二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された9話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

佐伯教授の手術

佐伯教授は左冠動脈肺動脈起始症と僧帽弁閉鎖不全症を合併しています。

左冠動脈肺動脈起始症の手術はいろいろな種類がありますが、ここで行われた手術は冠動脈バイパス手術です。以前も何回か出てきましたが、詰まりかけていたり、詰まってしまって血液の流れが悪い冠動脈に、迂回路(バイパス)を作って血液を新たに流してあげる手術です。

この病気の場合は冠動脈が肺動脈から出ていますので、静脈血(酸素を含んでいない血液)が心臓の筋肉に流れているわけです(前回の解説もご参照ください)。ここに左内胸動脈という動脈を吻合すると、動脈血(酸素を含んでいる血液)が流れてくれます。内胸動脈は胸の真ん中にある胸骨という板のような骨の裏側に左右で存在しています。一般的には左の内胸動脈を左の冠動脈につなぐ傾向が強いです。

左内胸動脈は心臓の左心室→上行大動脈→左鎖骨下動脈→左内胸動脈という順序で動脈血が流れていて、左冠動脈に繋ぎやすい位置にあるため、バイパス手術のために神様が用意してくれた血管とも言われています(3話、7話にも出てきました)。

少し込み入った話になってしまうのですが、この病気の場合、左内胸動脈からの血流は冠動脈に流れ、心臓の筋肉に流れてくれるのですが、このままでは肺動脈にも流れてしまいます。実際は肺動脈に向かう冠動脈を縛って、血流が肺動脈に流れないようにします。

手術の時のCGにあったように、左冠動脈は心臓の左側にありますので、右か左かで言ったら左胸から手術した方がやりやすいです。一方、僧帽弁の手術は、主に心臓の右側から手術をしますので、右の胸から手術します。以前にも書きましたが、心臓の弁は心臓の右を向いているので、心臓の右側から手術をした方がやりやすいのです。

冠動脈は左胸から、僧帽弁は右胸からであると、どうしても時間がかかってしまうということで、世良くんが池永編集長に似た症例報告(論文)がないか聞きに行きます。すると、池永編集長は右側から僧帽弁も冠動脈も両方治療する報告があったといいます。