虐殺を疑問に思った児童 700人のうち1人だけ…

横浜市にある、掘割川にかかる中村橋。震災作文に出てくる、遺体が流されたという現場です。

後藤周さん
「この橋の上に、朝鮮人を連れてきて、殺しました、それを見ていました、という作文があるんですね」

横浜市で中学校の教員だった後藤周さん(74)は、残された作文を読み込み、朝鮮人虐殺について分析してきました。

政府は、朝鮮人の虐殺について、「事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」としていますが、後藤さんは、複数の児童が「虐殺を目撃した」と記していることを強調します。

後藤周さん
「子どもたちの作文は具体的ですね。非常に細かく、きちっとその様子を見ている。この中村橋で殺された人が、川に放り投げられたとか、川で殺されたとか、子どもたちが作文に書いていますから」

一方、虐殺を疑問に思う意見を書いたのは、700人の児童の中で、1人だけだったといいます。

いま、現場近くで、虐殺があったことを伝えているのは、この慰霊碑だけです。

後藤周さん
「『デマを信じて、とんでもないことを自分たちはしてしまったのだな』という反省や、そういうものが、ほとんど書かれていない。朝鮮人が攻めてくる、放火する…みんな嘘だった、デマだった。でも、それを信じて、とんでもないことをしてしまった、ということを教えるのは、作文を書かせた教師だったり、大人だったと思うんです」

いまでも、特に大きな地震が起きたとき、SNSには100年前と変わらず、「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」などというデマが投稿されています。

後藤周さん
「今の私たちが生きている時代にも、差別意識というのは、脈々と私たちの体のなかに入っていて、それが災害のあとに、バッと出たりするのが繰り返されている。確かにいま、虐殺が起きたりしているわけではないけれども、そういう流言や、ヘイトデマに対する備えが、僕らの社会にどれだけできているかなというのは、問うていかなければいけない」

切り捨てることができない虐殺の歴史を見つめ、どう向き合っていくかが、私たちに問われています。