ビジネスで新たな資金を調達する方法として、広がっているサービスがあります。インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める「クラウドファンディング」、通称「クラファン」です。
クラファンの流れです。
◆新しい事業やサービスを始めたい人が、運営サイトにアイデアを提案します。
◆それを見た支援者は、提案者に資金を提供。
◆提案者は「支援者」にそのお返しとして、商品や体験などの「リターン」を返します。
支援金が集まれば、ビジネスチャンスをつかめるということもあり、鹿児島でも若者を中心に広がっています。
Q.この膜は何ですか?
(伊達醸造 富澤英里子さん)「(鹿児島に)来たばかりで勉強中なのでよく分からない。(酢をつくるための)酢酸菌膜」
霧島市福山町の伊達醸造。黒酢やみそ、しょうゆなどをつくる、創業200年の老舗です。
6代目の社長に就任予定の富澤恵理子さん(25)です。横浜生まれの横浜育ち。今年の6月まで、東京で働いていました。霧島市に移住し、母方の祖父が経営していた会社を継ぐことになったわけは…
(富澤英里子さん)「会社がなくなってしまうと、夏休みに鹿児島に来ていた思い出ごとなくなるような気がした。寂しいと思って私が継ぐと言った」
原材料の高騰などで経営が悪化し、存続が危ぶまれた会社を立て直そうと決意しました。
(富澤さんの叔父 伊達醸造 伊達英史社長・55歳)「この業界もいろいろと厳しい。それでもやりたいという意思は強かったので、やってみなさいと言った」
会社の再起をかけて、初めて利用したのが、クラウドファンディングでした。
(記者)「富澤さんが利用したクラウドファンディング・キャンプファイヤーの運営サイトです。たくさんの応援メッセージも寄せられています」
老朽化した設備の修理費や、ホームページのリニューアルなどに充てるため、目標は100万円に設定。集まった資金の17%を手数料として運営会社の「キャンプファイヤー」に支払うプランを選びました。
支援者への「リターン」は、黒酢の仕込みの体験やつぼのオーナー権など6つ。SNSでも呼びかけたところ、1か月で79人から122万円が集まり、目標を達成しました。
(富澤英里子さん)「目標金額以外のメリットがあったことが、やってみて良かった。人とのつながりや温かさを感じた」
会社を立て直すきっかけになればと、挑戦したクラファンですが、思わぬ効果もありました。新潟のコメ農家と知り合い、ブランド米を使った黒酢を商品化する計画中です。
クラファンの国内最大手・キャンプファイヤーのサービスは2011年から始まり、先月まで12年間の支援額は760億円に上りました。
地域別の居住者は首都圏が40%、鹿児島など九州は8%、年代別では20代が20%、30代が27%、40代が26%と、幅広い世代が利用しています。
(キャンプファイヤーローカル・フード部 畑幹人部長)「おすそ分けの文化や近所の応援といった文化というのが、日本にも元々ある。おすそ分けや、助け合いをインターネットを介して実現する役割を果たしてくれる」
姶良市に暮らす鹿児島高専3年の中元悠仁さん(17)。学業の傍ら、企業や自治体から依頼を受け、ドローンを使った映像を制作しています。
映像クリエイターとして活動するうち、表現の幅を広げたいと思うようになった中元さん。専用のゴーグルをつけて操縦し、より迫力のある映像が撮れる「FPVドローン」を購入しようと、クラファンで40万円の資金調達に挑戦しました。
(中元悠仁さん)「アルバイトをこつこつすることも考えたが、いろいろな人にFPVを知ってほしいという思いがあり、今回はクラウドファンディングというかたちで資金を調達しようと決めた」
支援してくれた人へのリターンとして、中元さんがドローンで撮影した映像を先行公開することや、作品の最後に支援者の名前を字幕で出すサービスなどを提案。今月1日から支援を募り、SNSで毎日、活動を報告しました。
Q.毎日の支援金額に一喜一憂することは?
(中元悠仁さん)「どうしても気になってしまう。2日間、全く支援がもらえないこともあった。焦りもあった」
こまめな情報発信を心がけ、スタートから2週間。これまでに目標金額を超える42万円が集まりました。
(中元悠仁さん)「大変だが、自分の目標のためにやっているので、やりがいはあるし、楽しい」
新たな挑戦に苦労はつきもの。しかし得たものは、資金だけではなかったといいます。
(中元悠仁さん)「40万円は大金。皆さんに支援され、期待や思いをのせたお金。感謝してもしきれない。映像を皆さんに見せるかたちでも、恩返しはぜひしたい」
若い世代がチャンスをつかむきっかけにもなっているクラファン。鹿児島発の新たなビジネスが生まれる可能性を秘めています。







