1927年にイタリアで誕生したインテリアブランド「カッシーナ」。モダン建築の巨匠たちが手がけたミニマルで洗練されたデザインの家具は、誕生から半世紀以上を経た今もなお、多くのデザイナーや建築家に影響を与え続けている。

現在「カッシーナ」の製品は「カッシーナ・イクスシー」が国内総代理店として日本全国に展開し、その哲学や美意識は、日本の暮らしや感性にも確かに根を下ろしつつある。

では、このブランドのフィロソフィーは、どのようにして日本に受け入れられてきたのか。そして今後、私たちの生活にどう広がっていくのか──。その答えを探るためにも、まずは「カッシーナ」の歩んできた歴史と、その象徴とも言える「イ・マエストリ・コレクション」に注目してみよう。

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近代建築の巨匠たちの想いが形成した、カッシーナのフィロソフィー

創業者一族が一堂に会した貴重な写真。1965年にル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ぺリアンコレクションの最初の4モデルを販売開始したときのもの。代々家具の仕事に関わってきたカッシーナ一族だが、兄チェーザレと弟ウンベルトが1927年に立ち上げた会社が現在の「カッシーナ」の基礎となっている。写真は、チェーザレ・カッシーナ(左上)、ウンベルト・カッシーナ(右端)、アデーレ・カッシーナ(中央・チェーザレの娘)、フランコ・カッシーナ(左下・チェーザレの息子)。


約100年の歴史を持つイタリアの高級家具ブランド「カッシーナ」には、20世紀を代表する著名な建築家たちが深く関わってきた。彼らが手がけた数々の名作家具を、現代に甦らせて製造・販売しているのが「イ・マエストリ・コレクション」だ。

このコレクションには、モダニズム建築の黄金時代に活躍した巨匠たちの作品が多数含まれており、どれも今なおデザインの模範とされるような価値ある逸品ばかり。それらの家具は、単なるインテリアではなく、時代を超えて受け継がれるべき文化的な遺産ともいえる存在になっている。

「イ・マエストリ・コレクション」は、1964年にル・コルビュジエが存命中に、自身がデザインした家具の製造をカッシーナが正式に認可したことをきっかけにスタート。その後、ヘーリット・トーマス・リートフェルト(1971年)、チャールズ・レニー・マッキントッシュ(1972年)、エリック・グンナール・アスプルンド(1981年)、シャルロット・ペリアン(2004年)、フランコ・アルビニ(2008年)と、歴史的建築家たちの作品が次々に加わり、ラインナップはより豊かに広がっている。

このプロジェクトは、ナポリ大学建築学部のフィリッポ・アリソン教授による長年にわたる研究と、カッシーナ社との緊密な連携により実現した。各デザインは、著作権継承者や関係者の厳格な監修のもと、カッシーナの卓越した職人技によって丁寧に再現されている。まさに、巨匠たちの精神を今に伝えるシリーズだ。

そして、これらの名作家具を実際に目にし、手に触れられるのは実店舗だけ。ブランドの世界観を凝縮した空間「The Cassina Perspective」で、その歴史と想いを五感で体感できる。さらに作品一つひとつに込められた思想や背景を知ることで、家具は単なる生活道具ではなく、時代と人とをつなぐ「芸術作品」として新たな輝きを放つのだ。

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“トータル・ライフスタイル・ソリューション”を実現する、唯一無二のインテリアブランド

次に、「カッシーナ・イクスシー」代表のアレッシオ・ジャコメルさんから同ブランドの魅力と現代の日本における家具とはどのような存在なのかを伺った。

アレッシオ・ジャコメルさん。スイス出身、チューリヒ大卒。アジア市場における高級消費財ビジネスを学んだ後、リシュモン ジャパンの「オフィチーネ パネライ」で要職を歴任後、クリストフル ジャパンの最高経営責任者に就任。その後、ダミアーニ・ジャパン社長を経て、2023年に「カッシーナ・イクスシー」の代表取締役社長に就任した。


「カッシーナ・イクスシー」代表取締役社長 アレッシオ・ジャコメルさん
「弊社ほど『トータル・ライフスタイル・ソリューション』を提供できるブランドは多くないと思います。家具にとどまらず、ドイツの最高級キッチンブランド『ジーマティック』、イタリアの美しいテキスタイルブランド『デダール』、そして『G・T・デザイン』をはじめとするラグなど、幅広いカテゴリーで最上級のプロダクトをキュレーションしています。カッシーナのみで統一された空間をつくることももちろん素敵ですが、複数のブランドを自分の感性でミックスし、唯一無二のスタイルを表現することにも美しさがあると私は考えています。弊社では、お客様のスタイルに合わせたトータルコーディネートを実現できます」

さらに、現代における家具については、家具を購入すること=自分や家族への投資だと考えていると言う。

アレッシオ・ジャコメルさん
「例えばベッド。人生の中で最も多くの時間を過ごす場所だからこそ、最高の快適さと美しさを備えたものを選んでほしいです。高級家具はステータスではなく、長寿命・持続可能性・価値の象徴です。品質の良いソファは何十年も使えます。カバーは交換可能で、クッションもメンテナンスできますし、時間とともにその人の暮らしに寄り添って進化していくのです。結果的に、低価格で短命な家具を繰り返し買い替えるよりも、長い目で見て経済的とも言えるでしょう。近年は円安の影響で購入に慎重になる方も増えていますが、自分が本当に気に入った『一生もの』のインテリアを選んでほしいと思います。家具はただの物ではなく、人生のパートナーなのです」

インテリアを単なる道具ではなく、人生のパートナーと捉える新しい価値観は、ワールドワイドに活躍するジャコメルさんらしい視点と言えよう。

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「カッシーナ・イクスシー」のフィロソフィーが体感できる最も新しい空間、「カッシーナ・イクスシー福岡店」

現在、東京と大阪、名古屋、そして福岡に直営店を展開する「カッシーナ・イクスシー」。中でも2025年3月にリニューアルオープンした「カッシーナ・イクスシー福岡店」は、東京と大阪のノウハウをバックボーンに改装されているため、その完成度の高さはジャコメルさんも太鼓判を押す。

「CAPITOL COMPLEX TABLE」の空間。「COMMITTEE CHAIR」を配したダイニングと、「MON-CLOUD」のシステムソファを採用した空間が店内入口すぐのメインスペースを構成。


福岡の「カッシーナ・イクスシー」では、店内に足を踏み入れた瞬間から、「カッシーナ」の世界観に包まれる。革新的なアイデアと、モダンデザインの象徴的なアイテムが融合した空間は、まさにブランドの思想を体現した「The Cassina Perspective」そのもの。

店内は、「住まい」をテーマにした5つの異なるスタイルの「Casa(=家)」で構成されており、それぞれの空間にリビング、ダイニング、ベッドルーム、そしてアウトドアなど、計12のシーンが展開されている。

注目すべきは、それぞれの「Casa」が壁で仕切られながらも、同じフロアに一体的に配置されている点。まるでテレビのチャンネルを切り替えるように、コンセプトの異なる空間を気軽に行き来できる設計になっており、それによって「カッシーナ」の多様なデザイン哲学を、より深く、直感的に体感することができる。

フランス語の“PLATEAU”(台地)に由来し、宙に浮かぶ大地のようなベースが開放的な空間を創出する「PLATOソファ」をメインに配したリビング。美しい木のディテールが特徴の「TOGEダイニングテーブル」や曲線的なオーガニックフォルムが特徴のダイニングチェア「LENDON」とも響き合い、落ち着いた空間が作り出されている。


さらに奥へ進むと「IXC(イクスシー)」の世界が広がる。「イクスシー」は、異なる文化や価値観を組み合わせることで、境界を超えた新しいデザインを生み出しているカッシーナ・イクスシーのオリジナルブランドだ。そのデザインコンセプト“Emotional Minimalism”は、ものの本質と人の感情が交差することで生まれる、新しい体験を表現。木の温もり、石や金属の持つ張り詰めた質感、そして細部まで磨き上げられた美しいフォルム。こうした素材やディテールが、職人の技と独自の製造技術によってひとつに結晶し、空間に深い奥行きをもたらしている。

近代建築家たちが研鑽を重ねて生み出したインテリアを、実際の空間の中で体感できる「カッシーナ・イクスシー」。その確かな歴史やデザインに、これまで敷居の高さを感じていた方や、家具にあまり関心がなかった方も、ぜひ“空間を体験する博物館”のような感覚で足を運んでみてほしい。これからの暮らしをより豊かにし、人生のパートナーとなる家具が見つかるはずだ。

カッシーナ・イクスシー福岡店
福岡市中央区渡辺通4-8-28 F.Tビル1F
TEL 092-735-3901
営業時間 11:00〜18:00
定休日 水曜(祝日の場合は営業)
HP  https://www.cassina-ixc.jp

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