富山県小矢部市にある「あけぼの作業所」の創作活動を紹介します。ボランティアのサポートで、一人ひとりが独自の表現を伸ばしています。

小矢部郵便局の一角が、今、独特な世界観をもつ作品たちに彩られています。カラフルな部屋にいるのは、おしゃれをした女の子と病気で寝ている女の子。

この「新成人とポリス」には、鬼や怪獣たちまで加わって成人式は大混乱です。

お客さん:
「表情がいろいろあって面白いですね。なんていうか心が落ち着きますよ」
お客さん:「これすごくいいなと思った」
記者:「どういうところが、いいなって思いましたか?」
お客さん:「目つきやね、やっぱ」

これらはすべて、小矢部市の福祉作業所、あけぼの第一・第二の利用者が描いた作品です。

小矢部市のあけぼの第一は、様々な障害のある人たちが働く就労継続支援B型の作業所です。

あけぼの第一・辻信 明さん:
「ドライクリーニングのお店からのタオルたたみとか、病衣とかそういったものを主にやっております」

衣類をたたむ仕事のほか、製造業の会社からはドアロックや手すりなどの部品の組み立てを請け負っていて、作業所の平均の工賃は月額およそ1万5000円です。

辻信 明さん:
「まあ、なかなか同じ人員で、職員もそうですけど、その中で日々、やりくりしながらやっていくと、自ずと限界も出てきます」

スタッフ:
「鷲さん、今度、白いがしてくださいね」

鷲浩幸(わし・ひろゆき)さんは、不自由な左手で本体を固定し、右手で器用に小さな部品をはめこんでいきます。

高嶋 教介さん:(カメラに気づいて)「高嶋教介です。よろしくお願いします」
記者:「高嶋さんはこの仕事長いんですか?」
高嶋 教介さん:「高嶋教介、仕事、ニット、たたんで、ABキャップ、ABロック…」

全体像をつかむのが得意な高嶋教介(たかしま・きょうすけ)さんは、一人で複数の工程をこなし、作業中にとったメモをさらにノートに清書する几帳面な性格です。

あけぼの第一利用者の創作の場となっているのが、月に1回の「絵画教室」。市内在住の臨床美術士、前田昌子(まえだ・まさこ)さんが20年以上、ボランティアでこの施設の創作活動をサポートしています。

前田 昌子さん:
「いつもドクダミ描かれるんです。私ドクダミ茶作ってるので、特に今の季節にぴったりで。とってもかわいくていいなと思います」

こんなポップな幾何学模様の作品を描く人もいます。
前田 昌子さん:「かわいいですよね、絵が。性格すごくかわいいから」
「どんなかわいい人が描いたんかなって想像されるんですよ、みんな。50代のおっさんやよーって」

蟹谷 義博さん:「ほとんどこれ、鉛筆。あとこのものさしと」

蟹谷義博(かにたに・よしひろ)さんは、絵は苦手だと言っていましたが、「何でもいいよ」という前田さんのアドバイスでこの作風を確立しました。

蟹谷 義博さん:「考えたら、出るん。自然に出てくるからね」

前田さんが、障害者アートの支援を始めたのはおよそ30年前です。ボランティアで関わった施設の作品を集めて、2年に1度、お寺を会場に展覧会を開催するなど、長年、障害のある人たちの表現活動への理解を広めてきました。

前田 昌子さん:
「昔はやっぱり隠すようにしてましたね、家族も。だから(展示するのに)名前を出さないようにしてくれとか、そういうことも結構ありました。ずいぶん変わりましたね、今、昔から見たら」

郵便局で展示されている成人式やアマゾンの大家族など、独特のユーモアあふれる世界は、高嶋教介さんの作品です。

前田 昌子さん:「この人、こんなこと感じてて、こう考えてるんだって、すごいなーと思って」

しかし、この日の高嶋さんはというと。

スタッフ:「教ちゃん」
(高嶋さんが寝落ちする瞬間)

高嶋 教介さん:
「気持ちいいなー」「小澤さん(記者)、アジサイ」

前田 昌子さん:「がんばれ」

あけぼの第一には、もう一人、とても不思議な世界観をもつ作品を描く人がいます。

前田 昌子さん:
「いつもなんか患っている人がいて、寝てるんですよ、泣きながら寝てるとか、みんな楽しそうにやっているのに、一人寝てる人がいる絵が多いです」

佐野 文香(さの・ふみか)さんは、いつも女の子がいるカラフルな作品を描きますが、絵の中にはいくつもの悲しげな要素が盛り込まれています。

佐野 文香さん:「赤ちゃん泣いとるよ」
前田 昌子さん:「赤ちゃん泣いとるし、犬も泣いて骨折しているんじゃない犬」
前田 昌子さん:「絵を見ていたら涙出てくるの?絵の中に入りこんでるんだね」

前田さんに見守られながら、あけぼののメンバーは、それぞれの個性を伸ばしていきます。

前田 昌子さん:
「感じ方はそれぞれ違うので、否定しないっていうことですね。みんなの作品に感動させられますし、この人のこんなところがあったんだっていう発見があるのがとても楽しいですね」

あけぼののみんなの“ありのままのアート”は、今年度いっぱい県西部の郵便局を巡り笑顔と刺激を届けます。