く選手へと飛躍をとげました。その藤本をはじめ「英数学館で甲子園を目指したい」と集まった部員が春の県大会決勝で再び広陵高校を撃破します。
広島の頂点に立ち野球部の歴史を作りましたが、まだ、彼らにとっては通過点。入学した時から夢見た甲子園出場がかかった最後の夏。監督と仲間、学校の期待を背負い成長したエースが学校初の快挙へ腕を振ります。

藤本勇太 選手
「夏の目標はチームで甲子園にというのはずっとあったのでこの代で行きたい気持ちはすごくある。自分の精一杯の力が出せれば勝てると思っているので試合相手もあるが自分にまず勝つというところでやっていきたい」

英数学館の夏の県大会初戦は7月13日に並木学園と市立呉の勝者と戦います。