私たちが手放せないスマートフォンにパソコン、家電製品や自動車から、宇宙を漂う人工衛星まで。生活や産業を支える電子機器にとって、今やなくてはならない存在、「半導体」。

近年、半導体製造装置の市場規模は右肩上がり。生産拠点を海外へ移す企業が多い中、国内での生産を選択し飛躍したのが、半導体製造装置の分野で世界トップクラスのシェアを誇る「東京エレクトロン(以下、TEL)」だ。

国内に主要な生産開発拠点を4カ所持つTELだが、中でも2011年に完成した東京エレクトロン宮城の本社工場(宮城県大和町)では、半導体製造装置の1つであるエッチング装置の開発から製造までを一貫して行っている。

もっと知りたい東京エレクトロン

東京エレクトロン宮城 本社工場(宮城県大和町)


この「メイド・イン・ジャパン品質」に世界が注目している。今年8月には、来日したインドのモディ首相が石破総理(当時)とともに工場を訪れ、インドに納入予定の半導体製造装置を視察した。現在、東京エレクトロン宮城では、拡大する半導体製造装置市場のさらなる需要増加を見据え、将来的に生産能力を3倍程度まで増やす計画が進められている。

そんなTELが、宮城に拠点を構えたころに始めたのが、全日本実業団対抗女子駅伝競走大会、通称「クイーンズ駅伝」への協賛。年に一度の女子駅伝日本一を決める戦いは今年、45回目の節目を迎えた。毎年、オリンピックや世界陸上の代表選手をはじめとする日本のトップランナーが集結するこの大会では、沿道で「ハートがデザインされた手袋」が揺れるユニークな応援スタイルも名物になっている。


これは、東日本大震災の復興支援の一環としてスタートした、その名も「ハートフルプロジェクト」。約9,000セットの手袋を配布するボランティアには東京エレクトロン宮城の従業員も参加し、大会を脇から支えている。カラフルな手袋は、今では、晩秋の冷たい空気のなか、選手たちに声援を送る人々を温かく包む必須アイテムとなっている。今年も沿道や競技場など12カ所で無料配布された。


「助け合いの“つながり”を感じる」従業員ボランティアが語る駅伝と宮城への思い

「ハートフルプロジェクト」は、ハートの手袋での応援以外にも、ボランティア参加者と地域社会との絆を深めることも目的としている。多くの従業員が参加するTELでは、地域貢献にとどまらず、従業員同士のコミュニケーションの活性化にもつながっているという。

東京エレクトロン宮城社員の高橋幹生さんは、2012年にボランティアの募集を開始して以来、毎年欠かさず参加しているという(新型コロナ流行期を除く)。「チームのために自分の力を存分に発揮し、タスキをつなぐ姿には、いつも深く感動させられます」。実は高橋さん、津波の被害を受けた宮城県石巻市に妻の実家があり、全国から復興支援に訪れた人々と今でも交流が続いている。「助け合いの“つながり”は、とても強いと感じます。自分もさまざまな形で人々の役に立ちたいという思いからクイーンズ駅伝のボランティアに参加しました」

2024年の大会時の写真。東京エレクトロン宮城の従業員ボランティアが沿道で応援する人たちに手袋を配布する


同じく東京エレクトロン宮城の社員、鈴木香南子さん、田原一弘さん、菊池英一郎さんらもクイーンズ駅伝とボランティア参加の楽しさを口にする。

鈴木さんは、間近でみる選手たちの走りに魅了され、募集開始以来、毎年ボランティアに参加。「恒例行事になっていて、沿道に応援にくる方々もボランティアメンバーを温かく迎えてくれています」と地域住民と一緒に大会を楽しんでいる。

田原さんは、もともとサッカーなどのスポーツボランティアをしていたことをきっかけに参加するようになったと言う。印象的だったのは2016年大会で、「高校の後輩2人が走り、応援に力が入りました」と振り返る。

菊池さんは「選手が中継所に来たときは、手袋をつけた方たちの大きな声援で熱気につつまれていました」と話し、今後の大会にも「参加したい」と意欲を見せた。

TELでは、今年はさらに、スポーツへの関心を高める取り組みとして、小学生から高校生までを対象にした親子で参加できる応援企画を実施。沿道でコーステープを持つボランティアや、ゴール地点で横断幕を掲げるボランティアなど応援のスタイルを広げ、東京エレクトロン宮城を中心に全国の東京エレクトロングループの従業員約100人でクイーンズ駅伝をサポートした。

激戦の舞台、宮城!タスキが繋ぐトップランナーのドラマ

2011年から宮城県に舞台を移したクイーンズ駅伝。日本三景・松島をスタートし、杜の都・仙台まで、6人のランナーでタスキを繋ぐレースでは毎年様々なドラマが生まれている。

“花の3区”とよばれるエース区間(10.6㎞)では、2022年、新谷仁美(積水化学)が首位のJP日本郵政から遅れること10秒ほどでタスキを受け取るとすぐさま首位を奪取。そのまま快調に飛ばし、長らく破られることのなかった34分30秒の区間記録(2015年当時デンソーの高島由香が記録)を1分以上も更新する33分20秒という衝撃の区間新記録を樹立した。

高低差の激しい5区(10km)は、後半のエース区間。記憶に新しいのが、去年の新谷仁美(積水化学)と鈴木亜由子(JP日本郵政)が繰り広げたデッドヒートだ。首位のJP日本郵政と22秒差でタスキを受け取った積水化学の新谷は4km付近で鈴木を捉え前に出る。しかし、鈴木も後ろにピタッとついて離れない。残り1kmで鈴木はスパートをかけ、引き離しにかかるが、新谷も食らいつき離れず、互いにトップを譲らない意地と意地のぶつかり合いとなった。ラスト200m地点で再びスパートをかけたJP日本郵政の鈴木が1位でアンカーにタスキを繋げたが、2位の新谷との差はわずか1秒。結局、1位でタスキを受けたJP日本郵政が最後は27秒の差をつけ、4年ぶり4度目の優勝を飾った。大会2連覇をかけ日本代表選手を揃えた積水化学は惜しくも2位だった。

クイーンズ駅伝2024の5区での新谷(左)と鈴木(右)のデッドヒート


東京世界陸上で活躍した選手も参戦!クイーンズ駅伝2025の結果は?

そして、11月23日に行われた今年のクイーンズ駅伝。この夏、日本中が熱狂した東京世界陸上の出場選手たちも多数参戦し、ドラマティックな展開となった。

エース区間の3区(10.6km)、トップでタスキを受けたエディオンの矢田みくには、東京世界陸上10,000m代表の経験を生かし、単独走でもリズムを崩さず、トップのままつないだ。東京世界陸上10,000mで6位入賞したJP日本郵政の廣中璃梨佳は10位でタスキを受けたが、東京世界陸上マラソン代表の積水化学の佐藤早也伽ら7人を抜き、前回大会を制したチームを3位まで押し上げた。

エディオンは4区(3.6km)で一度、JP日本郵政に交わされるも、5区(10.0km)で細田あいが区間賞の快走で逆転し、トップでタスキリレー。JP日本郵政は6秒差の2位でアンカーにつないだ。

アンカーの6区(6.795km)、先頭でスタジアムに入ったエディオン・平岡美帆は、後ろから追い上げてくるJP日本郵政・ルーキーの小暮真緒を振り切り、優勝のフィニッシュテープを切った。エディオンは32回目の挑戦にして初めて、悲願の実業団駅伝女王の称号を手にした。JP日本郵政はわずか7秒差の2位と、連覇を逃した。

7秒のリードを守り抜いたエディオンの平岡美帆。レース後「怖くて、怖くて、怖くてしかたない6.795kmだった」と振り返った


【クイーンズ駅伝2025(2025年11月23日)の結果】 

※上位10チーム

優勝:エディオン 2時間13分50秒(初優勝)
2位:JP日本郵政グループ 2時間13分57秒
3位:積水化学 2時間14分51秒
4位:三井住友海上 2時間15分47秒
5位:資生堂 2時間16分08秒
6位:ユニクロ 2時間16分22秒 
7位:天満屋 2時間16分29秒
8位:しまむら 2時間16分41秒
******シード権獲得
9位:ダイハツ 2時間17分02秒
10位:岩谷産業 2時間17分21秒

TBS「クイーンズ駅伝2025」公式ページはこちら

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