法廷に現れたのは、ともに白髪の夫婦。長男を殺害しようとした罪に問われていました。父親は、京都府南部にある町の元町長でした。

その時39歳だった長男は、定職に就いていなかったといいます。

凶器は重さ1.5キロのバール 長男は頭がい骨を折るけが

この裁判は、2022年6月に岡山県の北部・美作市内の住宅で、元町長の父親(73)と母親(66)が共謀して、就寝中の長男の頭をバールで数回殴り、殺害しようとした殺人未遂の罪に問われたものです。

長男は頭がい骨を折るなど10日間のけがをしました。

事件から半年あまり。法廷に現れた夫婦に告げられた判決は、検察が求めた「懲役4年」よりも軽い刑でした。

(裁判長)「父親に懲役3年・執行猶予4年、母親に懲役2年6か月・執行猶予4年」

いずれも4年間、刑事事件を起こさなければ懲役を免れる「執行猶予」がついたのです。このあと裁判長が「量刑の理由」を述べました。

明らかにされた真実「父親は母親を助けようとしていた」

判決によりますと、父親と母親は、精神的に不調をきたしていた長男から、長年にわたり「暴言」や「暴力」を受け、さらに長男の要求に応じて「長男を何度も引っ越しさせる」などし、経済的にも身体的にも精神的にも疲弊していったといいます。そして美作市にやって来たのです。

特に母親は、引っ越しのたびに長男に付き添い、同居して日常の世話を余儀なくされていたといいます。それにも関わらず、長男から「何度も自殺を迫られる」ことがありました。

その様子を見かねた父親は、「母親を長男から助けよう」と殺害を決意。母親も、精神的不調に苦しむ我が子を「死なせてやるしかない」と考えるに至ったそうです。