

野田さんは三重県の長良川河口堰、徳島県の吉野川可動堰、熊本県の川辺川ダムの反対運動にも関わった。その“根っこ”を彦いちはこう感じ取っていたという。
(彦いち)「野田さんはですね…“開発”とか“ダム”とか反対していたんですけど、『反対反対って言っているだけじゃ役人は首をタテに振らない』っていうこともおっしゃっていました。で、同時に『俺たちは川で遊びたいんだ。自然で遊びたいんだ』と。これは晩年もずっと言ってましたね。だから「楽しいってことを伝えれば良いんじゃないか」ってこととして僕なりに解釈してましたし、そういうことを言っていた記憶があります。『森を守れ!反対!』じゃなくて、『森は楽しいんだ、川は楽しいんだ、外遊びって楽しいんだ』っていうことが伝われば…必要な開発もあるでしょうけど、共存共栄ができるようなものになるんじゃないかなと。僕自身もそういう現場に立ち会うことがありますし、そういう時はそういうメッセージを、野田さんから教わった者として発信していきたいなと思っていますね。噺家であるからなおさらのこと、「楽しいよ」っていうことは、ちょっと伝えていきたいなと思いますね。
野田さんのアウトドアイベントによく遊びに行ったんですけど、その時もずっと「川で遊ぶとこんなに楽しいんだ」っていうことは教えてましたね。子どもたち集めて「川ガキ」っていうのをやっていて、河原で子どもたちにいろんな遊びをするんです。魚の手づかみをしたり。僕なんか呼ばれたら、河原で話をするんですね。昔話したりとか、落語であったりとか。そういう原体験をいっぱい作ってあげるっていうことじゃないですかね。
◆野田さんが教えてくれたこと

(彦いち)「“自由”ってことですよね。まあ教えようと思って教えてはいないと思うんですけど。自由な旅ですね。今はネットでいろんなガイドも多いですけど、自分の旅は自分で探して、やりたいことも。それで良いんじゃないですかね。今はネットに情報も多いし、『ここに行ったらこれをする』みたいな定番のようなのがあるじゃないですか。指針を示してくれるのは良いんですけど、やっぱり自分の旅のプランは自分で練らないと野田さんに怒られますね(笑)」
◆最後にひとこと野田さんに。

…また何十年かしたら僕も世話になるので、川下りのスペシャリストとして、三途の川の渡り方をレクチャーしてもらえたら嬉しいなと思っています。なかなか結構川も渡りづらいと聞いてますので。野田さんぐらいの腕のある人でないと。『よし、彦さん行くぞ!』って言ってくんないと。」
