山口県下関市豊田町(とよたちょう)では、遊覧船・ホタル舟が運航されています。
新型コロナの感染拡大で、去年までの2年間中止となっていましたがことし、3年ぶりの運航再開。
伝統を守ろうと奮闘した地元の動きを追いました。


山あいで、ひっそりと光を放つホタル。
下関市豊田町のホタル舟です。


ゲンジボタルの発生地、木屋川を下る豊田町のホタル舟は30年あまりの歴史があります。

まだ、これまでの日常があった2020年3月。

下関市豊北町の造船会社「ニシエフ」では、ホタルシーズンに向けて、強化プラスチックFRPを使った新しい舟の製造に取りかかっていました。

「ニシエフ」堀井淳 会長
「観光で使われるということですので、自然に調和するような造り方をしてお届けしたいなと思っています」

しかし、そのおよそ1か月後。

安倍晋三 首相(当時)
「4月7日に宣言した緊急事態措置を実施すべき区域を7都府県から全都道府県に拡大することといたします」

新型コロナで私たちの生活は様変わりしました。
行動制限など感染防止対策は長く続き、観光イベントは軒並み中止に。
新しいホタル舟はこの2年間、客を乗せることはありませんでした。

試験運航をしながら、再開の日を待ち続けました。
そして今年。

実行委員「よろしくお願いします!」
児童「よろしくお願いします!」

ホタル舟実行委員会 伊藤孝之さん
「(ホタル舟は)2年間中止だったけど、ことし3年ぶりに開催っていうことで、3年間分の汚れがたまっています。一番、きょうが大変かもしれないんで、みんなきょう頑張ってくださいね」
児童「はい!!」

5月末、ホタル舟の乗り場には、豊田町の2つの小学校の児童が集まりました。
3年ぶりの運航再開へ、舟や乗り場を大掃除です。

参加した児童
「そうじをしてピカピカになっていて、けっこう心がウキウキになりました」
「やっぱりホタルがきれいなので、そこを見てほしいと思います」

子どもたちだけではありません。
地元の大人は休日返上で、ホタル舟を川に下ろしました。
再開の前日には航路を確認。
準備に余念はありません。

日常が、少しずつ、まちに戻ってきました。

ホタル舟実行委員会 木本暢一実行委員長
「3年ぶりの運航ということで、また新しい舟もできましたし、全国のお客さんに楽しんで乗っていただけるように、しっかりと我々も運航に務めたいと思っております」

6月8日。
運航再開初日です。

辺りが暗くなった午後8時。
客が続々と舟に乗り込みます。

「本年度の第1便が出航致します」

待ちに待った運航。
25分かけて川を下り、黄色い光が舞う世界へいざないます。

岡山県から
「ここまでこんな近くで大量に見られることなかったんですよ。はっきり言って、感動ですよね。しかも、初日でたくさん見られたってお話しも聞けたので、大満足です」

宇部市から
「前に来た時も、すごかったんですけど、(見ごろには)きょうは、ちょっと早いかなと思ったんですけど、けっこうたくさんホタルがいて、よかったです。やっぱり神秘的だなと思いました」

下関市から
「また乗りたいし、ずっと続けてほしい。(下関市には)こういうのがあるから、うれしい」

今年は、観光ツアーやホテルのプランを利用した客が中心で感染防止対策として定員23のところを18に減らしています。

ホタル舟実行委員会 木本暢一実行委員長
「きょうは安全に無事に運航ができて今安心しております。地域のイベント等でみんなで力を合わせて、盛り上げていきたいなと」

完全に元に戻るにはまだ時間がかかりそうですが、豊田町のホタル舟は光の世界に滑り出しました。
ホタルのはかない光は地元の人が守り続ける伝統を照らす光でもあります。