もともとはエンタメ要素の強いサービスだった

4年前にエイベックスなどがリリースした“コエステ”。スマホなどで、誰でも無料で使うことができますが、もともとはエンタメ要素の強いサービスでした。

(コエステーション・平林 執行役員)
「例えばカーナビとかだと、女性話者が淡々と言っていると思うんですけど、芸能人などの『好きな声で聴きたい』というのを叶えようと思って」

いまは病気で声を失った人も多く利用していて、コエステと医療現場の連携が進んでいます。

名古屋大学病院・耳鼻咽喉科の西尾直樹医師。喉頭がんと咽頭がんなどが専門で、声帯を摘出する手術を担当しています。

(西尾医師)
「声を取るのは慣れない、声はその人の人生になるので緊張するし責任はある」

手術後、無事終了だからねと声をかけます。声を失った患者とも向き合い続けていました。

もう一度自分の声で話したい

田島浩幸さん(62歳)。
2022年2月、ステージ4の咽頭がんの手術を受け、声を失いました。

(田島浩幸さん)
「最初は、声はあきらめていました。ステージの4だとほとんど絶望的かなと思いました」

そんな時、西尾医師から勧められたのが“コエステ”でした。

(西尾医師)
「がんを治すというのはもちろん重要で、それはやらなければいけないですが、中々声を取った人は社会に復帰できない。何とかしたいという思い」

手術の1週間前。田島さんはスタジオを借りて3時間、自分の声をコエステ用に声を記録し続けました。

“もう一度自分の声で話したい”そう強く思うのは、家族がいつも側で支えてくれたから。

高校の同級生だった鈴子さんと結婚。3人の息子にも恵まれました。家族のため、大型トラックの運転手を朝から晩まで勤め、もう40年以上になります。

手術を受ける数日前の映像がありました。
生まれたばかりの孫・綾乃ちゃんに、自分の声で話しかけた最後の瞬間です。そして田島さん、手術前、家族にメッセージを残していました。

(田島さん)
「いつも心配ばかりかけて、本当にすみません。お母さん、鈴子さんもいつも心配ばかりかけてすみません。あと、佳祐も雅之も和貴も親がこういう病気したんで、あなたがたも十分体には気を付けて、今からも暮らして下さい」

CBCテレビでは、2023年10月8日(日)深夜1時28分(※日付変わって10月9日月曜日)にドキュメンタリー番組【「声-」あなたへ】を放送します。

番組の取材は、2022年6月に放送したCBCテレビ「チャント!」の企画から始まりました。(このページの記事は、放送当時の年齢や時制です。)