ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく3年となるなか、ウクライナ市民にロシアからの「スパイ」への勧誘電話が相次いでいます。電話口で優しく語りかける手口。JNNは現地でその音声を入手しました。
「もしもし」
『スヴィトラーナですか?』
「はい、そうです」
『心配しないで。根拠のないことは言いたくありませんが、旦那さんの声を聞かせてあげられるようにしましょう』
これは去年8月、ロシア側からかかってきたという電話の音声。電話を受けたのは、キーウ郊外に住むスヴィトラーナさん(42)です。
2022年のロシアによるウクライナへの侵攻直後、東部マリウポリで軍医として働いていた夫がロシア軍に連れ去られ、捕虜となりました。夫の安否も分からないまま、2年半が経ったある日、携帯が…
スヴィトラーナさん
「電話を取ると、はっきりとしたロシア語が聞こえてきたんです」
俳優の写真をプロフィール画像にした男はスヴィトラーナさんに対し、夫を早く解放してほしければ、「犯罪」に加担するよう勧誘してきました。
『私たちの計画がすべてクリーンで、合法というわけではありません。違法なものもあります。あなたを騙したくないので、正直に言います』
「ありがとうございます。私に何ができますか?何ができるか教えてください。ゼレンスキー(大統領)を殺すなんてできませんよ」
すると、男は丁寧な口調で火炎瓶の作り方を説明し始めました。
『ガソリンか石油系溶剤はありますか?』
「車を持っているので、ガソリンならあります」
『容器はペットボトルなら何でもいいですが、少なくとも1リットルは必要です』
そして、その火炎瓶を使い、近くの駅に放火するよう指示してきたのです。スヴィトラーナさんはウクライナ当局に相談し、拒否すると、男の態度は急変し、「勧誘」は「脅迫」に変わりました。
スヴィトラーナさん
「『夫は殴られ、殺されるだろう。それはお前のせいだ。お前が協力を拒んだからだ』と言われました。最愛の人に何かあったらと考えると、本当に恐ろしかった」
幸いにも、夫・ドミトロさんはその1か月後、捕虜交換の一員として無事、家族のもとに帰ってきました。
8000人にものぼると報じられているウクライナ人捕虜。今、ウクライナでは、こうしたロシアによる勧誘が増えていて、実際に指示に従ってしまった人もいるといいます。
捕虜の家族に犯罪を担わせることで、ウクライナ国民の間に分断を生むことが目的だということです。
ウクライナ 捕虜処遇調整本部報道官
「2人に1人、2家族に1組がロシア側から何らかの電話を受けています。ロシアはウクライナの捕虜の家族に影響を与え、ウクライナ社会を内側から不安定化させようとしているのです」
侵攻からまもなく3年。戦争は戦場だけでなく、市民の生活の中にも影を落としています。
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