去年11月、札幌市豊平区の自宅で、89歳の妻を殺害したとして殺人の罪に問われている94歳の男の裁判員裁判が、16日札幌地裁で開かれました。
65年間連れ添った妻を自らの手で殺害したとされる被告。検察が証拠として提出した遺書などから、認知症が進む妻の介護に疲れ、将来を悲観した被告の苦悩が明らかになりました。
起訴状などによりますと、札幌市豊平区の無職・上牧道雄被告94歳は、去年11月、札幌市豊平区の自宅で当時89歳の妻・英代さんの首を紐で締めて殺害した罪に問われています。

事件当時、上牧被告と英代さんは2人暮らしで、上牧被告は普段から、認知症を患い、要介護度2の認定を受ける英代さんの食事の世話などをしていました。
16日、札幌地裁で開かれた裁判員裁判の初公判にグレーのスーツ姿で出廷した上牧被告は、しっかりとした足どりで証言台の前に立ちました。
難聴を患う被告のために、証言台にはスピーカーが用意されました。

札幌地裁の吉戒純一裁判長に、起訴内容に間違いがないか問われた上牧被告は「ございません」と認めました。
冒頭陳述で検察側は「妻の介護を継続できず、施設に預ける金銭的余裕もないと将来を悲観し、心中を決意して犯行に及んだ」と指摘。
弁護側は「無理心中を試みたのは介護疲れによるうつ病が原因で、再犯の可能性は低く、犯行を深く反省している」などと情状酌量を求めました。