動物園などで見る可愛さに思わず飼いたくなってしまう本来、野生の動物たち。しかし、そうした“飼いたい”気持ちが動物たちの未来を脅かし、絶滅のリスクを高めていることをご存じでしょうか。
愛くるしいパンダにコツメカワウソ。上野動物園はかわいらしい動物の姿を一目見ようと平日でも多くの人でにぎわっています。しかし、職員はある悩みを抱えていました。
上野動物園教育普及課 大橋直哉課長
「動物園としては『野生動物を守ろう』というメッセージを発しているつもりが、かえって、もしかしたら逆のパターンに取られてしまっている可能性もあるのかなと」
動物園が悩む「逆パターン」とはどういうことなのでしょうか。
何食わぬ様子で、日本に入国しようとする男。スーツケースに入っていたおわんを開けてみると…中から小さなサルが!
男が持ち込もうとしたのは、21匹もの希少なサル。衰弱し、およそ半分が死んだといいます。
近年、日本では犬や猫などではなく、本来野生にいる動物=「エキゾチックペット」の人気が高まっています。去年までの5年間に、日本がワシントン条約で規制された動物を輸入した量は、哺乳類が世界第3位、両生類が第2位。まさにエキゾチックペット大国です。
一方で、こうした動物の飼育や販売を目的とした密輸も後を絶ちません。その手前で密猟が横行すれば、野生動物が絶滅に追い込まれる危険があります。
密輸を防ぐ最後の砦・税関では、輸入された荷物を確認し、目を光らせています。
東京税関調査部 酒井芳樹次長
「密輸される動物は非常に狭くて、暗くて、寒いという劣悪な場所で長時間運ばれてくる。税関で発見した時には、すでに死亡・衰弱というのがほとんど」
税関で差し押さえられた動物はその後、どうなるのでしょうか。私たちが訪れたのは、神戸市内の動物園です。
「カワウソ飼いたいって言ってたね」
元気いっぱいのコツメカワウソ。2匹は3年前、タイから密輸され、空港で差し押さえられました。その後、この動物園で保護されたのです。
神戸どうぶつ王国 佐藤哲也園長
「脱水もあったし、かなり体調的には弱っていましたので(回復は)ちょっと厳しいかなと思ったこともありました」
懸命の治療の結果、今では展示できるまでに回復しました。
神戸どうぶつ王国 佐藤哲也園長
「一番いけないのは(ペットとして)需要があるような状態にしちゃうこと。そもそもペットとしては、基本的に向かない動物ですし」
「ペットには向かない」。簡単に飼えそうに見えるコツメカワウソですが…
実は、かなり凶暴。噛まれれば大けがをすることもあるといいます。
こうした、野生動物の意外な一面=「ウラのカオ」を知ってもらうキャンペーンを動物園などが行っています。
「ニワトリの頭を丸かじりしてますね」
「ぎゃー、これは衝撃映像だね!」
このキャンペーンの目的は、野生動物のペット化を見直してもらうことにあります。
あるアンケート調査では、エキゾチックペットを「飼ってみたい」と答えた人に改めて密輸や絶滅などの問題を伝えても、なんと8割以上の人が、引き続き「飼いたい」と回答しました。
こうしたことから、密猟や密輸による絶滅のリスクを減らすためには世話の難しさを知ってもらい、「飼えない」とわかってもらうことがカギになるといいます。
「砂漠の天使」として大人気のスナネコは鳴き声が…
キャンペーンに参加 上野動物園 大橋直哉課長
「動物園で見ると 非常に丁寧に管理していますので、一見、飼えそうな気になってしまうんですね。面倒くさい部分をすっ飛ばして 良いところだけを見ていることを理解いただいて、むしろ、そうじゃない部分のほうが動物を飼うということでは大きいんだと思う」
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