今、5.5組に1組のカップルが不妊治療を行ったことがあり、最新の調査では14人に1人が体外受精で生まれています。
身近になっている「不妊治療」ですが、この治療にかかる費用が、4月から大きく変わりました。
子宮に精子を注入することを手助けする「人工授精」の場合、これまでは全額自己負担で1回およそ3万円。
さらに、子宮から卵子を取り出し、体外で受精させる「体外受精」の場合も1回およそ50万円の自己負担となっていました。
それが今月から保険適用となり、「人工授精」で1回5千円程度。
「体外受精」でも、1回6万5千円程度と原則3割負担となります。

経済的負担が軽くなることで、新たに治療に踏み出す人も増えることが予想されていますが、治療が長期化するケースも多く、負担は経済面だけではないと訴える当事者もいます。現状の課題を探ります。


「なんで子ども授かるのにこんなに苦労しなければいけないんだろう、ってそんなことを思っていました」


長野県内に住む40代の女性。
6年以上にわたって不妊治療を続け、2020年、治療を終える決断をしました。
結婚後、子宮に腫瘍が見つかり、医師に妊娠しづらい体であると告げられます。
夫と相談し、フルタイムの正社員として働き続けながら自宅から片道1時間半かけて、クリニックに通い始めました。

「生理の周期によって、この時期に来てくださいということで」

通院は、治療段階によって異なりますが、多いときは月に5回以上。
さらに、生理の周期や体の状態によって、診察の日が突発的に決まります。

「午前中病院に行って、午後から出勤したり、なるべく休んで迷惑かけないようにしなきゃって」

治療を始めて2年。結果が出ず、体も心も疲れ果てていた時上司の言葉がきっかけで、仕事を辞める決断をしました。

「休むとシフトを組みずらいといわれたことがあったんです、あてにならないということですよね、今できることをよくよく考えてねってことで」

厚生労働省の調査では、不妊治療と仕事の両立ができず、治療する女性の4人に1人が仕事を辞めていることが分かりました。


いわゆる「不妊退職」です。

「プレマタニティハラスメントと呼んでいますけれど、不妊治療に対するハラスメントが職場でも見られる」

不妊体験者を支援するNPO法人、Fine(ファイン)の松本亜樹子(まつもとあきこ)理事長は、「不妊治療」という言葉は浸透しつつあるものの、正しい理解が進んでいないと指摘します。


「体外受精をすることになったと上司に言ったら、“さっさと1回で成功させろよ”と言われたとか、また病院行くの?昨日も行ったよね?そんなに行かなければいけないのとか、知らないからそうなってしまうと思うんですけど、すごく辛いですよね」

不妊治療と仕事を両立させやすい職場を作ろうと、県は、2020年、全国の自治体に先駆けて男女ともに取得できる「不妊治療休暇」を導入。
時間的な制約や心身の負担が大きい治療と仕事の両立を応援する狙いで、男女とも最長で250日程度まで無給で休みをとることができます。

しかし、初年度にこの制度を利用した職員は16人。2年目の昨年度は13人と、取得率は上がっていません。
背景には、不妊治療特有の理由があると松本さんは分析しています。

「私たちのアンケートによると不妊治療に対する制度があると答えたのが6%、そのうちの4割は使ってなかった、なぜ使えないかというと、すごく前に申請しなければいけないので突発的な治療には使えなかったり、周りの人に告げたくないのにいわなきゃいけないそれだったら、自分で休みをとった方がいいという声が上がってきています」

松本市の県看護協会会館に設置されている「長野県不妊・不育専門相談センター」。
専門の相談員が年間250から300件の相談に応じています。

「絶対に知られたくない、もし妊娠できなかったらこの職場に戻ってこれないんじゃないかという不安を抱えていらっしゃる方もいる、心の安定を保つこと=体の安定につながっていくので、一人、ご夫婦で抱え込まずに相談してほしい」


さらに、「不妊治療」だけを特別視せず、「育児」や「介護」、「生理痛」など幅広いニーズに寛容な職場を作ることが必要だと考えています。

「不妊治療だけではなくて社会で働いている半分は女性なので、女性の持っている生理的な仕組みを知ることがある意味、会社自体の収益にものすごい大きな利益を与えている、多様性のあるやわらかい社会になっていけたら、不妊治療されている方ものびのびできるんじゃないかなと思います」