(写真)積水樹脂の人工木のベンチと若手開発担当
私たちが日々、道路で目にする車線分離標や電光表示板といった交通安全製品、さらには施設やマンション向けの外構フェンスまで。積水樹脂株式会社は、1954年の創業以降、独自の複合技術で、「公共」「民間」双方で、あらゆる製品を生み出し、事業の幅を広げてきた。そんな道路・景観資材総合メーカーのパイオニアがいま、国も進める未来を見据えたインフラ事業に注力している。
「ウォーカブルなまちづくり」という言葉を聞いたことがあるだろうか?少子高齢化や人口減少という社会的課題を背景に、街路を「くるま」中心から「ひと」中心の空間へと再構築し、居心地良く歩きたくなるまちづくりを実現する取り組みだ。これに同社は、長年培ってきた技術力と若手社員の柔軟な感性を掛け合わせ、新たな価値を提供しようとしている。

複合技術力で日本のまちに彩りを与えてきたフロントランナー
「会社の最大の強みは、道路・景観資材の『総合』メーカーであること」と強調するのは、製品企画を担う景観事業部 副事業部長の中沢卓司さん。前提として、積水樹脂が扱う製品群は、それぞれの製品ごとに特化したライバルメーカーが存在している。つまり、ある自治体が駅前広場や目抜き通りをウォーカブルな空間に整備する際、日よけ、防護柵、ベンチ等が必要となった場合、これらを別々の会社に依頼しなければならない。しかし、「総合」メーカーである積水樹脂なら、これらをデザインも含めワンストップで提案できる。この総合力を武器に、いま、主に「人工木」という素材を使って「ウォーカブルなまちづくり」を事業にしている。


「人工木」とは樹脂と木粉を複合成形した、デザイン性と機能性に優れた素材で、ベンチやデッキ、日よけ、防護柵など様々な用途に使われている。積水樹脂では、リサイクル樹脂や廃木粉を活用することで環境への配慮をすすめている。

積水樹脂株式会社 景観事業部 副事業部長 中沢卓司さん
「弊社が得意としているのは、樹脂と木材などの異素材を組み合わせる複合力。各々の素材の“いいとこ取り”をすることで独自の価値を生み出してきました」
ここで少し、道路関連製品のデザイン性と機能性の変遷を説明したい。従来、防護柵などは溶融亜鉛めっきという表面処理を施すことで高寿命化を図ってきた。しかし、経年劣化でくすみが出て、まちの雰囲気が暗くなるということを懸念した積水樹脂は、約40年前に鉄に樹脂を密着させる塗装技術を導入。まちに彩りを与え明るくしようと取り組んだのだ。そんな取り組みの変遷の中で約25年前に生み出されたのが「人工木」である。天然木を使うとどうしても避けられない色褪せや腐食というデメリットを解消し、安全で長く使えるものとなり、現在ではまちづくりに欠かせない素材となっている。
新たなニーズに応える挑戦!積水樹脂が手がける「ウォーカブル」事例
「ウォーカブルなまちづくり」が提唱されたのは、いまから約10年前。道路を単なる通過点ではなく、例えばベンチを設置して、人々が滞留し賑わいを生む空間として再定義する試みだ。だが、それまでは、歩行者と車両が混在して危ないと敬遠されていた。しかし、社会の変化が起き、こうした新たなニーズに応える挑戦が始まったのだ。
その典型が、東京都新宿区の事例だ。健康増進のために、高齢者が無理なく歩き続けられるよう、歩道にちょっと休憩できるファニチャーを整備する案件を同社が受託。しかし、限られた歩道という空間に大きなベンチを置けば歩行の妨げにも繋がる。

中沢卓司さん
「そこで提案したのが、歩道と車道の間にある既存の横断防止柵の一部を撤去し、その空いたところに収まる省スペースベンチです」
これは防護柵とベンチの両方を手掛ける同社ならではの発想だった。
同社の成長戦略である「重点7分野」の一つ、防災・減災も「ウォーカブルなまちづくり」と親和性が高い。人が集まる場所は災害時にも拠点となる。そこで、日頃は休憩場所として使われるベンチが、災害時には「かまど」になったり、公園の憩いの場である「防災パーゴラ」が、緊急時には「簡易な災害対策施設」として役割を果たすなど、日常使いと災害時の機能を両立させる製品を開発。いまでは全国の自治体で導入されている。
中沢卓司さん
「自治体や施主の悩みを“モノ”で解決できるところに非常にやりがいがあります。『社会の景色に、安全と心地よさを』というのが弊社のスローガン。安全は最優先。しかし、ベンチに座った一瞬の心地よさや景観としての美しさも追求したい。当たり前の景色の中で、目に見えない形で安全を守り、心地よさを提供しながら新しい社会の景色をどう創っていくか。私たちはその大きな転換期にいると感じています」
入社2年目、若手開発者が挑む“まちのアップデート”
こうした想いを受け、最前線で実務を担うのが、入社2年目の景観事業部 人工木総合技術推進室の青葉美空さんだ。大学でプロダクトデザインを専攻していた彼女は、「制約がある中でより良いものが求められる公共デザインに携わりたい」と積水樹脂を志望した。青葉さんは、グループ内の研究発表会にも参加。いま手がけているのは、「狭い歩道などに設置できて快適に座れるベンチ」の開発だ。

積水樹脂株式会社 景観事業部 人工木総合技術推進室 青葉美空さん
「プロダクトデザインは学んでいましたが、実際のものづくりとなると勝手が違いました。大学の時は、とりあえずデザインが良かったらいいという感じだったのですが…。実際に求められるのは『強度基準』や『コスト』との両立でした。知識が少ない中、上司や協力会社の方に相談しながら一つずつ進めていきました」
製品を開発する部署は賑やかで相談しやすく、「新しいことに挑戦していこう」という雰囲気の中で社会課題の実現に向かって挑戦していると言う。
青葉美空さん
「高齢者が立ち上がる時に支えになれるよう丸みをつけたり、短時間の休憩を促しつつ座りやすさも追求したり。自分が良いと思う“独りよがりなデザイン”ではなく、『使う人の安全や使いやすさを第一に考えたデザイン』を心がけています。構造に行き詰まった際、相談の中で解決策が見つかり、理想の形に近づく過程が本当に楽しいです」

積水樹脂の仕事は、ものづくりが好きで、社会課題に興味があり、チャレンジ精神を大切にする人ならやりがいを感じられる仕事だ、と青葉さん。
積水樹脂の道路関連の事業は、かつての硬い土木系のイメージから、まちの主役である「ひと」に関わる仕事へと変化している。そんな中、今後はより社会の変化を楽しみ、ユニークな発想と技術で日々の景色をアップデートしていきたいという想いをもった“人財”が求められている。
積水樹脂が描くのは、製品の先にある人々の笑顔が溢れるまちの風景。その未来を創るのは、確かな技術力と、若きチャレンジ精神に他ならない。
