「せともの」のまち、愛知県瀬戸市に本社を構えるセトクラフトでは、2023年、天才画家ゴッホが眠る墓地を彩る陶器の花々の美しさに感銘し、日本のお墓もこんなふうに美しくしたいという思いを込めて、わずか1年で陶器の墓花をオリジナル開発。「可憐で、枯れない陶器の花」という製品特性にちなみ「カレンヌ」の名で発売を開始し、徐々に利用が広がっている。
そこで今回は、カレンヌの魅力や価値とはどのようなものかを改めて検証するとともに、今後の製品・サービス開発に向けた目標について掛布敏章 代表取締役社長と、同社でカレンヌの販売を担当する一野広毅さんに話を聞いてみた。

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「ゴッホがヒント!お墓参りの新常識、陶器の花「カレンヌ」で明るい墓前に」
タイパ・コスパの視点を活かしてお墓を維持
お客様はどんな点に魅力を感じて陶器の花カレンヌを購入するのだろうか。販売業務でお客様の事情をよく知る一野さんはこう語る。
セトクラフト 一野広毅さん
「お墓を持つ人の思いとしてあるのが、いつもお墓をキレイにしておきたいという気持ち。これがまず大前提です。その一方で、なかなかお墓に行けないという事情もあります。同時に、お墓の掃除や管理の手間が大変なので、できるならもう少し手間を省いて供養に専念したいというお考えを持っています。そこから、生花でのお供えだったものが、カレンヌへの切り替えにつながっていきました」
そこから思いを巡らせると、最近のトレンド指標として注目されているタイパ・コスパの視点が浮かび上がってくる。「タイパ」とはタイムパフォーマンス(時間対効果)の略語で、限られた時間の中で大きな成果を得ること。コスパはコストパフォーマンス(費用対効果)の略語で、少ない金額で大きな成果を得ることをいう。
お墓参りでは、1秒でも早く、1円でも安くという効率化が大きな目標ではない。合理的に無駄を見直すことで、「無理なくお墓参りを続ける」「墓じまいをしなくても大丈夫」ということを可能にし、末永く故人の供養ができるようにすることが大切。そんな思いを叶えるために、カレンヌを用いてタイパ・コスパのメリットを引き出すことが大きな目標となっているようだ。
実際にお墓参りに行っている人たちは年齢層が高く、些細なことが重労働になりかねない。誰しも、歳を重ねれば、それまで当たり前にできたことが辛く感じるようになる。そうなり始めたら、従来のやり方を少しずつ見直して自分に合ったお墓参りの方法にアップデートしていくことが大切だ。その選択肢の一つとしてカレンヌの購入を検討する人が多くなっているという。
ご先祖様にも喜ばれる、カレンヌの魅力
まずは、生花、造花、カレンヌで、お花を用意(準備)する時間や労力の違いを見てみよう。
生花の場合は、そもそもお墓参りのたびに花を購入し、持参しなければならない。お墓に供えた生花は、数日後には枯れ花となるため、お墓参りのたびに時間をかけてお墓やその周囲も含めて枯れ花を回収する必要がある。夏場になると、花立ての水が腐って悪臭や虫が発生し、周囲に迷惑をかけないかと心配なので、供えた生花をそのままにせずお参り後ただちに回収し、持ち帰る人が多くなるという。
造花については枯れない分、掃除に時間をかけずに済む良さはあるが、色褪せしやすいため、こまめな清掃・交換が欠かせない。近年、カラスやシカなどの鳥獣にお墓の花を荒らされる被害が急増しているが、近ごろのカラスは生花だけでなく造花も抜き取ることが多いため、次のお墓参りの際に、墓だけでなく周辺に散乱した造花を回収することも必要となる。
これに対してカレンヌは特殊な加工を施した陶器だからこそ、さっと水洗いをするだけでいつも新品のようにキレイさを維持。もちろん、枯花が飛散することもないため、掃除に費やす時間は格段に短く済ませることができる。さらに、カラスやシカなどにお墓を荒らされる害獣被害に遭うこともないことから、墓だけでなく、その周辺の環境も合わせた清掃時間が大幅に短縮できることになる。
お墓を手軽にキレイに美しく整備できることで、子や孫も訪れやすくなる。一家総出でゆったりと時間をかけてお墓参りができることは、何よりご先祖様が「よくぞ、みんなで来てくれたね」と喜んでくれるに違いない。

購入費が割高なのにコスパがいいのはなぜ?
次に、コスパを基準に3種の花を比べてみたらどうなるだろうか。一般的な相場で購入費を比較してみると、安い順に生花、造花、カレンヌとなり、カレンヌは生花と比べて6倍程度、造花と比べて3倍程度購入費が高くなる。
しかし、カレンヌは一度購入したらいつまでも美しいまま維持できるのに対し、生花は、お墓参りのたびに購入費用がかかる。造花でも、直射日光が当たる場所に置かれると、色褪せや汚れが目立ち、その度に購入費がかかることになる。たとえば、それを3年スパンで比較してみるとどうなるのか。セトクラフト独自の算定によれば、期間が長期に及ぶほどカレンヌのコスパの良さが際立ってくるという。
2回目のお墓参りで実感するカレンヌの魅力
カレンヌがお客様に受け入れられる一番の要因は、明るく美しく輝いているところだという。企画・デザインは一貫して社内で手掛け、何度も試作品を作り直して完成度を高めている。また、製造工程では長期的な美しさを維持することをテーマに取り組んでいる。素焼きの上に釉薬を塗り、もう一度、高温の窯で焼く工程を設けることで、ガラスの膜が本体の表面にコーティングされ、カレンヌ独自の艶と光沢を与えている。ボディコーティングされた高級車のように、汚れにくく、汚れが付いても、さっと水洗いをするだけでいつもピカピカの状態に。半永久とも称される美しさを長期に維持できる理由はここにある。
あるお客様がカレンヌのデザインと質感をこう表現したという。「設置して2回目のお墓参りに行った時に見たカレンヌがとてもキレイで、気持ちまで明るくなった」。ずっと変わらず美しく輝いているカレンヌだからこそ、そのお客様は次にお墓に行くまでの期間が空いていてもキレイなままでいたことに驚き、感動したのだろう。そして、「その恩恵を一番感じているのは、『枯れたお花』から常に『キレイなお花』に囲まれているご先祖様だと思います」という言葉を残した。


お客様の声から生まれた安心のサービス
ある日、お客様から1本の電話があった。「お墓に供えられたカレンヌが強風で倒れ、割れてしまった」という連絡だった。一野さんは振り返る。
一野さん
「後にも先にも強風による倒壊事例はわずか数件だけでしたが、お客様から『強風で倒れませんか』という質問をいただくこともあるため、どうしたら倒壊を防げるのかを皆で議論し、性能強化に努めました」
具体的には、専用の固定スポンジと補助棒によるオリジナル部材を製作し、花立ての径とカレンヌの茎をできる限り密着させて倒壊のリスクを大幅に軽減。
その性能を確認するため、第三者機関で試験用の大型送風機を使い、風に対する強度試験(耐風圧試験)を実施。風速0メートルから30メートルまで段階的に強度を上げていき、風速30メートルでは1分間風を当て続ける試験を行った結果、台風クラスの強い風にも耐えられることが証明された。

お客様の声に応える「安心」。風や盗難にも強いカレンヌ【動画】
「盗難被害に遭わないだろうか」という心配の声も多く寄せられる。まだ盗難の報告はないものの、できる限りその不安を払拭しておかなければならない。そこで、購入後の盗難・破損補償サービスとして、6カ月以内で無償、12カ月以内で半額程度で補償するサービスを用意し、購入したお客様にお勧めしている。
補償に関する情報はこちらから
目指すは仏具全般で対応可能な製品づくり
お客様は次にどんな花が製品になるかをとても楽しみにしているという。「故人が大好きな桜を供えたい」、「お盆に故人が帰ってこられるようホオズキが欲しい」「仏花として格調高い菊が見たい」といった要望が数多く寄せられている。陶器で花を成形するためには、花びらにも一定の肉厚が必要となるため、繊細な形状の花は製作が難しいとされているが、そのハードルを越えるための研究を重ねて、2025年に「ヒマワリ」、「トルコギキキョウ」の2種を発売。今後は、さらに難度の高い花の陶器に挑戦し、お客様の幅広いリクエストに応えていく予定だ。
陶器の花に関わる今後の展開について、掛布社長は「たとえば仏壇の仏花、手元供養のお花など、仏具に関係する大小のお花を徐々に広げていきたい」と意気込みを示した。
セトクラフト 掛布敏章 代表取締役社長
「きっかけは、カレンヌを見た私の母親から『仏壇の横に置けるものも作ってほしい』と依頼されたことです。ただ、カレンヌは家の中ではサイズが大きいため、仏壇用の大きさにリサイズする必要があります。そうなると、手元供養のために、もっと小さいものもつくりたいなと。お客様の声からもカレンヌという製品が今この時代にふさわしい製品だと理解できたことで、どんどん発想が広がってくるわけです。そんなカレンヌの価値をこれからも大切に育てていきます」

セトクラフト株式会社
http://www.setocraft.co.jp/karennu/