『機動戦士ガンダム』。1979年のテレビ放送開始以来、50年近くにわたって愛され続けているテレビアニメシリーズだ。プラモデル「ガンプラ」の累計出荷数は2024年に8億個を突破し、その売上のおよそ半数が海外と、世界規模で人気を拡大し続けている。
そんなガンダムが今、国内の「地域」との連携に力を入れている。
2月4日に開幕した「2026さっぽろ雪まつり」には、シリーズ最新作となる映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』に登場するガンダムの雪像が登場。さらに、北海道の地元企業と連携した取り組みも行う。
なぜ地域に注目するのか、作品や地域にとってどんな効果があるのか。背景を取材すると、濃いファンはもちろん、まだアニメを見たことがないという人でも気軽に触れられる「多様なガンダムの楽しみ方」が見えてきた。
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』公式サイトはこちら
長く愛されてきたからこその課題も
ガンダムが多くの人を惹きつけた理由について、シリーズの企画・展開に携わってきた株式会社創通の常務取締役 田村烈さんは、「正義と悪ではない」ストーリーにあると話す。
舞台は、人口や環境の問題から地球での生活に限界を迎えたことで、宇宙移住政策が進められる時代「宇宙世紀」。人類の統一は簡単ではなく、政治や宗教、人種の問題などにより、紛争が引き起こされる。そこに巻き込まれていく人たちにはそれぞれの正義や想いがあり、50年近く前に制作されたストーリーだが、現代社会にも通じるメッセージが込められている。
株式会社創通 田村烈さん
「ガンダムが好きな人もいれば、主人公と敵対するキャラクターや主役級ではないキャラクターが好きな人もいます。どこからでも入れるというのが大きな特徴で、いろいろな楽しみ方ができる作品です」
ただ、長く続けてきたからこその課題も見えてきた。
田村さん
「放送から45年が過ぎ、2029年には50周年を迎えます。その間、ガンプラにフィギュア、ゲームなど多数の展開をしてきましたが、濃いファンの方々に支えてきてもらってのこれまででした。一方で、『ガンダム』という単語の認知度は高いものの、くわしくはないという人も増えています。イベントに行く、ガンプラを買うといった行動を起こすまでのハードルは高い中で、どう新たなきっかけを作るかが課題だと考えました」
そこで注目したのが、地域の祭りだ。アニメイベントは濃いファンと向き合う機会だが、祭りにはアニメに関心のない人も含めて、不特定多数の人が訪れる。気軽に見てもらう機会を作り、作品に触れるハードルを下げようと考えた。
「ガンダムが地元に来てくれた」
最初は2007年、青森県五所川原市でガンダムの立佞武多(たちねぷた)が登場。高さ11メートルの迫力ある山車が、まちを練り歩いた。
シリーズ45周年を迎えた2024年には、福岡県福岡市の「博多祇園山笠」でガンダム山笠が登場。商店街にフラッグを出したり、名物の「明月堂川端ぜんざい」とのコラボ商品を発売したりと、地域との連携を強めた。
祭りの当日、現地を訪れた田村さんは、多くの人がねぷたや山笠を見上げ、「ガンダムが地元に来てくれた」と好意的に受け止める様子を目の当たりにしたという。
田村さん
「当日はもちろん、その後しばらく経ってからも話題にのぼることが多いんです。いずれも単発での事例でしたが、反響を聞くうちに継続的に行う必要性を感じました」
最初は「ああガンダムだ」でいい
そこで継続的に取り組んでいるのが、例年200万人以上が訪れる「さっぽろ雪まつり」での展開だ。札幌市中央区の大通会場で、3年連続でガンダム雪像を制作している。
これまでの2回、できあがった雪像を見た田村さんは「やりすぎだな!」と思ったと笑う。
それぞれ当時公開していた映画に登場する最新のガンダムがモチーフで、2年目は2機を並べ、全体のサイズも大きくした。田村さんは「新しいガンダムはどんどんディテールが複雑化している」と、難しい挑戦であったことを明かした。
ただ、「やりすぎ」なくらいを目標としていたという。
精巧なガンダムの作りを雪で完全再現するのは不可能だとは思いつつも、「こんなものか」と思われてはいけない、ひときわ目立つ雪像で「ガンダムってすごい!」と思われなくてはいけないと、高い目標を設定していた。
その思いに職人たちが応え、できあがった雪像をたくさんの来場者が楽しんだ。1年目の挑戦を経て、2年目はこうしたい、3年目はこうしたい、と次々とアイデアが生まれたという。
今年の雪像は、1月30日に公開したばかりの映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の主人公機「Ξ(クスィー)ガンダム」だ。
田村さん
「最新の機体ですし、どのガンダムかなどはわからなくても最初はよくて、『ああガンダムだ』『なんかすごい』でいいんです。まずは足を止めてもらうことが大切。そのために、いろいろな演出を用意させてもらっています」

映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』公式サイトはこちら
地元企業との連携で、地域にも貢献
雪像近くのブースでは、地元企業とタイアップした菓子などの商品を展開している。
北海道北見市の名産「ハッカ」のアメやスプレーに、旭川市発の生サブレ「蔵生(くらなま)」。帯広市の珍味メーカーが手がけたエイヒレは、北海道の方言で「エイ」を意味する「カスベ」と、作品内の名セリフ「あえて言おう、カスベであると!」をかけた商品名だ。
苫小牧市の銘菓「よいとまけ」は、2025年に続き2年連続でのコラボとなる。
製造元である株式会社三星の管理部・竹嶋俊吾さんは、最初に話が来たときは非常に驚いたと振り返る。
株式会社三星 管理部 竹嶋俊吾さん
「『えっあのガンダム?』と3回ほど聞き返しました。実は社内にガンダムファンがたくさんいるんです。社長も工場長も、私も昔から好きで…。小学生のときからおもちゃ売り場に行けば必ずガンプラがあったので、ずっと身近な存在でした。社内の士気はとても高い状態で商品開発が進みました」
発売を告知するとすぐにファンから問い合わせが届き、反響を感じたという。2025年は当初、期間限定で1万本販売の予定でスタートしたが、想定より早く目標に達した。雪まつり終了後も販売ペースが落ちなかったことから、さらに1万本追加し通年販売に切り替えた。
この商品に限らず、「よいとまけ」全体の生産数が年間を通して数千本単位で増えていて、「ガンダムをきっかけに知ってくれた方が気に入って、また手に取ってくれているのではないか、『よいとまけ』全体の関心が上がったのではないかと想像しています」と、大きな効果を感じている。
竹嶋さん
「パッケージの側面には、それぞれのキャラクターの名セリフにかけた言葉を印字しているので、ぜひ手に取って、側面も楽しんでもらえたら嬉しいです。すでに社内では、『来年もご一緒できるならこれがやりたい』とアイデアが無尽蔵に湧いています。SNSでも『この味だったらこのキャラクターだよね』など、ファンの方々が想像して盛り上がってくれて、ありがたいなと思っています」
ファンの熱量が生む、商品展開の盛り上がり。竹嶋さんは、地域の方々が「地元のお菓子はよいとまけ」と自慢できるような存在であり、地域を盛り上げていけたらと思いを語った。
「ご自身の楽しみ方を見つけて」
今年の雪まつりでは、札幌市東区のつどーむ会場でも、特別展示や「ガンダムR作戦」を実施している。「R」はリサイクルの意味で、プラモデル制作時に出る余った部品をリサイクルして作った「エコプラ」の体験キットと特別冊子を無料で配布する。ガンプラ制作を楽しみながら、地球環境についても考えられる機会だ。
田村さん
「ガンダムには、いろいろな楽しみ方があるということをお伝えしたいです。アニメや映画という切り口もあれば、プラモデルやグッズ、ゲームという切り口もあります。支えてきてくださった濃いファンの方々を大切にしながら、新たにとっつきにくくない入り口も用意する必要を感じているので、その一環としてこうした地域連携に取り組んでいます」

雪像などをきっかけに新たに関心を持った人のために、雪まつりのブースで「ガンダムとは」がわかる展示を用意したり、YouTubeで「毎日60秒で分かる宇宙世紀」と題したショート動画を公開したりと、入門のハードルを下げるための工夫もしている。
最新の映画公開にあたっても、「濃いファンと新規層」どちらも大切にする姿勢が伺える。
田村さん
「映画はコアな人により刺さる内容で、『お待たせしました』というところがありますね。ただ、人間ドラマも重視して描いているので、くわしくない方でも映画として楽しめると思います」

田村さん
「ガンダムはもうすぐ50周年となりますが、100年を目指して楽しみ続けていただけるようにと試行錯誤しています。濃いファンの方々のための展開はもちろん、さらに間口を広げ、新しい方々への入り口や、いろいろな楽しみ方を用意しますので、ぜひご自身の楽しみ方を見つけてほしいと思います」
これからのガンダムは、地域と一緒に成長しながら、さらに楽しみ方の選択肢を広げていく──。
「2026さっぽろ雪まつり」開催概要
開催期間:2026年2月4日(水)~2月11日(水・祝)
大通会場:大通会場7丁目HBC広場(北海道札幌市中央区大通西7丁目)
・実施内容:雪像展示(中雪像)、物販ブース
・時間:雪像のライトアップは午後10時まで。物販ブースは午前11時~午後8時
つどーむ会場:つどーむ・屋内会場(北海道札幌市東区栄町885番地1)
・実施内容:ガンダムR(リサイクル)作戦/『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』スペシャルフォトスポット、特別展示等
・時間:午前10時~午後4時
※プラモデル配布は1人1回までで、数量限定
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』
公開日:2026年1月30日(金)~
あらすじ:U.C.0105、シャアの反乱から12年――。
圧政を強いる地球連邦政府に対し政府高官の暗殺という方法で抵抗を開始した「マフティー」。そのリーダーの正体は、一年戦争をアムロ・レイと共に戦ったブライトの息子、ハサウェイ・ノアであった。
不思議な力を示す少女ギギ・アンダルシアにかつてのトラウマを思い出すハサウェイ。彼女の言葉に翻弄されながらもマフティーとしての目的を果たそうとする。
一方、連邦軍のケネス・スレッグは自ら立案したアデレード会議の支掩作戦とマフティー殲滅の準備をする中、刑事警察機構のハンドリー・ヨクサンから密約を持ちかけられる。
ハサウェイ、ケネス、それぞれが目的のために動く一方で、ギギもまた自分の役割のためにホンコンへと旅立つ。