北海道や東北地方などの寒冷地で、エアコン普及率が右肩上がりに伸びている。要因の一つは、年々厳しさを増す夏の猛暑だ。これまでエアコンなしで夏を過ごせた地域でも、近年は暑さ対策が必要になった。熱中症を予防するためにも、エアコンの利用が推奨されている。

もう一つの要因は、冬の暖房器具としての使いやすさにある。たとえば石油ファンヒーターは灯油の補充や部屋の換気が必要だが、エアコンにはその煩わしさがなく、リモコンのボタンを押すだけでいい。世界的なカーボンニュートラルの流れもあり、化石燃料に頼らない手間いらずの暖房器具として、寒冷地でもエアコンの存在感が増している。

そのような中、東芝ライフスタイルが「あったか大清快」の新商品「DRNUシリーズ」を9月に発売した。「あったか大清快」は東芝エアコン「大清快」シリーズの暖房強化モデルだ。厳しい寒さに強く、最大10.5時間(*1)の連続暖房運転を実現した高い快適性が注目されている。

(*1)RAS-402DRNUにおいて、東芝ライフスタイル環境試験室(12畳)にて外気温2℃・室温23℃・風量「自動」での連続運転時間。使用条件により連続暖房運転時間が短くなる場合があります。

DRNUシリーズ

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旭川の試験所で、研究を重ねて開発

あったか大清快の「DRNUシリーズ」は、このたび6年ぶりのモデルチェンジを経てリリースされた。時間をかけ、満を持してローンチしたのには理由がある。東芝ライフスタイル エアコン事業部 企画部商品企画担当参事 大石剛久さんに話を聞いた。

東芝ライフスタイル エアコン事業部 企画部商品企画担当参事 大石剛久さん
「エアコンにはシンプルなものから多様な機能を搭載したものまで、いくつかのラインナップが存在します。その中で、最も開発が難しいのは暖房強化モデルです。実は海外のエアコンでも、寒冷地向けに開発されたものはあまりありません。新たな開発には試行錯誤とノウハウの蓄積が必要なため、どうしても時間がかかります」

東芝ライフスタイル エアコン事業部 企画部商品企画担当参事 大石剛久さん


では、どうすれば、いい製品を生み出せるのか。選んだのは、実地試験という手法だった。

大石剛久さん
「北海道の旭川に試験所を開設しました。外気温が低い厳しい環境下で、室内で確かな暖房性能を発揮する製品を開発するためには、実際に日本の冬を体験しなければわからないことがあると考えたのです。試験所には開発中の試作機も含め、多数の暖房強化型エアコンを設置し、厳寒期に動かして検証を重ねました。さまざまなデータを得ながら探っていたのは『お客様の快適さ』です。そして、たどり着いたキーワードが、『除霜(じょそう)』でした」

旭川試験所

エアコンで冷房を入れると、室内で冷気をつくる代わりに室外機は暖かい風を排出する。暖房運転はその逆で、室外機が排出するのは冷たい風だ。外気温が低い場合、冷風を出し続ける室外機は徐々に霜に覆われていく。霜に覆われたままでは暖房効率が大きく低下するため、エアコンは一時的に暖房運転を停止し、霜を溶かす「除霜」を自動で行うよう設計されている。この時、一般の除霜機能では室外機を温めて除霜するので、室内には冷気が吹き出す。

大石剛久さん
「せっかく部屋が暖まったのに、突然エアコンが止まり、冷たい風が吹き出してくる。かつて私も山形で過ごしていたときに経験したのですが、たとえるならシャワーを浴びていたら急に冷水が出てくる感じでしょうか。それが一時的な現象とはいえ、嫌ですよね。そこで、除霜時の冷気の発生を抑え込めればお客様の快適性はさらに増すはずだと考えたのです」

そうして新たに開発された技術が、「AIデフロスト・テクノロジー」だ。

大石剛久さん
「あったか大清快に搭載の新技術『AIデフロスト・テクノロジー』では、霜の付き具合をAIがリアルタイムで判断、暖房を止めることなく、霜が付き始めた段階でこまめに除霜します。除霜中も室内機からの吹き出し温度を約40℃(*2)でキープするので、体感的にも暖かいままです。外気温2℃で試験した結果、10時間以上の連続暖房運転を実現しました」

(*2)RAS-402DRNUにおいて、東芝ライフスタイル環境試験室(12畳)にて外気温2℃・室温23℃・風量「自動」における連続暖房運転中の吹き出し口付近の最低温度。使用条件により温度は異なります。

AIデフロスト・テクノロジー

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スマホと連動して、快適な朝を迎える

新しいDRNUシリーズでは、入タイマーの設定時刻前から予熱することで運転開始とほぼ同時に温風を吹き出すようにする「予熱設定」や除霜ボタンもリモコンに設置されている。

除霜ボタンは、使用前に強制的に除霜すれば、室外機をリフレッシュした状態で暖房運転を始めることができる。手動で除霜できる安心感を加えつつ、「おすすめしたいのはスマートフォン専用アプリ『IoLIFE』との組み合わせです」と大石さんは言う。

大石剛久さん
「IoLIFEはスマホで家電をコントロールできる当社独自のアプリです。たとえばウィークリータイマー機能を使い、朝起きる前に除霜と暖房開始を設定しておけば、室外機はきれいな状態で動き始めますし、起きたらすぐ暖かい部屋で過ごすことができます」

IoLIFE設定画面例。左は除霜モード、右は高温風モード


さらにIoLIFEで高温風モードにすれば、最高60℃(*3)の温風が吹き出し、暖まりにくい足元温度も最高40℃(*4)に。外からでも「あったか大清快」の暖房機能のコントロールを可能にした。

(*3)RAS-402DRNUにおいて、東芝ライフスタイル環境試験室(12畳)にて、外気温2℃・室温20℃・設定温度「32℃(高温風モード)」時の吹き出し口付近の最高温度(風量は標準定格暖房に対し約49%)。約60℃の温風が約3分間吹き出すことを確認。使用条件により温度は異なります。

(*4)RAS-402DRNUにおいて、東芝ライフスタイル環境試験室(12畳)にて、外気温2℃・室温20℃・設定温度「32℃(高温風モード)」時のエアコンから3m離れた床上5cm中央部の最高温度。使用条件により温度は異なります。

大石剛久さん
「旭川の試験所では、暖房中に室内の温度分布がどう変化するかセンサーで可視化するなど、細かなデータを取りながら開発を進めました。さらに、データだけではなく、実際の使用感も大切にしました。部屋に滞在し、人の肌感覚でもチェックを重ねながら、しっかりとした暖かさをさまざまな工夫で追求していきました」

スマホからエアコンを操作、IoLIFEでできること


これからのエアコン選びは、「オールシーズン使えるか」

「あったか大清快」は暖房機能以外も、東芝エアコンらしさが健在だ。たとえば「大清快」シリーズの代名詞ともいえる空気清浄システム「プラズマ空清」も搭載。空気中に漂う目に見えない微細な汚れをキャッチし、UV照射で菌を抑制(*5)する。細菌(*6)やカビの除去(*7)に加え、ウイルスを抑制(*8)する機能ももつ。

(*5)【試験機関】(一財)北里環境科学センター【試験方法】25㎥試験チャンバー(密閉空間)内に菌(1種類)を浮遊させ、エアコンの空清運転(UVなし)を90分間実施。25㎥試験チャンバー(密閉空間)内を浄化させ、エアコンの空清運転によって熱交換器に捕集した細菌の数を測定した後に、エアコンの空清運転(UVあり)を240分実施し、熱交換器に捕集した細菌の数を測定【試験結果】エアコンの空清運転(UVあり)実施前に比べ99%減少【報告書No.】北生発2022_0225号

(*6)【試験機関】(一財)北里環境科学センター 【試験方法】25㎥試験チャンバー(密閉空間)内に菌(1種類)を浮遊させ、エアコンを空清運転。 経時的にチャンバー(密閉空間)内の浮遊菌を捕集し、菌数を測定【試験結果】自然減衰に比べ73分で99%減少【報告書No.】北生発2022_0069号

(*7)【試験機関】(一財)北里環境科学センター【試験方法】25㎥試験チャンバー(密閉空間)内にカビ胞子(1種類)を浮遊させ、エアコンを空清運転。 経時的にチャンバー(密閉空間)内の浮遊カビを捕集し、カビ数を測定【試験結果】自然減衰に比べ34分で99%減少【報告書No.】北生発2022_0068号

(*8)【試験機関】(一財)北里環境科学センター【試験方法】25㎥試験チャンバー(密閉空間)内にウイルス(1種類)を浮遊させ、エアコンを空清運転。 経時的にチャンバー(密閉空間)内の浮遊ウイルスを捕集し、ウイルス数を測定【試験結果】自然減衰に比べ73分で99%減少【報告書No.】北生発2022_0070号

大石剛久さん
「静電気の力で熱交換器に汚れを捕らえ、結露水とともに屋外に排出します。プラズマ空清は内部に汚れがたまらず、お手入れが不要です。冬は暖房をつけながら気になるウイルスを抑制できますし、春はプラズマ空清の単独運転で花粉を捕獲することも可能です。優れた空気清浄機能で、季節を問わず活躍してくれます」

プラズマ空清(画像はイメージ)

東芝ライフスタイルでは、風のコントロールにも力を入れている。2019年から「大清快」シリーズに導入された、エアコン使用時に直接風を感じることなく心地よさだけを届ける「無風感空調」だ。

大石剛久さん
「エアコンの風に直接当たることで、冷房時の体の冷えすぎや体への負担が気になるというユーザーの声を聞きました。お客様の快適性を向上させるために開発したのが、無風感空調です。吹き出す風を拡散させる無風感ルーバーというパーツが技術的なポイントですが、今回は無風感ルーバーの穴の形と向きを改良し、より拡散性を高めました」

9月発売の「あったか大清快」シリーズに続き、10月には「大清快」のフラッグシップモデルとなる「V-DR」シリーズを発売。いずれも新形状の無風感ルーバーが搭載され、ともに2027年度の省エネ基準をクリアしている(*9)。

(*9)RAS-V802DRを除く。

進化した無風感空調

大石剛久さん
「大清快は『大きな省エネ』『清らか空気』『快適空調』をコンセプトに掲げてきました。この3つの要素を大切にしながら、これからもお客様の暮らしに寄り添い、期待に応えられるエアコンを開発したいと考えています」

ユーザーの快適性をとことん追求する大清快の遺伝子を受け継ぎながら、大きな進化を遂げた「あったか大清快」。寒冷地でエアコンの導入を検討している人や買い替えを検討中の人にとって、嬉しい選択肢となりそうだ。

もっと知りたい「あったか大清快」の機能