兄弟のように育ったエリーの最期

金澤敏雄さん
「最初はゾウのプールがあるわけですよ、そこに高圧電線を流して、エリーがプールに足を突っ込んだら、そこでスイッチ。でも、エリーは自分の運命を察知していたのか、全然寄り付かない。ウォーと泣いて、後ずさりする。だったらもう中止と。私は木の陰で見とってね、よかったよかった、助かった!と」

安堵したのもつかの間、立ち会っていた第6師団の司令長が口火を切ります。

金澤敏雄さん
「『おい、金澤、お前が殺せ!』やっぱり軍の命令に逆らうことはできません。」

父・太郎さんは、電流が流れる棒の先に、エリーの好物だったサツマイモを巻きつけました。

金澤敏雄さん
「エリーからいもだよ。エリーは鼻を上げて、それを口の中に無理やり押し込んで、それから何分もしないうちに横倒し、父もね、ごめんねエリー許してくれ、心の中で叫んで、押し込んだらしい。やっぱりその時の父の心苦しい気持ちは、ずっと亡くなるまで消えなかったそうです」

わが子のようにかわいがったエリーを自分の手で殺めてしまった無念さ。

さらに…

金澤敏雄さん
「そのゾウの肉はね、部隊の兵隊さんのごちそうになって消えていったんです。ゾウ舎の裏の水路があるでしょ。3日間、赤い血が溜まったまま。」

日本は、この日から4か月足らずで終戦を迎えました。

エリーの下あごの骨に涙

今、熊本市動植物園にはエリーの下あごの骨が展示されています。

当時、ゾウを解体した業者の親戚が自宅に持ち帰り、40年もの間、ずっと供養していたそうです。

金澤敏雄さん
「両端には花が植えてあって、真ん中には線香があって、私はそれを見て涙が出たです。願わくば、父が生きていたら、連れて行きたかったなぁって」