シリーズでお伝えしている、部活動の地域移行についてです。

「部活動の地域移行」とは、公立中学校の休日の部活指導を今年度からの3年間で、「教員」から「地域」や「民間団体」に委ねる国の政策です。

背景には、少子化や教員の働き方改革の影響で、学校単体での部活動の存続が難しくなっているという現状があります。

国は受け皿として、【画像①】のような団体の例を挙げていますが、具体的にどう移行を進めるのか、かじ取り役となる市町村からは戸惑いの声も少なくないといいます。

【画像①】

シリーズ2回目は、2年前にいち早くモデル校に認定され、学校単位で導入を進めた赤磐市の中学校を紹介します。学校と地域が繋がる鍵とは。取材しました。

日曜日、秋空の下、スティックを振りぬいていたのは赤磐市の磐梨中学校ホッケー部です。岡山県では珍しいホッケー部は、約20人の合同チームで全国準優勝の経験もある伝統校だといいます。

「プレーしていていま上手くいっているのか駄目なのか分からない。だから不安になる。だから思い切ってプレーできない」

「お互いをもっと認めてあげよう、チームなんだから」

実は、赤磐市は2005年の岡山国体でホッケー競技の会場になったことから競技が盛んで、東京オリンピックでは強豪カナダ男子の事前キャンプ地にもなりました。

地域には競技経験者が多く、地域移行の導入による休日指導は地元住民らが担ってくれています。

(地域部活動指導員 相浦良人さん)
「普段(平日)部活としては中学校の顧問の先生が見てくれて、週末に地域指導員が入っている」

2021年度からモデル校として、地域移行に取り組んできた磐梨中学校。

地元には小学生のホッケークラブもあり、競技をする子どもたちと指導者らは良く知る間柄だといいます。

(地域部活動指導員 相浦良人さん)
「きょうは中学生の集まりと小学校の6年生が、来年の新チームになるためにクラブチームから参加している」

国内の競技人口は多くないホッケーなど、独自のスポーツ文化を持つ磐梨地区。2年間の経験から「地域移行のあり方は地域によって異なる」と語るのは、前校長で今年度から地域移行の委員会をまとめる出射理事長です。

委員会の設立に際し出射理事長が鍵だったと振り返るのが、地域のスポーツ文化を把握し委員会の理事として地元スポーツ団体の指導者らを招くことでした。

(磐梨DreamTownプロジェクト委員会 出射実理事長)
「地域移行の受け皿が地域にないことはない」

「私は剣道をしてきたが、中学校の指導者がいなくてもスポーツ少年団が地域にあって、そこが中心となって学校と上手く連携しているところはいっぱいある。逆にそういうところは強い伝統があって」

ホッケーと同じく委員会に名を連ねるのが長年、地域で活動する武道館です。ここでは、中学への進学後も武道館に所属する文化があり、継続した指導で全国でも華々しい成績を残してきました。

この関係をモデルに、地元の様々な指導者を探して休日の指導を願い出た委員会。子どもの練習環境を守れればと少しずつ人材が集まりました。

(磐梨DreamTownプロジェクト委員会出射実理事長)
「指導者が41人います。学校の地域指導者として登録している教員を入れて」

現在、磐梨中学校には6つの運動部があり、外部の指導者の職業は公務員や会社員農家などさまざま。しかし、いずれも地元への深い愛情があるといいます。

(磐梨DreamTownプロジェクト委員会 出射実理事長)
「年代は40代が一番多い。一番忙しい年代その方々が中学校の部活動に来てくださるよく聞くと、磐梨中学校で部活動をしていた人たち」

軟式野球部でも、地域の住民らが日曜日の指導を担っています。

(地域部活動指導員 岡本勝己さん)
「土日に野球をやりたくてもできない環境があった。クラブができて野球ができる環境を手助けできる、それがやりがいです」

現在、練習には磐梨中以外にも近隣から10の中学校が参加しています。地元に日曜日の練習環境がないためで、今年度からは、メンバーでクラブチームも結成しました。

(他校の生徒)
「旭東中学校は土日に1日しか練習がないので、休みに赤磐クラブに来ている」
「土曜は練習があるが日曜日は休みが多いので、地元の中学校では野球部8人で合同でやっています」

今、少子化の影響を特に受けているのが団体競技。学校単位でチームが成立せず競技をあきらめる子どもは少なくありません。現在、磐梨中学校の軟式野球部は3校による合同チームでメンバーは14人。紅白戦もできません。

部員1人の中学もあるなか、休日だけでも実践的な練習ができる環境を作りたい。そんな思いから地域のクラブチームは誕生しました。

(磐梨中学校軟式野球部 高本裕司教諭)
「人がいないから野球を辞めてほかの競技に行こうかなとか、1人で部活動に入っていたら合同チームは中体連であるし、赤磐クラブもあるから、野球はできるよって」

これから30年でさらに3割減少する中学世代。スポーツ環境を守るため地域の模索が続いています。

(スタジオ)
出射理事長は、地域と共有を図った問題意識について「スポーツ環境を維持できなければ、子育て世代は都市に出て地域の衰退に繋がる。この共通の視点を持つことができるか」が重要。

また、休日指導を地域住民のボランティアにすべきではないと指摘していて、活動資金をどう確保していくかなど今後の課題は山積しています。