30日に兵庫で開幕を迎える第32回高校女子サッカー選手権。過去には宮澤ひなた(24・星槎国際湘南高校)や鮫島彩(36・常盤木学園高校)といったなでしこジャパンのメンバーが出場、これからの日本女子サッカー界を担う「なでしこの蕾」が日本一をかけ鎬を削る。

青春をサッカーに捧げた女子高校生たちはそれぞれの想いを胸にピッチに立っている。強豪ひしめく関東地域予選で優勝を果たした修徳高校(東京)は、14大会連続14回目の出場。地域予選の勢いそのままに初の日本一を狙う(過去最高位は3位)。

関東最強チームを攻撃の起点として支えるのが、3年生・MFの榎戸りおなさん。高校最後の選手権を特別な思いで迎える。

母が朝4時起きで支えてくれた片道2時間の通学

榎戸りおな選手
これから勉強していきたいことが見つかって、ここでサッカーにひと区切りつける決心をしました。(選手権は)自分のサッカー人生最後の試合になるので、本当に後悔がないように終わりたいです。

3歳からボールを蹴り始め、15年間サッカーに打ち込んできたりおなさん。大学では英語や資格の勉強に専念したいという思いがあり、高校を最後にサッカーを辞めることを決意した。

ラストマッチを前にりおなさんには感謝を伝えたい人がいる。それは、いつも一番近くでサポートをしてくれた母・朋美さんだ。

榎戸りおな選手
朝ごはんとかを自分より早く起きて作ってもらっていたことが、すごく大きかったです。

りおなさんの自宅から修徳高校への通学はチームで最も長い片道2時間。5時台に家を出発するりおなさんに合わせて、母の朋美さんは3年間欠かさず、朝4時に起きてお弁当を作ってくれた。仕事に行く前にお弁当を作るのは楽ではなかったというが、サッカーに打ち込む娘のためなら頑張れたと話す。

母・朋美さん
みんなが娘を応援してくれているので、私も一番応援する母でいたいと思って頑張っています。

元サッカー選手の母からの期待

母・朋美さんは、実は元サッカー選手。かつて読売ベレーザに所属し、澤穂希さんと共にプレーしていた。その影響で、りおなさんも幼少期から澤さんに遊んでもらっていたという。小中学生の頃は母自ら、りおなさんが所属するクラブチームのコーチを務めていた。元サッカー選手だからこそ、娘への期待が裏目に出てしまうこともあったという。

母・朋美さん
頑張ってほしいという思いで厳しく接してしまっていた部分が、きっと嫌だろうなと思うことがあって…。

榎戸りおな選手
小中学生の時は「うるさいな」って思っちゃったこともあるんですけど、今では感謝しています。

時にはぶつかりながらも、サッカーを通じて深めた親子の絆。今では、周囲から”分身”みたいと言われるほど、何でも言い合える親友のような関係になった。休日は、母娘2人で近所の公園に行き、リフティングやパス交換の練習をするのがお決まりだ。

辞める決断を尊重してくれた母へ 最後の感謝

選手権10日前、高校でサッカーを辞める決断を尊重してくれた母へ、りおなさんが最後の感謝を伝えた。

榎戸りおな選手
15年間、私のサッカーを応援してくれて本当にありがとう。私にそっくりなママがいたからこそ辛い時も乗り越えられたし、自分の力だけでは修徳に通えなかったと思います。毎朝早朝からごはんを作ってくれて、いつも美味しいごはんを食べられて本当によかったです。15年間の気持ちを全部出し切れるように一生懸命頑張るので、最後まで応援していてください。

母・朋美さん
こちらこそ沢山応援させてもらってありがとう。最後みんなで優勝できるように頑張ってください。

榎戸りおな選手
全国とれるように頑張ります。

修徳は、30日に専大北上(岩手)との初戦を迎える。

*写真は左から、榎戸りおなさん、母の朋美さん