ウクライナを侵攻して3年が経つなか、ロシアでは今負傷するなどして国に戻る帰還兵が増え続けていて、その社会復帰が大きな課題となっています。現場を取材しました。
シベリアの都市で今月中旬に行われた帰還兵向けの就職説明会。40人あまりが参加しました。
元機関士の帰還兵
「戦場から戻ると、健康上の理由で元の職場に戻れなくなりました」
戦場で負傷した人も少なくありません。職業軍人だったという車いすの男性。攻撃を受け、足の先を失いました。
元職業軍人の帰還兵
「最も困難なのは生活への適応です。(砲撃などの)恐怖感は長い間、消えることはありません」
帰還兵を雇用する意義について、企業の担当者はこう話します。
企業の採用担当者
「兵士が日常の生活に戻ると、彼らには多くの誘惑があります。われわれの任務は彼らを雇用し、社会復帰させることです」
ウクライナ侵攻開始から3年。ロシア軍の死傷者は50万人規模ともいわれ、負傷するなどして国に戻る帰還兵が増え続けています。
プーチン大統領は侵攻に参加した兵士を「英雄」と称し、政府や国営企業などで要職に登用する姿勢を強調。政権主導で帰還兵の雇用を促進し、彼らの不満がひろがらないようにする狙いがうかがえます。
オリョール州の舞台俳優・グネドフさん(34)。3年前の動員で前線に送られましたが、手りゅう弾を受け、足を負傷し、去年除隊。劇場に復帰しました。
舞台俳優の帰還兵 グネドフさん
「電気が流れるような不快な感覚が時々あります」
胸には国から贈られた勲章。オリョール州で今月始まった、帰還兵を組織のリーダーとして育成するプログラムをこう評価します。
グネドフさん
「(帰還兵育成プログラムは)間違いなく必要です。(戦場での経験は)自分の人生だけでなく、他人の人生を変えることもできるかもしれません」
そのうえで、自分は幸運だったとグネドフさんは語ります。
グネドフさん
「私の妻、息子たち、それに仕事が私の戻りを待っていてくれたから、社会復帰することができたのです」
ただ、誰もがスムーズに社会復帰できるわけではありません。ロシアでは、侵攻に参加することで恩赦された元受刑者が帰還後に殺人事件をおこすなど、帰還兵による犯罪が相次いでいて、240人以上の市民らが死亡したと伝えられています。
こうした背景に、戦場と切り離された日常が帰還兵に不満や疎外感を抱かせているとの見方もあります。
侵攻が長期化するなか、プーチン政権は帰還兵という“戦争の現実”に向き合うことが求められています。
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