11月24日、実業団女子日本一を決める「東京エレクトロンスポーツスペシャル 第44回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会」=通称「クイーンズ駅伝」が開催された。
積水化学との激しいデッドヒートを制したJP日本郵政グループが、4年ぶり4度目の日本一に輝き、今年も“伝説に残るシーン”が生まれた。
┃目次
▼タスキをつなぎ、想いをつなぐ
▼”駅伝”と”日本発のグローバル企業” ともに世界に羽ばたく
▼駅伝ファンを沸かせた、数々の記録や名勝負
▼第44回大会(2024年11月24日)の結果は
タスキをつなぎ、想いをつなぐ
1981年に始まった、クイーンズ駅伝。オリンピックや世界陸上の代表などトップランナーが集結し、6区間・42.195キロのコースで争う日本最高峰の舞台だ。
三重県や岐阜県で開催されてきたが、宮城県に会場を移すことになった2011年。開催に向けて準備が進む中、東日本大震災が発生した。選手が走るコースも甚大な被害を受け、開催自体が危ぶまれた。
“復興支援”という意味も加わったこの第31回大会では、33チームが被災地に勇気を与える力走を見せ、沿道に集まった地元の人々からは温かい声援が送られた。
その手には、おそろいのハート柄の手袋が。

これは「人の手で思いをつなぎ、希望のエールを送ろう」という趣旨で、日本実業団陸上競技連合が復興支援の一環としてはじめた「ハートフルプロジェクト」のひとつ。
ハートを振って応援する、つまり「ハートフル(振る)」な応援で選手にパワーを送ろうというもので、手袋は沿道や競技場内にて無料で配られた。
そして手袋を配っていたのは、日本一の半導体製造装置メーカー・東京エレクトロンの従業員たちだ。
”駅伝”と”日本発のグローバル企業” ともに世界に羽ばたく
2010年の第30回大会から、クイーンズ駅伝に協賛している東京エレクトロン。
国内外に87の生産拠点を持ち、半導体製造装置メーカーとして特許保有数(※1)はなんと世界一、売上は世界4位(※2)と、半導体製造装置で世界トップクラスを誇る。宮城県大和町にも生産拠点(東京エレクトロン宮城)があり、地元ともつながりは深い。
(※1)対象:半導体製造装置業界2023年3月期
(※2)出所:LexisNexis® PatentSight® データにより算出
そんな東京エレクトロンが駅伝を応援し始めたわけ・・・それは「『日本に起源を持つ駅伝』と『日本発のグローバル企業を目指す同社の企業姿勢』に共通点があるから」とのこと。
「社員一人ひとりの成長こそが企業の原動力になる」という考えのもと人材育成に取り組んできた同社にとって、個々が強さを磨き、チーム一丸となって勝利を目指す“日本発祥”の「駅伝」は、まさに企業理念を体現したものだった。
さらに「日本のトップランナーたちが、この大会から世界へ羽ばたいていく姿」や「タスキが繋がっていく様子」に、同社自身や技術の未来像を重ねているようだ。

東京エレクトロン宮城の従業員もボランティアで参加している「ハートフルプロジェクト」。活動の輪は年々広がっている。
応援手袋の無料配布に加え、2014年からは実業団チームから直接指導が受けられるランニング教室を開催。また、大会翌日にはクイーンズ駅伝に出場した選手らが地元の小学校で「ふれあい陸上教室」を開き、子どもたちに走る楽しさを伝え続けている。

駅伝ファンを沸かせた、数々の記録や名勝負
今年で44回を数えるクイーンズ駅伝では、これまで数々の記録や名勝負が生まれている。
舞台を宮城県に移して最初の大会となる第31回大会(2011年)。第一生命は1区の尾崎好美(2009年世界陸上ベルリン大会マラソン銀メダリスト)から6区まで、1度もトップを譲らず完全優勝。

第33回大会(2013年)では、同年の世界陸上モスクワ大会のマラソンで銅メダルを獲得した福士加代子(ワコール)が、エース区間である3区でクイーンズ駅伝通算100人抜きを達成した。

第36回大会(2016年)では、5区で一時、5チームが先頭争いを繰り広げる大混戦。鈴木亜由子擁するJP日本郵政グループが創部3年目で初優勝を飾った。
さらに、こちらのシーンは多くの駅伝ファンの記憶に刻まれているのではないだろうか。第42回大会(2022年)では、“史上最高”のデッドヒートといわれる激しい先頭争いが繰り広げられた。
各チームのエースが集まる「花の3区」。4位でタスキを受け取ったJP日本郵政グループの廣中璃梨佳と5位の積水化学・新谷仁美がともに快走し、首位と50秒近くあった差をみるみる縮めていった。

最後のスパート勝負にもつれ込んだ首位争い。廣中がトップでタスキリレーとなったが、区間賞は新谷が1秒差で勝利するという結果に。中学3年から出場したすべての駅伝で区間賞を獲得していた廣中の連続区間賞は途切れたが、レース後のインタビューでは「1番でつなぐ気持ち以上に、1秒でも早く4区にタスキを渡すんだ、という気持ちの方が強かった」と振り返った。
ちなみに翌年(2023年)も廣中は、手に汗握るデッドヒートを繰り広げ、見事区間賞に輝いている。
第44回大会(2024年11月24日)の結果は
そして、今大会もドラマチックな展開が・・・。
5区、JP日本郵政グループの鈴木とは22秒差の2位でタスキを受け取った積水化学・新谷。連覇に向けて鈴木の背中を追った。序盤、新谷は落ち着いた走りを見せていたが、4㎞付近で鈴木に追いついた。鈴木もここで離されずに新谷に付いていった。6㎞付近では鈴木が新谷の横につき並走するなどお互いに駆け引きを続けた。
4㎞以上並走が続いたが、残り1㎞を切ったところで鈴木がスパート。残り500mで新谷が逆転、それでも鈴木が離されず残り200mで鈴木が再びスパート。結局、鈴木がトップでタスキリレー、新谷は1秒差でタスキを渡した。
鈴木からタスキを受け取った太田琴菜も壮絶なアンカー対決に。最後は見事なスパートで振り切り、フィニッシュテープを切った。

第44回大会(2024年11月24日)の結果 ※上位10チーム
優勝:JP日本郵政グループ 2時間13分54秒(4年ぶり4度目)
2位:積水化学 2時間14分21秒
3位:しまむら 2時間15分26秒
4位:パナソニック 2時間15分40秒
5位:エディオン 2時間15分50秒
6位:岩谷産業 2時間16分55秒
7位:第一生命グループ 2時間16分57秒
8位:資生堂 2時間17分00秒
******シード権獲得
9位:ユニクロ 2時間17分09秒
10位:天満屋 2時間17分38秒
【関連情報】
東京エレクトロン株式会社:https://www.tel.co.jp/