異常なコメの高騰が続くなか、農水省はきょう、備蓄米21万トンを放出すると発表しました。来月下旬にも店頭に並ぶとみられますが、価格は落ち着くのでしょうか…

「お米高いです」
「異常ですよね。5キロとかでも、昔の10キロの値段みたいな」

街ゆく人の話題は、高騰するコメ。餃子の王将はきょうから、ライス全サイズを55円値上げ、炒飯や天津飯など26商品で値上げに踏み切りました。

コシヒカリは去年5月ごろまで5キロ2400円程度でしたが、先月、4000円を突破。異常なコメの高騰が続くなか、農水省はようやく重い腰をあげました。

江藤拓 農水大臣
「販売数量は21万トンとします。正直なところ、上昇した価格が落ち着くこと、当然、期待しております」

国内で保管されている100万トンの備蓄米のおよそ2割、茶碗にすると32億杯分を市場に放出すると発表。

農水省幹部
「農水省としては、価格を抑えるためという理由では出したくなかったんだけど、官邸からの圧力がすごかった」

ではなぜ、放出量を21万トンにしたのか…

江藤拓 農水大臣
「流通が滞っているこの状況をなんとしても改善したいという強い決意の数字だ」

コメは通常、農家からJAなどの集荷業者、卸売店などを通して消費者に届きます。去年、コメの生産量は18万トン増えた一方、集荷業者が集めた量は21万トン減少。

農水省は「流通の停滞」が“消えた21万トン”の原因とみて、初めて、流通の円滑化を目的に備蓄米の放出に踏み切ったのです。

きょう、創業335年のコメの卸売店を訪ねると…

創業335年の金沢米穀販売 金澤富夫 代表
「我々はお弁当屋さんの経営も担っているような感じなので、欠品ができないんですよね」

コメが全然手に入らず、店内に残っているのは週明け月曜に出荷する分だけ…

創業335年の金沢米穀販売 金澤富夫 代表
「去年の夏に売却(放出)してくれていたら、多分こんなに米騒動にならなかったと思いますよ。農水の優秀な役人には申し訳ないけど、普通の商人なら潰れてしまいますよね。我々、そこで判断を見誤ったら、会社はおしまいです」

早ければ、来月下旬にもスーパーなどの店頭に備蓄米が並びますが…

創業335年の金沢米穀販売 金澤富夫 代表
「米騒動というか、コメ不足は当面続くんじゃないかなという考え方が主流。需給バランスが非常に崩れていると思うんですよ」

専門家も根本的なコメ不足を指摘します。

キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁 研究主幹
「そもそもないんです。コメが不足している。消えたコメなんてないんです」

コメ高騰の要因として農水省があげる「流通の停滞」を否定。おととし夏の猛暑でコメが大幅に不足。それ以降、需要を満たせていないとし、「生産量を増やすべきだ」と強調しました。一方、気になる価格については…

キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁 研究主幹
「(放出した備蓄米)21万トン全部は市場に回らないと思いますけど、一部は回るでしょう。そうすると、ある程度、米価は下がる可能性がある」

ただ、農水省は「価格にはコミットしない」としていて、どの程度価格が下がるかは見通せない状況です。