シリーズ「現場から、」です。能登半島地震でビルの倒壊により居酒屋が押しつぶされ、妻と娘を亡くした石川県輪島市の男性が、2人との思い出を胸に遠く離れた神奈川県で出店。決意の再出発です。
楠健二さん(56)。今月10日、神奈川県川崎市で居酒屋をオープン。再出発を多くの客が祝いました。
輪島市河井町の7階建てのビルが元日の地震で倒壊。その隣で楠さんは、2018年から妻・由香利さん(48)と居酒屋「わじまんま」を営んでいました。
妻・由香利さんと長女・珠蘭さん(19)はがれきに体を挟まれ、救出活動は思うようにはかどりませんでした。
楠健二さん
「自分の娘と大好きな妻がいるのに出せない。そんな悲しいことないと思うよ。俺は耐えられない、本当、頭おかしくなるよ」
楠さんは1月の下旬から、何度も押しつぶされた店を訪れ「大切な物」を探しました。沢山の写真が残されている妻や長女のスマートフォンや去年、妻からプレゼントされた腕時計。
川崎市は輪島市に移住する2018年まで、家族で暮らしていた場所です。
楠健二さん
「輪島の復興復旧がいつになるか分からない。じゃあ、やるしかない、やるしかないんだよ」
店の名前は、輪島市の店と同じ「わじまんま」。しかし、これまで当たり前だった家族と一緒に切り盛りする様子は店内にありません。
楠健二さん
「娘たちがホールに出て客相手にして、奥で女房が揚げ物でも焼き物でも作って、ゲラゲラ笑って終わったんだけどね」
次々に注文の入る能登の日本酒や焼酎。魚などの食材も能登から取り寄せました。
「純粋に応援したいなというのと、みんなにもっとここに来てもらいたいという思いで来た」
亡くなった長女・珠蘭さんの中学校時代に3年間、担任を務めた男性も訪れていました。
珠蘭さんの中学時代の担任 中野裕太さん
「優しい子だった。周りを見て動いて。お父さんのスタートの日だと思って、駆けつけたいなと思って来た」
楠健二さん
「とりあえず一歩踏み出せたかな、というところかな、今は。最後には戻ろうと本当に思っているし、きょう改めて思ったかもしれない。あしたは2ページ、あさっては3ページ。何ページもめくって厚い本になったら、そのころにたぶん輪島に戻れるのかな」
いつか輪島へ戻る日まで、店には「復興中」の看板が掲げられています。
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