東京高裁の再審開始決定が出たいわゆる「袴田事件」をめぐり、弁護団は3月16日、検察の主張に反論する新たな鑑定結果を示しました。検察の「特別抗告」の期限が3月20日に迫る中、袴田さんを有罪としてきた「証拠」の存在が日を追うごとに揺らいでいます。
<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「オンライン署名ということで動いていますけど、24時間で2万5000人を超えた。非常に関心が高まっていて、賛同の声が広がっているのは重要なこと」
急速に集まっているというオンライン署名も後押しに、弁護団は16日、検察庁を訪れ、特別抗告を断念するよう申し入れたということです。
57年前(1966年)、旧清水市で一家4人が殺害された「袴田事件」をめぐっては、東京高裁が13日、袴田巖さん(87)の再審を認める決定を出しました。検察が特別抗告をすれば審理が長期化することは確実です。
そんな中、弁護団は16日、検察の主張に反論する新たな鑑定結果を示しました。鑑定は高裁の審理で争点になった、事件から1年2か月が経って「みそタンク」の中から見つかった「5点の衣類」の血痕の赤みに関するものです。高裁の審理で弁護側は「1年あまりみそ漬けされた血痕に赤みは残らない」と主張し、認められました。
一方、検察側も血のついた布をみそに漬ける実験を行い、「赤みが残る可能性はある」と主張しています。弁護団は今回、この検察側の実験の写真を色の専門家に鑑定してもらい、その結果、「検察官の言う赤みは、血痕ではなく、みそのものだった」と指摘しました。
<袴田さん支援クラブ 白井孝明さん>
「(検察は)血痕の赤みがあると主張されている、その赤みの正体は血痕ではなく、みその色を見ている。これが現時点での我々の結論です」
弁護団はさらに、血痕が赤く見えるように検察側は写真を撮っていたと指摘しました。
<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「あれはおかしい。真っ赤な中で写真を撮ってますからね」
この点については、東京高裁も決定文の中で指摘。検察側が撮影の際に白熱電球を使用したことについて、「白熱電球を照射して撮影した写真は、白色蛍光灯下で撮影した写真に比べて、撮影された被写体の赤みが増すとされている」としています。
実は東京高裁の大善文男裁判長は静岡地検に足を運び、検察側の実験を視察していました。その結果、検察が提出した写真は「肉眼で見た状況を忠実に反映していない」と指摘したのです。
「5点の衣類」をめぐっては、東京高裁が捜査機関によるねつ造の疑いにまで言及するなど、袴田さんを有罪としてきた「証拠」の存在は日を追うごとに揺らいでいます。
検察による特別抗告の期限は3月20日です。