北海道北東部・オホーツク海で獲れる海の幸に、最上級の想いを込めて名付けられたブランド『紋別一等』をご存じだろうか。現在、「ホタテ貝柱」と「いくらの醬油漬け」が『紋別一等』シリーズとして、紋別市ふるさと納税返礼品にラインナップされている。
北海道産の中でも極寒の地・紋別の海に地撒きされたホタテの稚貝は、海底の砂地を活発に動き回りながら4年をかけてじっくりと育てられる。その食感は筋肉質でプリプリとした力強い歯ごたえで、深い甘みが感じられ、一度食べたら忘れられない味だ。水揚げ直後に素早く加工処理を施して、一粒ずつみずみずしい鮮度のまま最新技術で急速凍結されるので、食べる際には必要な分だけ解凍すればいいと手軽で使いやすい点も好評だという。

オホーツク海が育んだ紋別の海の幸は、全国から注目を集める逸品ぞろい。2021年度には、ふるさと納税ランキング(*)で、紋別市は受入額・受入件数ともに全国1位を獲得。それ以外の年度もおおむね10位以内にランクインする人気ぶりだが、そんな紋別の逸品の中でも、『紋別一等』シリーズは格別の存在感を放っている。
(*)出典:総務省 令和4年度ふるさと納税に関する現況調査について「令和3年度受入額の実績等」

特産品ブランドを生み出す仕掛け人
至極のブランド『紋別一等』シリーズをプロデュースするのは「地域活性化」をテーマに全国の自治体や生産者・企業と連携し、多様なチャネルを駆使して特産物の販売促進とブランディングを手がける、株式会社ふるさと物語(以下、同社)だ。
株式会社ふるさと物語 代表取締役社長 宮成秀治さん
「ホタテの産地は北日本各地に数多くありますが、『紋別一等』は甘みと食感の素晴らしさで群を抜いています。私も初めて食べた時、思わず目を見張りました。このホタテと出会った一流料理人の方々も、一様に驚いています」
宮成さんは、生まれ育った北海道で大学まで過ごし、上京して大手システムインテグレーション企業や外資系IT企業で、SEやアカウントエグゼクティブ、営業戦略・企画としてキャリアを積んだ。そんな宮成さんが起業を決意した背景には、世界中を襲った新型コロナウイルスによる経済の混乱があった。

宮成秀治さん
「未曽有のパンデミック下でも、私がいたIT業界の景気は好調でした。しかし、多くの業界や故郷北海道をはじめ地方では、深刻な状況が続いていた。自分が関わっているIT業界や、築いてきた人脈による知見やノウハウを活用して、そうした現状に風穴を開けられないかと考え始め、起業を決意したのです」
当時専門としていたのは、顧客データの活用や顧客体験(CX*)であった。宮成さんはその知見を、故郷・北海道の水産業者が経験を通じて培った選択眼や確かな技と組み合わせることでビジネスモデルを組み立て、上質な魚介類を適正価格で提供する、北海道産に特化したブランド「雪国物語」を創出。そのブランド名を冠して、前身となる株式会社雪国物語を設立した。
*CX(Customer Experience)とは、商品やサービスの購入前から購入後までのプロセスにおいて、顧客が企業との接点で感じるすべての体験を指す。単に商品の品質や価格だけでなく、接客・アフターサポート・ウェブサイトの使いやすさなど、あらゆる要素が含まれる。

宮成秀治さん
「消費者は商品やサービス以上に、そこから得られる『経験』に価値を置きます。デジタル技術の進化によって顧客接点が増え、一人ひとりの消費者ニーズをとらえたサービス提供が可能になった。つまりCXは今後さらに重要視されます。そこで、これまでに培ったCXの視点から、あらゆるメディアを通じて地域活性化に取り組むことにしたのです」
その後、同社の地域活性化事業は北海道以外に全国各地へと広がっていく。そこで2024年5月1日、北海道産の水産物ブランド「雪国物語」の名はそのまま残して、新たに商号を「株式会社ふるさと物語」へと変更した。

ふるさと物語がプロデュースする『紋別一等』をふるさと納税で体験
多彩なメディアを自在にコーディネート
同社の事業は、従来のメディアマーケティングとは一線を画す、独自の戦略に基づいている。
活用メディアは、自社ECサイトや大手ECモール、SNS、ふるさと納税、実店舗やプロスポーツ協賛など多岐にわたるが、個々の商材をしっかりと把握した上で、商品の素晴らしさが的確に伝わるよう、ひとつひとつのプロモーションを吟味して慎重に進めている。その一例として、インフルエンサーの存在がある。

宮成秀治さん
「弊社の幅広い人脈から、信頼関係のある方を選んで実際に召し上がっていただき、率直な感想をそのまま発信することを大切にしています」
近年、動画配信やSNSで拡散された情報をきっかけに、流通量が増大するケースが増えている。消費者の購買意欲を刺激するインフルエンサーの直接的なメッセージは、企業と消費者の直接取引の機会を加速させる。そのため宮成さんは、ふるさと納税など消費者と直接つながるプラットホームを重視している。
同社では、大手ECモールに掲載する販売サイトも、立ち上げから運用代行までサポートしている。こうして、自治体や企業・生産者は煩雑な作業に時間や労力を取られることなくWEBを通じた販路開拓が可能になり、消費者も気軽に商品を購入できる。

宮成秀治さん
「私たちは、自治体や企業・生産者の方々との信頼関係構築を非常に大切にしています。カタカナ用語を並べて“絵に描いた餅”を広げるような、口先だけのアドバイスや提案は絶対にしません。直接お会いしてひざを突き合わせ、一つ一つ悩みや課題に耳を傾け、解決策や戦略を一緒に考えていく。“宮成は信用できる”と思っていただけて初めて、一緒に考え、一緒に頑張り、成果につながって、一緒に喜びを分かち合うことができる。そんなパートナーシップを丁寧に築いていきたいと考えています」
ふるさと納税の口コミでも高評価、『紋別一等』のサイトはこちら

オリジナルのPR動画「ふるさと映画」
宮成さんが企画するプロモーションの中でも特にユニークなのは、産地を舞台にした「ふるさと映画」の製作だろう。各地の特産品や観光資源を掘り起こし、ブランディングの過程を短編映画に収め、PRや販促を展開している。
これまで北海道や鳥取県、熊本県を舞台に8本の「ふるさと映画」を製作し、地元出身の元アイドルやキックボクサー、若手俳優をキャスティング。脚本もオリジナルで、自治体や地元企業とのタイアップを通じて、地域が一体となってプロモーションを行った。

「ふるさと映画」の中には、国際映画祭にノミネートされた作品もある。また、映画製作をきっかけに、産学連携や官民一体による新規事業が立ち上がるなど、さまざまな波及効果も生まれている。
同社は「ふるさと映画」を広く一般公開するイベント『ふるさと映画祭』も開催している。2024年10月には、アメリカ・ロサンゼルスのジャパン・ハウスで初の海外開催となる、ふるさと映画祭を実施。上映したのは、鹿児島県徳之島が舞台の「ふるさと映画」2作品で、上演後、満席の会場から万雷の拍手が沸き起こった。

同年12月には、東京・秋葉原UDXシアターで3日間にわたり、ふるさと映画祭を開催。会場内で同時開催した物産販売の『ふるさと市場』も、多くの注目を集めた。
宮成秀治さん
「『映画製作による地域創生の取り組みは他に類を見ない』と、地元の新聞やテレビ局にも取り上げられました。現在も、北海道・山梨県・新潟県・広島県・山口県・千葉県で15本以上の「ふるさと映画」の製作が進んでいます」
産地と人々をつなぐ、架け橋として
ふるさと納税は、人々の心の「ふるさと」への憧憬を喚起する。同社は目下、積極的にふるさと納税事業者登録に取り組み、現時点で北海道6自治体、福島県郡山市、群馬県昭和村、熊本県益城町、新潟県佐渡市で登録を完了している。
宮成秀治さん
「2023年には中国が日本の水産物の輸入を全面停止し、国内産地の企業や生産者の方々は厳しい局面に立たされました。しかし、私たちの使命は、こうした産地の皆さんの思いを受け、国内に“新たな消費の場”をつくることです。その状況を乗り越えようと、新たな海外販路や、新たな国内マーケットを開拓して相応の成果につなげています。その一環として、自治体や地元企業・生産者との連携を深め、ふるさと納税返礼品を強化しています。イベントやフェスでリアルな接点をつくり、有名シェフとのコラボレーションやインフルエンサーによる発信を通じて、認知拡大に取り組んでいます」

今回、『紋別一等』を紋別市のふるさと納税返礼品として紹介するにあたり、宮成さんは次のように語った。
宮成秀治さん
「この極上のホタテに出会う方々が、どんな感動を体験し、紋別とどう接点を持つのか楽しみです。どこにお住まいであっても、食を通して紋別のファンになっていただくことで、その方ならではの“物語”が紡がれていく。その橋渡しをするのが、裏方である私たちの存在意義なのです」

社名の「ふるさと物語」には宮成さんの、人々のふるさとへの想いや、それぞれのふるさとの歴史を物語として世界中に伝えることを通して地域活性化を実現していきたいという、想いが込められている。それを体現していく同社が今後どのような産品を展開していくのか、期待したい。