パナソニックホールディングス(パナソニックHD)傘下で、同社のIT事業会社「パナソニックインフォーメーションシステムズ(パナソニックIS)」の大阪本社移転の開所式が、3月13日、「Panasonic XC OSAKA」(大阪市北区末広町)で行われた。式典には、社員・組合執行部の他、新卒内定者約90人のうち21人など合計約100名が参加した。
この新社屋の特徴は2点ある。一つは、「出社したくなるオフィス」をコンセプトにしたデザインだ。なんと、今回のオフィスづくりは、役員や幹部ではなく社員が中心となって進められた。その代表者は入社7年目の加納実樹氏。他にも、各部署から社員32名が選抜され、移転ワークショップを2023年8月から約2か月間、計4回にわたって実施した。

加納氏は「4回のワークショップの中ではメンバーが意見を出し合いながら、風土や文化も含めた理想の働き方そのものをデザインし、それを実現するために必要なツールや設備をオフィス空間のデザインへと落とし込んだ」と述べた。
オフィスは、防音で半個室のワークスペースや会話禁止スペースなど、集中して作業できる場所がある一方、カジュアルに打ち合わせできるスペースや緑がある開放的な空間でリラックスできるスカイテラスなど、社員のニーズが取り入れられている。

旧社屋時代の社員アンケートで挙がった声、「自席でリモート会議をすることに気を遣う」、「オフィス内が静かすぎてカジュアルに打ち合わせができる雰囲気ではない」、「休憩しづらい雰囲気」といった課題を解決したデザインになっており、社員たちの多様な働き方に対応して個性が生かされるオフィスになっている。

そして、新社屋のもう一つの特徴は、大阪府内の8か所に点在していた拠点を「Panasonic XC OSAKA」に集約したことだ。これまで、別のオフィスだったアプリ開発やインフラ、営業、管理など、部門間の連携をシームレスかつより濃密に行い、問題解決のスピード向上などに繋げていくことが狙いだ。
加納氏は「移転前は関わることが少なかった他部署の人から刺激を受け、会社に来ればいいことがあると感じる。『出社するのが楽しい』という声もあり、理想の働き方を目指して空間や風土、文化の意識改革が進んでいると実感している」と語った。

実は、パナソニックISは、パナソニックグループ内で大きな役割を担っている。パナソニックHDでは2021年からグループ全社を巻き込んだデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクト「パナソニックトランスフォーメーション(PX)」のを進めており、パナソニックISはその中核会社。DXと呼ばずPXと呼ぶのは、ITだけに留まらず、文字通り「パナソニックグループ全体を変えていく」という意味が込められている。現在、業務プロセスの改革やデータの利活用、データ・テクノロジーを利活用できる人材を拡充することなどが進行している。
パナソニックインフォーメーションシステムズ 製品・サービスページはこちら
実際に事業会社の業務改革やグループ横断の基幹システム刷新などを行い、例えば、中国のある1製造拠点では、年間の間接業務簡素化で8400万円、製造ロス削減で7200万円の改善、さらに出荷リードタイムの3日間短縮などの効果が得られているという。パナソニックHDは今“デジタルによる変革”で変容を遂げようとしている。そのシステム基盤を独自に構築・運用して推進してきたのがパナソニックISなのである。
グループのIT事業を担っているというパナソニックISの自負は、新卒採用にも表れている。社員数約1400人の中で今年の新卒内定者は前述の通り約90人。去年は約60人だったという。また、初任給も最大8%引き上げた。これからも人材獲得を強化していく方針だ。これこそ、PXの動力源として、より力強く変革を加速していこうとする決意の表れであろう。
パナソニックインフォーメーションシステムズ 採用ページはこちら
また同社は、グループ約500社にサービスを提供し、PXを進める中で蓄積してきたノウハウを活かし、一般市場へもソリューション提案力の強化を図っていこうとしている。今年4月に新社長に就任した阿部裕氏は、開所式で「最大の特徴はアクセスの良さ。単に社員が通勤しやすいだけでなく、ステークホルダーの皆様も足を運びやすい。IT会社なのでさまざまなステークホルダーとの交わりの中で新しい価値を生み出していかなければならないが、新オフィスがプラットフォームになれると思う」と語った。

新オフィス移転にあたっては、多様な働き方を通して個々のポテンシャルを開放し、チーム、組織、ひいてはグループ外の顧客も巻き込んでイノベーションを起こすことを、ワークスタイルコンセプトに定めた。また、周辺施設や企業などと連携しながら、地域貢献にも積極的に取り組んでいく考えだ。
この新社屋開所は、パナソニックグループ全体のPXを加速させる起爆剤となるだけでなく、社会全体のソリューション開発やIT事業の活性化にも貢献することが期待できる。
ホームページはこちら:https://panasonic.co.jp/is-c/