鹿児島市議選が7日に告示され、選挙戦が繰り広げられています。ニューズナウではシリーズで市議会の役割や争点について考えます。今回は、MBCアプリのアンケートで関心の最も高かった争点「サッカースタジアム問題」です。
7年前から検討が始まり、これまでに5000万円以上の予算が計上されてきたにもかかわらず、候補地が2度白紙に戻り、迷走が続く鹿児島市のスタジアム整備。活性化を望む天文館地区や有権者の声を取材しました。

(WeLove天文館協議会 牧野繁会長)「このアーケードもなかった時代。通行量も年末やお盆になると、すごい人だった。今の数倍と言わないぐらい」
天文館地区の活性化を目的に店や団体でつくる協議会の会長、牧野繁さん(68)です。手芸店を営みながら40年以上、天文館地区を見続けてきました。
かつては人が押し寄せた天文館。コロナ禍を経たいま、商店街には空き店舗が増えてきたといいます。
(WeLove天文館協議会 牧野繁会長)「(空き店舗が)増えている。なかなか埋まらない。2階の店がだいぶ減ってきている」

鹿児島市が毎年調査している主な商店街の空き店舗の割合です。天文館を含む中央地区は、2020年のコロナ禍以降、鹿児島中央駅地区と比べても空き店舗の割合が高く、悪化した状況が分かります。
2000年ごろは20万人を超えていた通行量も、大型店の相次ぐ出店などで、2022年度にはおよそ9万9000人と半分に落ち込みました。
(WeLove天文館協議会 牧野繁会長)「ずっと右肩下がりで減ってきている。半分以下に落ちている。崖っぷちにぶら下がって残っているのが現状。コロナ禍で天文館も痛手を受けて、空き店舗も増えてきている。現状を戻すのにかなり時間がかかる」
「天文館にかつてのにぎわいを取り戻したい」去年12月、牧野さんら天文館の4つの団体が下鶴市長に要望したのが、鹿児島市が計画を進めるサッカースタジアムの天文館エリアに近い「北ふ頭」への整備です。ところが…。

(鹿児島市・下鶴市長)「早期の整備に向けて当地での検討は、白紙に戻すことを決断した」
要望から2か月後、下鶴市長は北ふ頭への整備を断念。北ふ頭案はそれまでの3つの候補地が白紙になった後に、市が去年6月に打ち出した案で、白紙に戻るのは2度目です。
さらに下鶴市長は、これまで目指してきた「都心部」での整備についても、明言を避けるようになります。
(WeLove天文館協議会 牧野繁会長)「まちを楽しんでもらうキャパシティがないと、ただ試合を見て帰るだけでは何も活性化にならない。そのキャパを持ったのが中心市街地。いま検討している地域内に、なんとかつくってほしい思いが強い」

スタジアム計画は、森前市長時代の2017年に協議会が立ち上がり、検討が始まりました。鹿児島市議会はスタジアム関連に昨年度までに当初予算ベースで、およそ5000万円を議決。候補地が白紙に戻った中、今年度の当初予算でも先進地視察費などに810万円を盛り込みました。
牧野さんは、これまでの市議会の議論について「目指す方向性が見えなかった」と話します。
(WeLove天文館協議会 牧野繁会長)「スタジアムについては、議会の意向が見えてこなかった。議会で中心市街地をどう考えているのかという議論も、されているかも知れないが、なかなか見えてこなかった」

MBCがアプリで行った独自のアンケートでは、最も関心が高かった課題は、サッカースタジアム問題でした。また、スタジアム整備について、賛否を尋ねたところ、賛成が54.2%、反対が36.8%、分からない・その他が9%と、意見が分かれました。

迷走するスタジアム計画に、鹿児島市民は?
(30代)「賛成です。ユナイテッドがJ1に行くことになったら、新しいスタジアムがあった方が良い」
(10代)「いいと思う。スポーツ好きだから、増えれば良いかな」
(20代)「市内には大丈夫(いらない)。(建設費が)ちょっともったいない。ほかにも活性化のためにできることがあると思う」
(60代)「(多額の費用が)かかると言われる。その辺はまだ自分の中で整理がついていない」
(60代)「つくるのに反対ではないが。(議会が)あまり何をやっているか伝わってこない。市議は市民の声をしっかり聞いて、行政に生かしてくれたらいい」
候補地が2度も白紙となる中、予算を通し続けてきた市議会。今後、スタジアムを整備するとなれば、巨額の建設費用がかかるため、議会の役割はますます重要になってくると専門家は話します。

(鹿児島大学法文学部 有馬晋作客員教授)「議会は予算案や条例案、重要な契約の議決権を持っているので、執行部側の重要政策の最終意思決定をする重要な役割を持っている。地方議会は以前は地縁・血縁と言って、知り合いだからとかで投票行動する話もあったが、やはり有権者は政策本位で議員を選ぶスタンスが重要」
候補地の選定で迷走するスタジアム計画。今度の選挙で私たちが選ぶ市議会議員によるチェック機能はより重要になっています。