山口県下関市の「海響館(かいきょうかん)」(下関市立しものせき水族館)は、2001年の開館から25周年を迎え、昨年には大規模なリニューアルを遂げた。この場所で、2026年5月25日(月)から6月7日(日)の14日間にわたり、シャボン玉石けん株式会社(本社:福岡県北九州市)との「洗おう 笑おう」共創イベントが開催されている。
イベントでは、生活排水が及ぼす海や川への影響について、さまざまな体験を通して水質を守る大切さが楽しく学べる企画を展開。期間中いつでも楽しめるビンゴカードラリーのほか、休日には遊び心たっぷりのユニークなワークショップも開催される。
子どもも大人も気軽に参加でき、様々な体験コンテンツを通じて日々の暮らしと水環境の関わりを再確認できる今回の試み。そこには、半世紀以上にわたり「きれいな水」を追求してきた企業の思いと、水族館の願いが込められていた。
見て、聞いて、触って、五感で感じるワークショップ
イベントに冠した「洗おう 笑おう」は、「健康な体ときれいな水を守る。」を経営理念に掲げ、無添加石けんの製造販売を行っているシャボン玉石けんが、50周年を機に掲げたブランドメッセージだ。
同社では近年、このスローガンのもと、無添加石けんの使用体験を通じて、1人ひとりの健やかな肌環境から地球規模の水質保全に至るまで、「洗う」ことを通じて「暮らしを豊かにする」取り組みを進めている。今回のイベントも、そうした同社の姿勢と海響館の想いが共鳴し実現したものだ。
シャボン玉石けん株式会社 マーケティング部 郡山 萌奈さん
「日々の暮らしの中において『石けんや洗剤の選び方ひとつ』が、自分の肌だけでなく、海や川の生き物たちの環境とも地続きであると気づくきっかけにしてほしい。そんな思いから、海響館へこの共創イベントを提案しました。今日流した水が、生き物の命、そして私たち人間の笑顔につながっていることを、五感で体験してもらいたいと考えています」
館内で展開されているコンテンツやイベントには、郡山さんが語る「五感での体験」を形にしたような、細やかな工夫が凝らされている。
まず目を引くのは、館内を巡る「水のなかまと『洗おう 笑おう』ビンゴカード」だ。入り口近くで配布されるカードを手に、館内の水槽や各所に設置されたディスプレイを探索。「洗おう 笑おう」のテーマに沿った生き物を探していく。
展示の解説文には、その生き物が生息する水環境や、私たちの暮らしとの関わりについても記されており、ビンゴを楽しみながら自然環境について考える視点を得られる内容となっている。ビンゴを完成させて受付へ持って行くと、景品としてシャボン玉石けんの無添加石けんがプレゼントされる(1日先着500名)。
また、土日に開催される予約制のコラボイベントは、より実践的な内容となっている。たとえば「みずのなかまを支える『飼育体験』」では、海響館のスタッフとともに、無添加(*1)石けんを使った洗浄体験に挑戦。ウミガメなどの生き物にエサをあげた後、その容器を自らの手で洗う工程を通して、排水が水環境へ与える影響を学ぶことができる。参加者には修了の証として、オリジナルカンバッジが贈られる。
(*1):無添加:香料・着色料・酸化防止剤・合成界面活性剤不使用
さらに、「環境にやさしい自分だけの『オリジナル石けん作り』」(要予約)では、海の生き物の形をした石けん作りを通し、素材のシンプルさを追求する無添加石けんならではの、環境へのアプローチを肌で感じることができる。
あわせて行われる座学では、石けんが水や生き物にどのような関わりをもっているのか、その仕組みについて学ぶことが可能だ。
そのほか、小学4年生以上を対象とした1日限りの学習イベント「水のなかまと『洗おう 笑おう』1日学校」(要予約)も開催。ここでは生活排水と水環境について見学した後に、「シャボン玉石けん」による洗浄剤についての出前授業が展開される。学んだ後の生き物観察では、また違った景色が見えるかもしれない。
これらの体験イベントは、「洗おう 笑おう」特設サイトにて予約を受付中だ(5/28時点。満員により受付終了の可能性あり)。
こうしたワークショップによる直接的な体験に加え、館内全体に施された装飾や散りばめられたメッセージにも、来場者の関心を集める仕組みが施されている。
例えば、館内のお手洗いにはシャボン玉石けんのハンドソープが設置されており、ふと目を向けた先に「水をきれいにしてくれてありがとう」「みんな笑顔っていいね」といった心なごむ言葉が並んでいる。ワークショップで「水とのつながり」を学んだ後にこれらの言葉に触れることで、自分たちの暮らしが自然界にどう響いているのかを、より身近に感じられる仕掛けだ。
こうした空間演出やスタッフとの交流を通して得られる「気づき」に、今回の取り組みの意義がある。郡山さんは、イベントが形になった背景を次のように明かす。
郡山 萌奈さん
「『洗うこと』や『地球や生き物を大切にすること』について、遊びながら自然に学べるよう、イベントの世界観を丁寧に演出しました。海響館の皆さんがイベントの趣旨を深く理解してくださり、想定以上の素晴らしい空間で来館者とのコミュニケーションが進んでいると感じます」
先代社長自ら実感し、大きく舵を切った50年前の覚悟
今回のイベントが、生活排水という普遍的な社会課題を扱いながら、体験を通して前向きに学べる演出を凝らしているのには理由がある。その背景には、前述した「健康な体ときれいな水を守る。」という同社の理念が深く根付いているからだ。
116年の歴史を持つ同社だが、1970年代半ばまでは合成洗剤(*2)の販売を主事業にしていた。転機となったのは、当時の国鉄(現JR)から寄せられた「機関車を洗ってもサビない無添加石けんを作ってほしい」という依頼だった。
依頼を受けて先代社長の森田光德さんは、添加物を一切使わない無添加石けんを試作して自ら使ってみたところ、長年悩んでいた湿疹が落ち着くのを実感したという。1974年、それまで続けてきた合成洗剤の販売から手を引き、無添加石けんの製造・発売へと大きく舵を切ったのだ。
だが、当時は安価な合成洗剤が重宝されていた時代、同社の製品は見向きもされず、売上高は100分の1にまで激減。以後17年間赤字が続き、100名いた従業員も5名に減った。
それでも光德さんは信念を貫き、地道に石けんの魅力を発信し続けた。やがて1990年代に入り、世界的な環境意識への関心の高まりとともに、消費者の志向にも変化が表れ、ようやく時代が光德さんのメッセージを理解するようになっていった。少しずつ同社の製品が注目を集めるなか、石けんの魅力を発信する地道な活動は、現在の「洗おう 笑おう」のスローガンへと結実し、着実に広がりを見せている。

郡山 萌奈さん
「当時のエピソードは、私たち社員全員の根幹にあります。先代社長が身をもって実感したメッセージだからこそ、『健康な体ときれいな水を守る。』という絶対的な理念は揺らぎません。現社長も常々、『重要なのは、ものづくりへのこだわりだけではなく、その意味と価値を的確に伝え広めていくこと』と言っています。単に製品をお届けするだけでなく、お客様がご自身の健やかな暮らしのために、納得して選べる選択肢であり続けることが大切なのだと考えます」
(*2)合成洗剤の定義
界面活性剤又は界面活性剤及び洗浄補助剤その他の添加剤から成り、その主たる洗浄作用が純石けん分以外の界面活性剤の界面活性作用によるもの(洗濯用は純石けん分以外の界面活性剤が界面活性剤の総含有重量の30%を超えるものに限り、台所用は40%を超えるものに限る)。研磨材を含むもの及び化粧品を除く。
※ここでいう「純石けん分」は、界面活性剤の一種であるが、脂肪酸塩であってその含有率がJIS K3304(石けん試験方法)により求められるもの。
出典:消費者庁ホームページ
次の時代の「あたりまえ」が、社会を変えていく
同社の無添加石けんは主成分である「純石けん分」の生分解性が高く、水質環境に配慮した製品づくりが徹底されている。水質の僅かな変化が命に直結する魚たちが息づく「水族館」というフィールドにおいて、知識として環境保護を頭で理解する以前に、日常の何気ない「洗う」という行為が生き物の命を守る一歩になるということに、五感を通して自ら気づくこと。来場者のインパクトとなるその「実感」に、今回のイベントの意味がある。
同社はこれまでにも水質保全に関するさまざまな取り組みを続けてきたが、その1つが2021年に福岡県宗像市地島で行われた「島まるごと実証実験プロジェクト」だ。
これは同社と宗像市、九州環境管理協会、山口大学大学院創生科学研究科による合同プロジェクトで、島内の一般家庭約60世帯、地島小学校、漁村留学センターにおいて、約3ヶ月間、家庭の洗浄剤を同社の無添加石けんに切り替え、使用前後の環境変化を調査したものだ。
水質や生物分布を多角的に分析した結果、石けんに切り替えたことで排水を浄化する下水処理場の「曝気槽(ばっきそう)」内の微生物の種類や量が増加し、汚泥が良好な状態であることを示す菌も確認された。実際に、下水処理場から海へ流れ出る水の汚れはもちろん、合成洗剤の成分量も減少していることが明らかになった。
こうした、石けんを使用することで「環境に良い影響を与えたと考えられる」という研究結果は、同社の無添加石けんが持つ特性を客観的に裏付けるものとなった。こうした取り組みの積み重ねが、今回の海響館での共創イベントを支える原動力となっている。
郡山 萌奈さん
「私たち人間が流した水が、生き物にどんな影響を与えるのか。子どもたちや若い世代がそれを知ることで、自分たちが使うものを『選ぶ目を持つ人』が増えて欲しいですね。地道な活動ですが、『洗おう 笑おう』のイベント参加をきっかけに、次の世代の選択基準が変わっていけば、社会全体が変わっていくのではないでしょうか。今までの『あたりまえ』を、新しい『あたりまえ』に変えていく。それが弊社の存在意義だと思っています」
実際には、私たち大人世代の多くも、物心ついた頃から身近にある製品を、いわば「あたりまえ」のものとして便利に使ってきた。だが、もしその「あたりまえ」に加えて、未来のために環境を守る「もう1つの選択肢」を知るきっかけが、海響館の共創イベントに用意されているのだとしたら――。そこへ一度足を運んでみる価値は、十分にあると言えるのではないだろうか。