青森市と弘前市、県内に2か所ある献血ルームでは、毎月、献血に協力した人にさまざまな記念品を用意していて、現在は、ケーキが贈られてます。このケーキを考えた弘前市の女性が伝えたい思いを取材しました。


10月16日、青森市にある青森献血ルームには、休日を利用して多くの人が献血に訪れていました。採血が終わると職員から手渡されていたのは、青森県産リンゴの果肉が入ったケーキです。


このケーキには1枚のカードが添えられ、病気の治療で輸血を受けたこと、そして、献血に対する感謝の思いが記されていました。企画したのは、弘前市でリンゴの栽培と加工品の製造を手掛けている「タムラファーム」です。


※タムラファーム田村昌司社長
「私の妻が去年4月、悪性リンパ腫という血液のがんにかかって、2週間ほぼ毎日、ずーっと輸血を受けました。」


きっかけとなったのは、タムラファームの社長、田村昌司さんの妻・玲子さんが2021年4月に悪性リンパ腫を患い、輸血を受けたことでした。
そこで、コロナ禍による輸血用血液の不足を目の当たりにしたといいます。


※田村昌司社長
「先生(医師)と看護師と会話していて、“きょうは血が足りないな”とか“血小板があれば血小板を輸血できるのにな、1日我慢しようか”とか、そういう会話を聞いて、改めて足りないんだなという感じを受けました。」


献血ルームの前にはこの日、A型10人、O型14人、B型8人、AB型6人と必要な献血の人数が掲示されていました。新型コロナの流行が始まって以降、外出を控える動きや感染後やワクチンの接種後は一定期間、献血ができないことで献血者の数は、減少傾向が続いています。


今年度は、年度始めの4月と大雨や新型コロナのクラスターの影響があった8月に献血者が必要な人数より250人以上少なくなりました。7月からは、医療機関に対して安定して血液が供給できるとされている数を3か月連続で下回っています。


こうした状況を改善して献血で助かる命があることを伝えたいと、タムラファームは2021年10月、最初の取り組みとして、県赤十字血液センターにアップルパイを贈り、献血に協力した人に感謝の気持ちを伝えました。
このアップルパイは、玲子さんが2011年に考案し、今では、タムラファームの看板商品となっています。


※田村昌司社長
「素朴な感じでケーキ店ではできない農家だからできる、リンゴがいっぱいあるからできる味わいを意識して作ったと思います。一番うちの妻が手塩にかけた。」


アップルパイの後押しがあってか、県内の去年の10月の献血者は、コロナ禍でありながらも10月としては過去10年で最も多くなりました。


※青森献血ルーム 鳴海敦浩さん
「タムラファームに提供いただいたことに対して、広く献血を皆さんにPRできるきっかけもいただいたので、非常に感謝しています」


※田村昌司社長
「献血は本当にありがたく、身近にいっぱい必要とされている方がいる。皆さん気持ちはあると思いますが、それを行動に移して献血していただければ本当にありがたいことだと思っています。」


玲子さんは、順調に快復していて、今年8月には、現在、献血ルームで配っているケーキの発売に漕ぎつけました。このケーキには、献血で救える命があることや献血への感謝を伝える思いが込められています。


※ケーキの記念品は、青森・弘前の献血ルームで平日は先着30人、土日は先着50人に10月31日までの期間プレゼントされます。