認知症などで行方不明になる高齢者が増加するなか、行方が分からなくなった人の命をこちらのかわいいプードルが救ってくれるかもしれません。かわいいだけではない“秘めた才能”に注目します。
真っ白な毛並みに、ハート型にトリミングされたキュートなお尻。スタンダードプードルの海(うみ)ちゃん、5歳です。
おっとりした性格で、家では寝ていることが多い海ちゃんですが、ただのプードルじゃないんです。その実力は…
用意した箱のひとつに記者が入って、海ちゃんにどの箱に人がいるか見つけてもらいます。
「サーチだよ。サーチだよ。サーチ!」
3つの箱の中から、瞬時に、人の匂いや気配を察知。ほえて、ここに人がいることを知らせます。見事、正解しました。
「上手上手、うまい!」
実は海ちゃん。この能力をいかして、今月警察の要請を受けて捜査に出動する「嘱託警察犬」に任命されたのです。
「海、伏せ!」
「そう、お利口」
しかし、警察犬と言えば、代表的なのがシェパードや、ラブラドルレトリバー。なぜプードルの海ちゃんが警察犬になれたのでしょうか?
背景にあるのが、警察犬の減少。県内の警察犬の数は、2008年の38匹をピークにことしは14匹にまで減りました。
それに伴い、警察犬の出動回数もここ数年減っていて、事件発生時の迅速な出動が難しくなってきているのです。
そこで県警は、ことしから警察犬の犬種制限を撤廃。プードルの海ちゃんにもチャンスがめぐってきたのです。
「海、そう、来い、そうそう」
飼い主 戸田彩子さん:
「この子と何かしたいなと思って、SNSで(災害救助犬や警察犬を)見つけて、そういうのもあるんだなっていうのを知って」
去年9月から、訓練士とトレーニングを開始し、3か月後の時点では、まだ人の匂いを瞬時に察知できませんでした。
それが、訓練開始から8か月の警察犬の審査会では…
正確に人の匂いをかぎ分けられるまでに成長し、
「ワン!」
一発で合格しました。
飼い主 戸田彩子さん:
「審査会では、すごく上手にできていて、『この子本当に警察犬になるんだな』っていう」
一緒に訓練してきた吉川さんは、こう語ります。
訓練士 吉川明子さん:
「今までスタンダードプードルを何頭かトレーニングしましたが、すごくIQが高い、賢い犬種なんですよ。だから、スタンダードプードルって聞いて『プードルは警察犬無理です』っていう印象は受けなかったです」
そんな海ちゃんと戸田さんが出会ったのは、およそ3年前。
飼い主 戸田彩子さん:
「インターネットの里親募集サイトで見て、すごく可愛かったんで『あ、この子を家族に迎え入れたいな』って。単純な理由なんですけど」
当初は、新しい環境に慣れなかったのか、まったくエサを口にしませんでした。戸田さんと海ちゃんは、時間をかけてじっくりと絆を深めていったといいます。
飼い主 戸田彩子さん:
「最初の頃は、ずっと一緒にいて声をかけてあげて。2週間くらいで私が仕事から帰ってくると、喜んで迎えに来てくれるようになって。そこから距離が縮まったような感じがして」
海ちゃんと戸田さんは、今後、警察からの出動要請を受けて認知症で行方が分からなくなった高齢者の捜索などを行います。
飼い主 戸田彩子さん:
「誰かのために何かをしている方たちや、わんちゃんたち、すごく素晴らしいなと思っていて。そこに自分も海も参加できるっていうことがうれしいですね」
海ちゃんは、活躍の幅を広げようと犯罪捜査などで遺留品を探したり、犯人の足跡をたどったりする「足跡(そくせき)追及」もできるようにトレーニングを始めました。頑張れ、海ちゃん!